ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第13話 アクタの再びの旅

夢のような数か月が過ぎた。

工房で、懸命に「金継ぎ師」として割れた壺や、茶碗を修繕していると、近隣のおばあさんや老人が遠慮がちに、品物を注文するようになった。

「すまんけどこれも直してくれんかねえ。これは爺さんの形見のもので割れてしまって捨てるのには忍びなくてとっといていたんだ。思い出が詰まっているお茶碗なんだよ。」

「わしも割れてしまった皿があるんじゃ。でもこれは先祖様が大切にしていたものだから・・。金は無いけど作った野菜とか果物があるぞ。コメもある。どうじゃ。物々交換で。」


形見や大切な皿かあ・・。コメや野菜をもらえるなら有り難いな。

「いいですよ。交換で、必ず修繕します。その代わりコメや野菜をくださいね。犬と猫も居るから・・。」

「ほお。犬と猫も飼っていたのかい。分かったよ。その条件で頼むよ。大切なんだよ。」

丁重に老人やおばあさんは何度もお辞儀をして帰っていった。


アクタははりきって、真剣に仕事にとりかかった。

割れた破片を元に戻すために、原型に近い形に組み合わせるのだ。

一つ一つ丁寧な作業をして、割れたふちに漆のようなものを塗ってしばらく乾かす。

そうすれば、欠片の補填にもなり、くっつくようになる。


しばらくして、欠片と欠片にまた塗料をつけて接着剤のようにくっつける。

下手したら全部割れるかもしれないから丁寧な作業だ。

そして少し力を込めてぴたりと合わさるように復元する。

穴があいているところは他の欠片や小麦粉などで土器に合う粘土細工をはめ込む。そして伸ばすのだ。

より美しく仕上げるために、「錆漆」で細かい穴や小さい段差を埋めることもある。

そのあと、防水やより硬度を保つため、特殊な塗料を満遍なく塗る。

その後、つなぎ目、痕跡に、赤い染料を塗ったりしたり、仕上げに金粉や銀粉など光る粉をかける。

そうすれば、割れた痕跡がより美しく芸術品のように映えるのだ。


アクタは、仕上がった品物を老人やおばあさんに見せた。

おばあさんはまあ・・と言ったきりぽろぽろと涙を流した。 老人はこれは何と美しい・・と呻いて良くなおしてくれたのうと嬉しさを露わにした。

多くのコメと野菜と果物が贈られてきた。

老人とおばあさんは大事そうに抱えて持って帰った。


アクタはなんだかひさしぶりに心温まるものを感じた。俺でも役に立つことは或るんだな。

あの二人を喜ばせただけでも十分だ。

数か月が過ぎた。

アクタはそろそろ旅に出なければと思った。

小屋や工房は綺麗に片づけた。

荷台には、野菜トコメ、果物。貴重な仕事道具、布団と犬と猫とその寝る布団

色々と増えたもんだな。アクタはそう呟きながら

工房を貸してくれた家の人に、新しく作ったガラスと茶碗と野菜とコメや果物を渡した。

数か月貸してくれたお礼だ。

家の人はびっくりとした表情でこんなにいいのかいと言った。

「あんた・・それにこのガラスのコップやお茶碗は見事だよ。もしやあんたはとても有名な職人じゃないかい?」

目事な出来ばえに感嘆した家の人は尋ねたが、アクタはそんなに有名じゃないと否定した。

「ありがとう。貸してくれて・・。お世話になりました。さようなら。」


アクタは手を振って荷台を押した。

家の人も手を振ってくれた。


犬と猫は荷台で無垢な目でそれを眺めていた。

「嗚呼‥お前ら待っていてくれたんだな。悪かったな。さあ行こうか。」

少しふくよかになった犬と猫の身体を嬉し気に眺めてアクタは再度旅へ出た。

おかっぱの幼女神とお姫様も勿論アクタの背後にいる。

『ひさしぶりに良いものを見たのお。』

『ええ。老人たちもあんなに喜んで・・余程大切だったのですね。 家の人も嬉しそうにしていたし‥
アクタ様は幸福の神のようですね。』


『本人は不幸の渦中にいるんじゃかな。あの調子では忘れておるな‥。』

犬と猫は嬉しそうに鳴き声を上げた。
アクタも嬉しくて笑った。
幸福な夢のような時だった。


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