ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第31話 馬車の御者サイドⅡ

俺は一度殺されたと思う・・。何もしらないけど体が覚えていた。
いきなり、ナイフをつきつけられ、拘束されて主人の所業を尋ねられた時は心が凍り付きそうだった。

嗚呼・・悪い事はやはりどこかで漏れるんだ。 男は強かった。なにか変な力を持っていた。


一度意識が暗転した。気づいたらなんともなかった。でもあの激痛と死んだ感じは忘れられない。

あいつが俺をどうしても蘇生したとしか考えられない。そんな神業ができる奴にはできるだけ刃向かいたくない。

俺は洗いざらい、知っていることを喋った。汚い本音も言った。

悪いとは思っている。でも俺はやはり自分が可愛いのだ。男は不思議ともう罰は終わったと俺に言った。

俺はなんだが安堵した。そして主人を殺す計画の共謀をしろと言われた。俺はもう頷いた。俺は弱い。弱いから強い奴に従う。そして嫌な奴が消えてくれるのなら万歳としか言いようがない。


俺はどきどきしながら計画の実行を待っていた。

嫌な主人リース・デイラン様は、相変わらず外面は良くて、こんな人があんな醜い所業をするなんでと思うぐらいだった。直接、犯行を見なければわからないだろう。中身は醜悪で真っ黒だと知る人は僅かだった。


俺はそ知らぬふりで、馬車の扉を開けて、主人を馬車に乗せた。相変わらず主人は俺を無視していない者同様にあつかっている。当たり前だ。使用人にはあまり声をかけてはいけないと貴人は教わっている。

別世界の人間とはあまり関わってはいけない。これは暗黙の了解だ。

俺もそのほうがほっとする。嗚呼でも主人。あんたはとうとうやってはいけない事をやってしまったようですね。
あんたを冷ややかに殺すという男が現われましたよ。俺はどこかほっとしていますよ。やっと終わるんだって。
俺も罰されるかもしれねえ。しかしあんたは、また何か酷い事をやって隠すんでしょうね。あんたは絶対同じことを繰り返す。俺ぐらいだって、もうそういうことはわかっている。


俺はパーテイのある場所とは違う方向に馬車を走らせた。目的は犬と猫を捨てたあの場所だ。

リース・デイランは秀麗な顔を微妙に眉をしかめて「どこにいく?場所の方向が違うぞ?」といぶしかんた。

流石に貴族ですね。違和感に敏感なお人だ。自分の身を守る本能が強いのかもしれない。 

嗚呼、でももう出遅れなんですよ。悪い悪い坊ちゃん。

俺は無視して黙って馬車を走らせた。「お。おい!」と制止する声も聞こえない。黙ってあの場所まで走らせて止まった。リース・デイランは怒りで顔を真っ赤にしてどういうつもりだと怒鳴ろうとした瞬間、馬車の扉が勢いよく開いて、男がナイフでリースの美しい顔に切り付けた。深い傷が主人の顔に残り飛び散った血が馬車を汚した。

へえ。坊ちゃんも血が赤いんだ。でっきり別の色が流れていると思った。

俺は他人事のように眺めた。

男が坊ちゃんのしたことを淡々と言った時、坊ちゃんの驚愕した表情は忘れられない。悪いことがばれた子どもがなにか罰を受けると気づいたような表情だ。信じられないような顔もしていた。まさか坊ちゃん。自分だけは大丈夫だと安心だと疑わなかった?

嗚呼・・悪い貴族の教育の弊害でしょうかね。親や、目上の人に従って貢献していれば、格下の者や、動物に何をしてもいいと思わされてきたんでしょうか?馬鹿な坊ちゃん。どんな人にも心はあるのに・・。坊ちゃんはあまりにも世間知らずでしたね。


坊ちゃんは高い代償を払った。泣きながら許してくれと言っても男はやめずに淡々と痛めつけながら、復讐を息絶えるまで成し遂げた。


坊ちゃん・・リース・デイラン様はぼかんと驚愕したような表情で息絶えた。なんだか滑稽ですよ。品がない。
あれほど品にこだわっていたのに最期は無様ですね。


俺はまたあの男に殴られた。俺も襲われたと偽装のためにだ。情けが少しぐらいあるらしい。俺はふらふらと痛みを抱えながら、あの男の言う通り従った。馬車を走らせて、パーテイの方向へ向かった。途中、盗賊に会って襲われたと偽証をするために工作した。幸いにもパーテイへの方向への道は森が近くにあって、人が誰も居なかった。目撃者もいないだろう。

男が去ったあと、リース・デイラン様の遺体は抱えて、馬車の中に乗せた。
ここに捨て置くと、パーテイとは別の方向に捨てられているなんでと怪しまれる。

すみませんねえ。坊ちゃん。俺は唯最後に見開いた目を閉じた。
嗚呼・・死に顔だけは綺麗だな・・。

俺は溜息をついた。俺は、悲鳴を上げて深く傷ついた身体を抱えながら必死で助けを呼んで、馬車を少し走らせた。

「どうした!」「なにがあった!」 ちらほらと村人や、御屋敷の使用人が駆けつけてきた。


嗚呼・・これで終わると俺は思った。「い。いきなり盗賊に襲われて・・リース・デイラン様が・・。」

俺は蒼白になり震えながら意識を失い倒れた。


それから俺はしばらく病室で調査と尋問を受けた。
しばらくは俺も怪しまれたが証拠がないので幸いにも牢へは行かなかった。

妻も泣きはらした顔で、よく無事でと俺を抱きしめた。
知らなかった。俺って意外と愛されていたんだな。


俺はしばらく運命を時に任せた。
不思議と、リース・デイラン様の遺体は盗賊の仕業として片づけられた。

なんだか親はどこかお芝居をしているように葬儀をしていた。
母親はどこかほっとしているようにも見えた。もしかして、リース・デイラン様がなさったことに気づいていたのかもしれない。奥方様の不審な死にも疑問に思っていた節があったようだし。

父親はわからなかった。無表情で無関心に見えた。

でもこれで悪い悪い坊ちゃんはいなくなった。

この家がどうなるのかはわからない。あの男は唯、復讐をした。それだけだ。


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