ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第5話 アクタの布団

アクタはほくほくとしながら、荷台に布団を置いて、人力車のように、前に設置した押して荷台車を動かすようにした。
勿論、押すのも木で創った。なるべく軽い力で動かせるように改良した。

ほんの少し、動かしただけで軽く移動できる。これならアクタにも動かせる。


荷台には果物や、大量の水をためた壺。 食料もある。これなら当分 困らない。

更にアクタは、どこかの家を回って、なるべく不要な布きれやはぎれを果物と交換でもらった。

アクタは裁縫道具も持っている。ちくちくと、不要な布切れと端切れを組み合わせてとても良く仕立てた。

雨にも丈夫なように雨除けの塗料も付けた。

塗料は、アクタの工房から持ってきた貴重品の一つだ。布とかお茶碗とか丈夫で今度は割れないようにと加工する塗料を創った。これはアクタの発明だ。

これは識者が知ったら特許をとれるんじゃないかという位の発明だったがアクタは気づかない。

そんな鈍感なアクタは嬉しそうに微笑んでこれで婆の息子や娘に会える旅への道が楽になったと喜ぶばかりである。


アクタの背後には、布団の中から黒い長髪がはみ出ていた。

アクタに憑いている屋敷の神 おかっぱの幼女神は冷徹にその長髪を見ていた。

確かに、いわくつきだった。あの職人馬鹿は気づいていないだろうけど・・この布団は、とても血筋がいい姫が変質的な男に攫われて、殺され、髪を切られ、布団の中に混ぜてイルモノだ。

男は愉快犯のようだ。いつ布団から髪が出てくるか楽しんでいるらしい。


とても美しかったと思われる姫の亡霊が座っていた。

しくしくと姫は俯いて泣いている。情けない。

『それでも姫か!しっかりしよ!』

幼女神は一喝した。びくりと姫は恐る恐ると顔を上げた。
はあと幼女神は溜息をついた。

『お前も災難だったね。でももう終わったのよ。お前は天には昇らないのかい。』

『それが神様・・どうしても昇れないのです。わたくしが何をしたのでしょうか? あれですか? わたくしは迂闊にも、恋人として付き合っていた男に騙されて殺されたのです。その後が酷いのです。髪は女の命なのに・・
わたくしの髪はこの布団に入れられてしまいました。わたくしはもう悔しくて・・。』


嗚呼と幼女神は悟った。髪は女の命とも言われていた。 姫は大事に髪を守っていたのだろう。
その怨念が髪に宿り、布団まで姫の呪詛に彩られて黒く禍々しくなっている。

あの金持ちの言っていたことは正しかった。

うんざりと幼女神は言った。
『 あんた天へ昇れないのならしばらくアクタと一緒に旅をするかい。
  あたしがいるからアクタはあんたの呪詛は届かない。何も気づかないだろうよ。あの鈍感には。』

『神様がそうおっしゃるのなら・・それにしてもアクタ様も災難にあわれたようで・・どうも追放されたらしいですね。酷いですわね。どうして何もしていない人がこんな目に合うのやら・・。』

幼女神はシビアに言った。
『運じゃよ。もはや運としか言いようがない。』

姫様は不思議そうに首を傾げた。
『神様は子どもの容姿なのに、いやに老成したことをおっしゃいますね。まあ神様だから何でもありなのでしょうけど・・。』

『神様に年の事は聞くでない。もう忘れたわ。』


そんな事情もつゆ知らず、アクタは長い間荷台車を押して、夕日が暮れるまで歩いた。

飯と水をかっくらってアクタはパタンと布団で豪快に眠った。

『 やはりきづかなかったのお。 アクタらしい鈍感さじゃのお。』
『 ええ。わたくしの髪が伸びてアクタ様の顔に触れたり、首に巻き付いたりしているのに全く気付きません。
アクタ様の鈍感さは稀ですわね。』

『首を絞めるでないよ。まったく。油断も隙もない。』
『申し訳ありません。わたくしの意思とは勝手に怨念が宿った髪が動くのです。』

姫は申し訳なさそうに謝罪した。
『でも幸運にも神様に会えたので良かったです。アクタ様や他の方に怨嗟をまき散らすこともない。』
『それもそうじゃの。アクタという奴は悪運が強いというかよくわからない奴じゃの。』

神様と亡霊はアクタが眠っている間語り合った。

勿論アクタは全然気づきませんでした。

ぐっすりと眠って朝日がアクタの目を覚ましました。アクタは水を汲んで顔を洗って、口も洗いました。

「ああ。よく眠れたなあ。 いわくつきの布団といったけど嘘だったじゃないか。」

アクタはぶつぶつと呟いて体の運動をした。

「「・・・・・・・・」」

神様と亡霊はアクタの背後で黙ってひそひそと話しあっていた。



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