ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第5話 嫁の手料理

嫁は、ずっと過去を引きずっていたようで、アクタに話を思い切って告げてから、何かがふっきれたようにすっきりしたようで、いつもより、笑顔で張り切って、夕食の献立をこしらえていた。

大根と、南瓜の煮物。 新鮮な白身魚を香味で味付けて香ばしく焼き上げている。 体にいい野草をとって灰汁をとっては、豆腐とあえて、なにか香辛料を入れて、ピリッとするようにしていた。
優しくもピリッとする斬新な味にアクタは感嘆した。

お米も柔らかく丁度出来栄えだ。

これは、飯屋としても十分にやっていける技量だ。

「こりゃあ。随分と張り切って作ったな・・。これは飯屋でもやっていける味だぜ。勿体ないなあ。」

「本当にほっと温まる味で、斬新な味もあるし、こんなに美味しいものを創れたんだね。はるさん・・。」

はるの手をこめた手料理を褒めちぎると、はるは照れて、頬を赤らめた。

「そんなに褒めないでくださいよお。父のために少し手料理にはこだわりがあるんです。父は今体が弱くて、悔しいけど兄が実権を握っています。時々、美味しい料理を食べさせたいと乳母に教わって学んだんです。なんでも学ぶものですね。アクタ様が気に入って良かったです。」

「なるほどな・・。」
アクタはゆっくりとはるの手料理を堪能した。


数日後、アクタは軟膏を買ってきた。行きつけの薬屋でよく効く傷消し薬だ。

アクタは思い切って、閨の時、はるさんの身体を傷をみせておくれと頼んだ。案の定、はるはためらったが、思い切って、胸と、傷がある背中を晒した。一時は夫婦となった仲だ。

過去を見せるつもりではるは、アクタを夫としてみせたのだろう。

古いが、やはり傷口はある。 アクタは、「はるさん。よく効く傷消しの軟膏を買ったよ。それを今から付けていいかい。」
「えええ・・。アクタ様。そんなにして下さらなくても・・。」

はるは驚いて、断ったが、アクタの真剣な顔を見て、大人しく身を任せた。

丁寧にアクタは春の背中の傷跡に軟膏を塗った。 胸のあたりもだ。アクタはなんだかはるを傷つけたやつらが忌々しくなって、こんな傷は早く治れと祈った。

そのせいか、少しずつ、軟膏を塗って、当初見た時より、傷が薄くなっていった。

はるは、四角い化粧鏡で、背中や、胸を見て、嬉しそうに頬をほころばせた。だんだん傷が良くなっている。

「あの軟膏はよく効きますね。驚くほど効果があります。傷があまり目立たなくなって嬉しいです。良い薬師もいるんですね。ありがとうごさいます。アクタ様。」

はるは、「なんだか嫌な過去が消えていく様だ。」と言った。
神様っていい事もするんですね・・仕事をなくして一方的に追い出された時は神も仏もあったもんじゃないと嘆いたときもあったけど・・アクタ様に出会えて良かったです。

「そうだな‥神様のなさることは人間には分からねえけど‥時折嬉しい事もある。だから世の中捨てたもんじゃないと思わなきゃあやってらんねえよ。」


「そうですね。あの親バカや世間しらずの非常識な馬鹿娘の本性も分かったし・・。最後はアクタ様のような良い方に引き取られて嬉しいです・・。」

はるはじみじみと呟いた。はるが寝付いたごろ、何かが脳裏に囁いた。

『あれは軟膏の効果だけではないぞ。お前の力もあるんじゃよ。ひさしぶりじゃのお。アクタ。どうした。我を忘れたかえ。この薄情者よ。』

アクタは口に出さずに心だけで、話した。
『いや、忘れるわけがないよ。おかっぱの幼女神様。あんたは今までどうしていたんだい。時々、消えるようになってもう会えないと思ったよ。』

『すまぬの。我にも色々事情があってな。ちょっと神の世界へ行って、力を蓄える修行をしていたんじゃ。
なにか弱っていく感じがしての。その度に神の世界へ行って、力を補充してきたんじゃ。
それより、アクタよ。そなたは嫁をもらったのかえ。せっかく良い話を言おうと思ったのに・・。
まあ良い。お前が好きだったお姫様が生まれ変わって、現世で人生を生き直すことになったんじゃよ。今はもう十歳になっているよ。勿論、お姫様はアクタや、藍とソラを忘れていない。前世の記憶を持っているよ。
アクタにも会いたがっているようじゃった。どうする。アクタ。』

『なに!?』

アクタは目を極限まで見開いた。 お姫様が生まれ変わった? 嗚呼だとしたら嬉しい。生きて触れることもできる。しかし今はまだ十歳だ。子どもだ。もう少し待とう。

『まだ子どもじゃないか‥もう少し年をとってから会いたいな。』
『いくつになっても男に惚れた女は女じゃよ。』
『アクタに惚れたお姫様は今は、真理子と名乗っている。豪商の娘で贅沢な暮らしをして居るよ。
親にも恵まれて幸福そうじゃ。』

『アクタよ。そなた一夫多妻をするつもりかえ。』
『あっという間に、娘は年ごろになるよ。勿体ないと思わぬかの。』

アクタは迷った。はるとは相性は合わないが、一時は夫婦となった関係だ。それなりに情は或る。
しかし、お姫様のほうがアクタは大事だった。

しばらくして、はるとは本気でこれからどうするか話し合おうと思った。



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