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第1話 アクタの追放
とある時代。
割れたお茶碗の破片を漆などで継ぎ合わせて、更に金箔や銀や赤や青などの彩色を付けることによって、前より素晴らしい品物、お茶碗を創り上げることを『金継ぎ師』と謳われた。
これは一時、庶民や貴族でも流行だった。
その中で、一際異才を放ったのがアクタと呼ばれる『金継ぎ師』だった。
アクタはどんなに原型を留めぬほどの割れたお茶碗や壺などを、丁寧に一つ一つ取り上げて、1か月の間には必ず、原型の品物より上質で豪華な品物が出来た。
更にアクタは全く異なる破片を上手く継ぎ合わせて新しい壺やお椀など芸術品ともよべるものを創れる才能があった。
その異才に魅了される貴族も庶民も多く、アクタには多くの注文が来たが、アクタは仕事が遅いのでどうしてもという人以外は丁重にお断りした。
それに「傲慢な!」と立腹するお客も居たが、アクタは職人気質で、どうしても手抜きはできないから仕事は遅くなる。申し訳ないけど・・とアクタは何度も謝罪した。
その様子に客も、職人気質で天才肌のアクタは扱いづらいことが解ってきて、何も言わなくなった。
その才能に嫉妬し、良からぬ事を考えるつまらぬ下衆な者はどこにでもいるもので、ある日、アクタは利き腕をいきなり見も知らない誰かに切られそうになった。思わずアクタは利き腕をかばったが、その代わり、顔に深い傷を負った。アクタは意識を失った。
叫び声が聞こえた。誰の声だろう。
なんでつまらない陳腐な結末なんだとアクタは思いながら馬鹿野郎と犯人を心中罵った。
絶対このつまらない事を企てた野郎をぶん殴ってやるとアクタは心に誓いながら倒れた。
意識が暗転した。
実行人の顔を確かにアクタは脳裏に焼き付けた。
慌てて、逃げた間抜けな蒼白の顔。なかなか整った顔だ。見覚えがある。あれは‥確か・。
半年の間、アクタは生死の境をさ迷った。傷は深く高熱でアクタは何度もうなされ死にかかった。
傷に致命傷になりえる菌が入らなかっただけでも不幸中の幸いだった。
破傷風だ。その菌は体内に入ると毒性で神経や、けいれん発作を起こすほどの危険な菌だ。
その特効薬はいまだに無かった。
アクタは汗と血塗れになりながら自宅で療養した。
アクタには家族はいない。とうにはやり病でみんな亡くなった。アクタは免疫力が強いらしくアクタだけが生き延びた。
そのせいかどこかアクタは世捨て人のように職人として、仕事だけに専念していた。
アクタの家には家事や掃除をしてくれる老婆を雇っていた。
毎日老婆はアクタの家を朝早く訪れて、朝食 昼食 夕食 時には夜食とアクタの食生活を管理していた。
老婆も家族はとうに巣立ちして、遠くの地で商売をしているという。
老婆も引っ越そうと言われたらしいが、老婆は断った。この住み慣れたところから離れたくなかったのだろう。
老婆はどこか年老いた猫に似ていた。
猫は家に棲むという。
それに新しい家族の邪魔になりたくなかったのかもしれない。
意識朦朧としていたアクタの枕元に誰かが居た。
白い服を着たとても高貴そうな人だ。あんた誰だ?アクタは貴族の友人なんかいないぞ。
『そなたは稀に見る才能を持っている。我はこの地域の土地神 チンメイという。そなたの才能は惜しい故、我が助力しよう。そなたの命を回復させる。』
変な夢を見た後、アクタはみるみる熱も何もかも峠を越えたのを感じた。 生き延びたんだ。
あれは‥神様?わけわからないことばかりだった。
アクタはやっとの思いで立ち上がれるようになった。老婆の煎じた薬湯を飲みながら、腸が煮えくり返るような思いで犯人の顔を思い返していた。
畜生・・。どこかで見たことがあるのに思い出せねえ。喉の奥に魚の骨が引っ掛かったみたいに厄介だ。
もどかしい・・。
うんざりとアクタは寝ていた。
すると、突然、アクタに雲上人の偉い人からの使者がやってきた。
アクタが人を殺したという容疑だ。アクタは呆然と口を開けた。
「な、なにをおっしゃいますか。アクタ様はずっと病気で寝込んでいたのですよ。やっと回復なさったのに・・。」
老婆が必死で弁解してアクタを庇おうとしていた。
「お前を襲ったと思われる犯人と思しきものが殺害されて、川に浮かんでいたのだ。」
「その遺骸がこともあろうに、貴族のさる息子であった。そなた身に覚えはないか? 」
アクタには何か何だかわからなかった。
不意にあの男の顔が浮かんだ。嗚呼・・俺に仕事を頼んだことがある貴人だ。そのごろ忙しくてできないと丁寧に断ったはずだ。
なんでだ。あの後何かあったのか?
アクタは蒼白になった。この時代、この世界は身分格差が激しい。
アクタは天才といえども職人にすぎない。貴族の息子と何かあって貴族が死んだらアクタの罪になる可能性が高い。
アクタは自分の状況を察して更に蒼白になった。
一難去ってまた一難かよ。うんざりだ。
アクタはしばらく雲上人の使者の尋問を受けた。とても辛い尋問だ。同じことを何回も言わされるのだ。
あの時何かあったのかとアクタに何度も問いかけるのだ。
これは拷問かいとアクタは思わずにはいられなかった。
何度もアクタは思い出す限り、同じことを話した。
「ですから使者様。俺はいきなり刺されたんですよ。その犯人が、仕事を頼んだことの或る貴族の息子様など思いもよりませんでしたよ。今まで俺は生死の境をさ迷っていたんです。もう勘弁してください。」
死者はふむ・・と思案気な顔をしてしばらくひそひそと話しあって、上司に問い合わせると言った。
アクタはほっとした。やっと終わるのだ。
短くも長い時が過ぎた後、上司と思われる貫禄があって身なりがいい男が傲慢にアクタに命じた。
「職人アクタとやら。 お前をこの地域から追放する。どことなりと去れ。」
「はあ?」
アクタは呆然と呟いた。
「お前は容疑者となっていた。しかしずっと生死の境をさ迷っていたという証言もある。
無実ということはわかったが、貴族の面子が立たぬと立腹しているお方が居られた。
息子が不穏な死を遂げたのも動揺しているのだろう。
お前はここにいると危ないかもしれぬ。無実であっても腹いせに冤罪となって殺されるかもな。
貴族の面子も立てて、気の毒だが、ここを出ていってくれ。」
アクタは呆然となって、言われるままに、貴重品を包んで家を追い出された。
突風が吹いてアクタはいきなり我に返っていきなり己の状況を全て把握し、驚愕の顔をした。
思わず、雲上人の使者と上司を追いかけようとしたが、剣を抜こうとしていたのでアクタはひやりと思いとどまった。アクタはへたりと座り込んだ。
「アクタ様・・お可哀相に。アタシの家族が遠くの地で商売をやっています。そちらにいかれてはどうですか?
アタシの手紙を渡しますから・・。」
老婆はあまりのアクタの受難に涙しながら、救いの手を差し伸べた。
アクタはもう藁にもすがる思いで、老婆の言葉に従った。
こうしてアクタの追放は突然なされた。
アクタはあまりの運命の激変についていけぬまま流される小舟のようだった。
嗚呼・・畜生。なんてこったい・・。
アクタはもう呻くことしかできなかった。
割れたお茶碗の破片を漆などで継ぎ合わせて、更に金箔や銀や赤や青などの彩色を付けることによって、前より素晴らしい品物、お茶碗を創り上げることを『金継ぎ師』と謳われた。
これは一時、庶民や貴族でも流行だった。
その中で、一際異才を放ったのがアクタと呼ばれる『金継ぎ師』だった。
アクタはどんなに原型を留めぬほどの割れたお茶碗や壺などを、丁寧に一つ一つ取り上げて、1か月の間には必ず、原型の品物より上質で豪華な品物が出来た。
更にアクタは全く異なる破片を上手く継ぎ合わせて新しい壺やお椀など芸術品ともよべるものを創れる才能があった。
その異才に魅了される貴族も庶民も多く、アクタには多くの注文が来たが、アクタは仕事が遅いのでどうしてもという人以外は丁重にお断りした。
それに「傲慢な!」と立腹するお客も居たが、アクタは職人気質で、どうしても手抜きはできないから仕事は遅くなる。申し訳ないけど・・とアクタは何度も謝罪した。
その様子に客も、職人気質で天才肌のアクタは扱いづらいことが解ってきて、何も言わなくなった。
その才能に嫉妬し、良からぬ事を考えるつまらぬ下衆な者はどこにでもいるもので、ある日、アクタは利き腕をいきなり見も知らない誰かに切られそうになった。思わずアクタは利き腕をかばったが、その代わり、顔に深い傷を負った。アクタは意識を失った。
叫び声が聞こえた。誰の声だろう。
なんでつまらない陳腐な結末なんだとアクタは思いながら馬鹿野郎と犯人を心中罵った。
絶対このつまらない事を企てた野郎をぶん殴ってやるとアクタは心に誓いながら倒れた。
意識が暗転した。
実行人の顔を確かにアクタは脳裏に焼き付けた。
慌てて、逃げた間抜けな蒼白の顔。なかなか整った顔だ。見覚えがある。あれは‥確か・。
半年の間、アクタは生死の境をさ迷った。傷は深く高熱でアクタは何度もうなされ死にかかった。
傷に致命傷になりえる菌が入らなかっただけでも不幸中の幸いだった。
破傷風だ。その菌は体内に入ると毒性で神経や、けいれん発作を起こすほどの危険な菌だ。
その特効薬はいまだに無かった。
アクタは汗と血塗れになりながら自宅で療養した。
アクタには家族はいない。とうにはやり病でみんな亡くなった。アクタは免疫力が強いらしくアクタだけが生き延びた。
そのせいかどこかアクタは世捨て人のように職人として、仕事だけに専念していた。
アクタの家には家事や掃除をしてくれる老婆を雇っていた。
毎日老婆はアクタの家を朝早く訪れて、朝食 昼食 夕食 時には夜食とアクタの食生活を管理していた。
老婆も家族はとうに巣立ちして、遠くの地で商売をしているという。
老婆も引っ越そうと言われたらしいが、老婆は断った。この住み慣れたところから離れたくなかったのだろう。
老婆はどこか年老いた猫に似ていた。
猫は家に棲むという。
それに新しい家族の邪魔になりたくなかったのかもしれない。
意識朦朧としていたアクタの枕元に誰かが居た。
白い服を着たとても高貴そうな人だ。あんた誰だ?アクタは貴族の友人なんかいないぞ。
『そなたは稀に見る才能を持っている。我はこの地域の土地神 チンメイという。そなたの才能は惜しい故、我が助力しよう。そなたの命を回復させる。』
変な夢を見た後、アクタはみるみる熱も何もかも峠を越えたのを感じた。 生き延びたんだ。
あれは‥神様?わけわからないことばかりだった。
アクタはやっとの思いで立ち上がれるようになった。老婆の煎じた薬湯を飲みながら、腸が煮えくり返るような思いで犯人の顔を思い返していた。
畜生・・。どこかで見たことがあるのに思い出せねえ。喉の奥に魚の骨が引っ掛かったみたいに厄介だ。
もどかしい・・。
うんざりとアクタは寝ていた。
すると、突然、アクタに雲上人の偉い人からの使者がやってきた。
アクタが人を殺したという容疑だ。アクタは呆然と口を開けた。
「な、なにをおっしゃいますか。アクタ様はずっと病気で寝込んでいたのですよ。やっと回復なさったのに・・。」
老婆が必死で弁解してアクタを庇おうとしていた。
「お前を襲ったと思われる犯人と思しきものが殺害されて、川に浮かんでいたのだ。」
「その遺骸がこともあろうに、貴族のさる息子であった。そなた身に覚えはないか? 」
アクタには何か何だかわからなかった。
不意にあの男の顔が浮かんだ。嗚呼・・俺に仕事を頼んだことがある貴人だ。そのごろ忙しくてできないと丁寧に断ったはずだ。
なんでだ。あの後何かあったのか?
アクタは蒼白になった。この時代、この世界は身分格差が激しい。
アクタは天才といえども職人にすぎない。貴族の息子と何かあって貴族が死んだらアクタの罪になる可能性が高い。
アクタは自分の状況を察して更に蒼白になった。
一難去ってまた一難かよ。うんざりだ。
アクタはしばらく雲上人の使者の尋問を受けた。とても辛い尋問だ。同じことを何回も言わされるのだ。
あの時何かあったのかとアクタに何度も問いかけるのだ。
これは拷問かいとアクタは思わずにはいられなかった。
何度もアクタは思い出す限り、同じことを話した。
「ですから使者様。俺はいきなり刺されたんですよ。その犯人が、仕事を頼んだことの或る貴族の息子様など思いもよりませんでしたよ。今まで俺は生死の境をさ迷っていたんです。もう勘弁してください。」
死者はふむ・・と思案気な顔をしてしばらくひそひそと話しあって、上司に問い合わせると言った。
アクタはほっとした。やっと終わるのだ。
短くも長い時が過ぎた後、上司と思われる貫禄があって身なりがいい男が傲慢にアクタに命じた。
「職人アクタとやら。 お前をこの地域から追放する。どことなりと去れ。」
「はあ?」
アクタは呆然と呟いた。
「お前は容疑者となっていた。しかしずっと生死の境をさ迷っていたという証言もある。
無実ということはわかったが、貴族の面子が立たぬと立腹しているお方が居られた。
息子が不穏な死を遂げたのも動揺しているのだろう。
お前はここにいると危ないかもしれぬ。無実であっても腹いせに冤罪となって殺されるかもな。
貴族の面子も立てて、気の毒だが、ここを出ていってくれ。」
アクタは呆然となって、言われるままに、貴重品を包んで家を追い出された。
突風が吹いてアクタはいきなり我に返っていきなり己の状況を全て把握し、驚愕の顔をした。
思わず、雲上人の使者と上司を追いかけようとしたが、剣を抜こうとしていたのでアクタはひやりと思いとどまった。アクタはへたりと座り込んだ。
「アクタ様・・お可哀相に。アタシの家族が遠くの地で商売をやっています。そちらにいかれてはどうですか?
アタシの手紙を渡しますから・・。」
老婆はあまりのアクタの受難に涙しながら、救いの手を差し伸べた。
アクタはもう藁にもすがる思いで、老婆の言葉に従った。
こうしてアクタの追放は突然なされた。
アクタはあまりの運命の激変についていけぬまま流される小舟のようだった。
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