ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第12話 再会Ⅱ

前世はお姫様だった真理子は順調に、今世の人生を健やかに過ごしていた。

真理子は、前世の記憶もあって、何があったらいけないと、子どもの頃から剣や護身術を親に頼んで、教授してもらった。親はそんなことをしなくても守るから大丈夫だと言ったが、真理子はこのときばかりは頑固になって、弱い女でも一人で自分を守れるようになりたい。悔しいから。安心しているけどいざという時があったら何もできないのは嫌だと子どものように駄々をこねた。

両親は、それを見て、何かを思ったのか、真理子の要望通り、優秀な教師を付けた。

真理子は護身術といざとなると逃げる避難する術も学んだ。生存術を彼女は厳しい訓練を幼少の頃から身の付けるようになった。

それを見て、感化された兄一臣も、護身術などを学ぶようになった。 妹には負けてはいられなかったのだろう。
兄の沽券にかかわる。なまじ豪商の恵まれた育ちのため、男としてはやはり完璧な兄になりたかったのかもしれない。

結果的にそれが兄の命を救うことになる。


真理子が14歳になったごろ、真理子にも見合いが来た。この時代は、女は早く結婚させられる。でないと、売れ残りと囃し立てられたり、自立を余儀なくさせられる。真理子は勿論自立のため、勉強も、運動も人一倍励んだ。
前世の繰り返しはしたくない。何も知らない無知な愚かな女にはなりたくないと真理子は真剣にひたむきに生きた。

物事の本質を知る知恵と、人を見る目が欲しいと真理子は常に友人や両親に語っていた。
そうでないと、騙されて何をされるかわからないと真理子は危惧を抱いて呟いた。
見合いの相手も本当に良い方かどうか真理子は両親に尋ねた。

真理子は親に盲目的に従う娘ではなかった。ちゃんと本質を見きわめる女になりたかったのだ。

両親はそんな真理子の気性を知り、困ったものだと思いながらも微笑ましく思っていた。
真理子のひたむきな気性は好ましい。
生きることに真っ直ぐな性質は清涼で、汚濁に塗れた人の息を少しでも軽くさせる。生きやすくなる。

真理子は、天の贈り物かもしれないと思うほど、生き方が美しかった。

その美しさに見惚れた両親と兄と姉は真理子に恥じぬ生き方をしたいと思うようになった。

その清涼な花に惹かれた虫のごとく求愛者は多かった。

しかし、真理子はどれも渋っていた。勿論アクタ様とおかっぱ頭の幼女神が忘れられなかったのである。


そんな或る日、とんでもない事件が起きた。
後に『無価値な者の反乱』とよばれるほどの大きな大きな反乱が起きたのだ。

さる貴族に嫁した安和子という長姉が巻き込まれて亡くなったのだ。  母はそれを聞いて卒倒した。
どうも、安和子様の夫と言う方は思ったより清廉ではなかったらしい。相当恨まれていた。
女遊びも激しく闇賭博や裏業界の怪しい人たちとおかしな関係を持って、利益を上げていたらしい。

後ろ暗い事をしている旦那が、安らぎを与える女神を妻にしていたとは皮肉なことだ。
結果的に、旦那様の罪と業が妻と子にまで被害が及んだ。

母は、それを聞き、長姉をあの男にくれてやったことを生涯悔やみ続けた。

父と兄はそれどころではなかった。反乱勢力が、貴族の親戚である我が家まで襲おうと暴動を起こしたのだ。

大きな鉄の扉や、頑丈な防備は、相手の強力な武器で今にも破られそうだった。


機転の利く使用人や、従者はすぐに避難の馬車を用意した。
「お嬢様!旦那様方すぐにお逃げください。命が大事です!」

凄まじい罵声や汚い怒号が壁越しに聞こえてくる。もはやここは安全ではない。

家族一同それを理解して、大事なものを僅かに持って、一時、彼らは全員必死の逃亡をすることにした。

場所は遠い山奥の避暑地の別邸だ。ちゃんとそこには住み込みで家を綺麗にしている使用人がいる。いつ来てもいいように準備されている。まさかこんな事態で使うようになるとは・・。

真理子は、確か安和子姉様が一度行ったことがあると言ってたわ。嗚呼そういえば、その近くに茶碗とか有名な匠の工場の町があったと言ってた。お姉様からもらったコーヒーカップは今でも大事にしている。
アクタ様を思い出すもの・・。 茶碗か・・もしかしたらその界隈にアクタ様はいらっしゃるかもね。そんな都合のいいことはあり得ないかしら。

真理子は必死で自分の夢や願望を打ち消した。しかし、真理子の夢は本当に叶うことになった。

真理子たちが疎開した別邸はアクタの工房の山奥の近くだった。


両親たちはしばらくそこで引きこもりを始めた。

真理子は気分転換に、侍女を連れて、町へ出ることにした。嗚呼、安和子姉様の言ったとおりだわ。
とても活気があって、気分がいいわ。
この町は・・。素敵な異国の茶碗やステンドグラスや、宝石みたいなコップ・・。

何で夢みたいなの。 ここにもアクタ様がいたら・・真理子はふうと溜息をついて遠くを見た。すると、アクタ様が居た。ええ?嘘でしょう。わたくしは姉様は死んだショックで幻を見ているのかしらと真理子は自分の頬をつねりたかった。
『夢ではないぞ。ひさしぶりじゃのお。お姫様よ。やっと再会できたのお。』
この声は・・あの幼女神の声だ!間違いない!じゃあやはり、あの姿は幻ではなく・・本物!

真理子は思わず、大声で「アクタ様ですか!? 覚えていますか?あの時のお姫様の亡霊です! わたくしです生まれ変わりました!」

その大声に驚愕して、侍女もお嬢様?と何事かと心配そうに見やったが、真理子はそれを歯牙にかけず、その声に振り向いたアクタ様の目が驚愕に見開くのを感じた。

小さく口が動いた。「オ ヒ メ サ マ カ イ ?」

読唇術も身に付けた真理子はええそうよと何度も頷いた。何故か安和子姉様が死んだ時よりぶわっと涙が出てきた。

嗚呼、ごめんなさい。お姉様。わたくしはアクタ様に会えた方が何倍も嬉しいです。ごめんなさい。薄情な妹でごめんなさい。真理子は現世の姉に詫びながら、アクタ様と幼女神の再会にこの上ない歓喜を持っていた。

アクタも同様に嬉しそうに笑って、「お姫様。綺麗になって良く生まれ変わったなあ」と言って手を振りあった。

アクタと真理子は早足でようやっと再会できた。彼らは無言で抱きしめあった。

それを腰を抜かした侍女が見ていた。お嬢様がご乱心なされたと侍女は混乱した頭で考えていた。



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