ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第8話 或る男 サイド

最近、主人の様子がおかしい。そんなことは、無知な下っ端でも、身近に仕える主人のことは分かる。

主人は変な人だった。 
なにか隠れ住むように、生きている人だが、普通の人よりどこか品があって、粗野に見えて意外と教養深く、何でも知っていた。

なにか事情がありそうだなと思っていても、養っているまだ幼い弟や、母が気になって知らぬふりをした。

だが、或る男にも、敏感な危険や不穏を感じる本能があった。


その不穏さは時がたつにつれてきな臭くなってきている。


主人は、なにか大きな組織に仕える幹部みたいな高い地位についていたらしい。

どうも、出る杭は打たれるという風潮で、主人みたいな利発で、不正に厳しすぎる潔癖すぎる面を忌み嫌った上のものが、冤罪をなすりつけ、辞職させたらしい。

この事については、或る男も、うーんと考えさせられるしかなかった。

確かに主人は、そういうところがある。しかし物事には何事も臨機応変に対処する才能も必要だ。

主人は自分が正しいと信じて疑わない。そういうところが鼻についたのかもしれない。

世の中、そんなに甘くないと清廉潔白じゃないと或る男にも分かっている。 清濁併せのむ世の中だ。

生きるためには、泥を飲む必要もある。 あまりにも清き水に魚は棲まず。 

あまりにも清浄だと、泥水に慣れ切った魚は死ぬだろう。

世の中そういうものだ。慣れずに、脱落していく者達は多いだろう。 主人のそういう潔癖すぎる面は、上手くいけば、良い結果を出しただろう。この場合、それが、仇になったのだ。


人間ってそんなにきれいなものじゃないよ。
或る男は達観していた。 或る男は家族は愛していたが、他の奴らは死んでもかまわない。そういった非情な面ももっていた。所詮弱肉強食の世の中だ。
優しい人や、純粋な理想の世界を求める人は苦しむだろうが、仕方がない。世の中そういう人もいるのだ。


或る男は、そういう風に世の中を無常を眺めていたが、それが我慢できなない純粋な人々が居たらしい。

困ったものだ・・。

そういうやつらって、何をしでかすかわからないんだよな。主人は間違いなくそのタイプだった。

主人は、密かに仲間を集って、喧々諤々といつも議論をしている。

相変わらず飽きないなあと半ば呆れて見ていたが、いよいよ、反乱の計画が立てられたことを盗み聞いて、或る男は少し冷や汗が出た。

どうする、辞めようか?でも、ここを出ても厳しい世の中だ。なかなか転職は難しいだろう。
大抵、忠誠を誓った人たちは、一定のところに勤めて一生辞めない。 体が動かなくなるまでだ。

馬鹿らしい。飽きやすい人にはうんざりだろう。 

やけっぱちで、逃亡したり、慣れない人は放浪を選んだりした。

でも、或る男は、特に、ここで一生働いても苦にはならなかった。 賃金は十分にもらっている。

これで家族も助かっている。 或る男は、僅かな義理と恩のために、沈黙を選んだ。

これが或る男の選択だった。

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