ゴミの金継ぎ師

栗菓子

文字の大きさ
23 / 58

第23話 アクタの進化

目を奪われてから、アクタは一週間深い眠りについた。

嗚呼・・心配そうに犬と猫が視ている。犬が心細そうにアクタの頬を舐めている。早く起きてほしいのだろうか?

アクタは幽体離脱をしているのか・・どこかでアクタ自身の眠りについた姿と、犬と猫を上位空間で見ているような感じだった。


おかっぱの幼女神がアクタの霊体に気づいて、珍しく顔をほころばせた。

『よく耐えたな。アクタよ。お前には強力な加護を身に付けてしまった。これから色々な能力が覚醒するぞ。
人間にも火事場の馬鹿力があるだろう。あれじゃよ。潜在能力を引き出し、更に神の加護によって、神の力も身に付けてしまった。アクタはしばらく能力の使い方を学ぶんじゃ・・。
アクタは割れた椀とか欠片を修繕する「金継ぎ師」だったから・・恐らく、その能力が増幅されてなんでも修繕されるぞ。人間の身体や心もな・・。人間も精密な有機体じゃ。神が泥から作った人形の逸話もある。ならば、人間も簡単にアクタは治せるようになる。それどころが、前より遥かに上等な存在に仕上げることもできるかもしれんよ。』


「はあ?」

アクタは間抜けな声を上げた。それは昔の聖人のようなものでは・・?

お姫様の亡霊が不意に現れた。
『アクタ様。よく耐えられましたね。わたくし、アクタ様がそんな試練を超え、耐えるとは思っていませんでした。
思っていたより、アクタ様は激情家で、苛烈な面がおありになったのですね。わたくし、感嘆いたしました。』

お姫様は少し、悲し気に自嘲した。

『わたくしも。アクタ様のように立ちむかえる勇気があったなら‥あの男にかなわぬまでも些細な傷を与えればよかった。』

アクタは不意にお姫様が時々消えるのを知っていた。どこかに行っているとは知っていたが、妙にアクタは悟った。
「お姫様。もしかして貴女は自分を殺した男に会いに行ったのかい。」

『ええ・・でもあの男はわたくしの気配に気づきません。あの男はとても怖い人です。わたくし以外に何人も殺しています。異常な心と、凶運を持った男です。わたくしの母親は、あの男がわたくしを殺したことに気づいています。
でも証拠がなくて情けなきことですが、わたくしの父親はあの男に騙されて、誰かに攫われたと思っています。
真実に気付いているのは、わたくしの母親だけでしょう。』

「お姫様・・お姫様の遺体はどこにあるんだい。」

『見も知らぬ川に捨てられました。恐らくどこかの水底に沈んでいるでしょう。あの男は悪運が強いから悔しいけど
わたくしのような亡霊は見えません。何か変なものにまもられているように悠々自適と暮らしています。』


お姫様は、生きている時も、死んだ後も何もできぬ自分を歯がゆく呪ったこともあった。
しかし今は、アクタのような男に出会えて、これは神様のせめての祝福だろうかと思ったこともある。


アクタは、犬と猫の命をあんな怖い神様に捧げるようなお方ではなかった。自己犠牲に満ちて、思わぬ勇気がある
思いもがけない立派な男だった。知れば知るほど、アクタの優しさ、勇敢さに惹かれていった。


霊体なら、心も筒抜けだ。お姫様のほのかな淡い慕情がアクタに向けられていることをアクタは知った。

アクタはなんとなく当惑したが、こんな綺麗なお姫様に慕われるのは悪くはない。

アクタはありがとう。お姫様。俺もお姫様に出会えてよかったよ。と素直に告白した。


お姫様はアクタに受け入れられた事を知って花のような笑顔を見せた。

嗚呼‥生きているうちに会いたかったな・・アクタはそれを少し残念に思った。

もう体にもどらなきゃ・・アクタの何かが忠告した。

急速に幽体が身体に吸い込まれるような感覚がした。


アクタは目覚めた。犬と猫が嬉しそうに舐めていた。よしよしとアクタは苦笑しながら撫でた。

お姫様・・俺はあんたを殺した奴に復讐するよ。俺たちを苦しめた奴らに必ず相応の報いを与えてやる。


アクタは復讐の意思を秘めた男として蘇った。


感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。