ゴミの金継ぎ師

栗菓子

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第13話  前世の仲間たち

真理子は、腰を抜かした侍女をなんとかいいくるめて、小さな金子を渡した。

「昔の友人よ。あまりにも懐かしくてつい抱きしめあったの。」

侍女はいぶしかんた。お嬢様はここに来るのは初めてでは・・。それにそのような卑しい男に会ったときはあっただろうか?お嬢様はずっと箱入り娘で、館をほとんど出ずに過ごしているのに・・。

「主人の命令が聞けないかしら。侍女よ。その気になったらわたくしはあなたを解雇することもできる。知っているのよ。貴女は、時折いらっしゃらるお父様の懇意になっている貴族の男性の情を賜っているでしょう。
貴女は相当あの人のお気に入りみたいね。そのまま密会を続けたいなら、お互いにこの事を黙っておくことよ。」

真理子は、今こそ令嬢としての格を見せなければと柔らかく、だがきつく脅した。

「ええ・・!お嬢様。見ていらっしゃたのですか?」

侍女は再び腰を抜かしそうになった。真理子は情けないと思いつつも、命令した。

「これでいいでしょう。他にも見られている人も居るかもしれない。でも今のところは秘密にしたい。
わたくしも彼らと話しあいたいのよ。じばらく時間を頂戴。 」
侍女には一時間でいいから 離れてくれと命令した。時間がたったらここでまた会うことを半ば強制的に約束して
一旦離れた。侍女は当惑しながらも、一時間だけですよ。と念を押した。

大事なお嬢様に何かあったら侍女も唯では済まない。解雇どころが罰を与えられるかもしれない。


真理子はやっと邪魔者を退散出来てほっとした。


「アクタ様。神様。御免なさい。やっと会えたわね。嗚呼・・本当に夢みたい。そうだわ藍とソラは・・元気かしら?」

真理子は、勿論酷い目に合った猫と犬も忘れていなかった。

アクタは苦笑しながら悲しげに言った。

「お姫様・・もうソラと藍は天寿で亡くなったよ。あれからもう十年以上たっているんだよ。神様にも延命をお願いしたけど・・あまり天寿をいじくることはできないといわれちまった。仕方がねえよな。天寿だから。」


藍とソラは本当に長生きした。上手くすると化け猫や化け犬になるんじゃないかと思ったが、2年前に呆気なく逝った。二匹ともほとんど力尽きたように亡くなった。


その時、アクタは世界の無情さをまだ味わった。でも今度はお姫様の生まれ変わりが来てくれた。

嗚呼じゃあ、藍とソラも天で姿を変えて生まれ変わってきてくれるかもしれない。


アクタはそれを思うと嬉しかった。


「ええ・・そんな。藍とソラが・・。悔しいわ。もっと早く出会えば良かったのに。運命の神様は残酷ね。」

お姫様だった真理子は、きつく唇を嚙みしめた。思えば、長姉安和子の死によってここまで導かれたのだ。

何と言う奇縁であろうか。

「お姫様・・仕方がないんだよ。世の中そんなにうまくいくわけじゃねえ。でも嬉しいよ。お姫様が俺たちの事を
忘れないでここまで来てくれるなんで・・。」

嗚呼・・違うのよ。アクタ様そうじゃない。偶然なのよ。真理子は、ここまで来ることになった経緯をアクタと神様に話した。『無価値な者の反乱』によって命の危機にあって、ここまで疎開したのだと正直に真理子は言った。
まさか、ここでアクタ様に会うなんで夢にも思わなかったのだ・・。


「お姫様・・姉さんが殺されたって本当かい。安和子っていうのかい。知っているよ。うちの知り合いがコーヒーカップを売ったって言ってたよ。とても柔らかな物腰の気品ある婦人だった。と印象に残っていたんだって・・あれこそが真の貴婦人かも知れないなと言ってたよ。素敵な人だったんだな。」

「安和子姉様がそんな風に言われていたの・・。そうね。安和子姉様は人を和ませる雰囲気があったわ。不思議な人だった・・。もっと話したかったのにね・・。生きるのに精一杯でわたくしは実の姉も良く知らなかった。もう既に嫁してしまったし・そのまま幸福になると思っていたわ。人生って皮肉ね。」


良くも悪くも女は夫の運命に翻弄されるのだ。 真理子はその事を実感した。


『仕方がないのだ。真理子よ。お前も殺されたではないか・・。その姉も懸命に生きたはずだ。運がついえたのよ。

まあ今まで幸福であったから天に任せるしかあるまい・・。』

幼女神の声が聞こえた。嗚呼・・でもわたくし、時々やりきれないんです。弱い女は運命に翻弄されて死ぬだけですか?神様!

冷厳と神様の声が響いた。

『そう嘆くな。覚悟を決めよ。どれほど恵まれてもいつかは死ぬのだ。人は草のように運命の風に翻弄される。
しぶとく地に根をはり生き延びる者も居れば、ふわふわと天に還っていく運命もあるだけの事よ。』



神様・・わかっていても、まだわたくしは割り切れない事ばかりです。

真理子は、アクタ様や前世の仲間たちに再会できて素直に嬉しかった。あの長姉の死が無ければ・・。


真理子は姉の夫が憎かった。乱を起こした奴らが憎かった。

できることならこの手で罰したいところだ。しかしこれはあまりにも大きな運命に巻き込まれてしまったのだからどうしようもない。

やりきれなさに真理子は呻いた。

「アクタ様・・。わたくし唯悔しいです。何もしていないお姉様が何故殺されなければならなかったのか・・。
こうやって、わたくしたちは運命に翻弄されるばかりなのでしょうか・・。
でもアクタ様たちに出会えたことは感謝しています・・。嬉しいですよ。前世での宝物です。今でもそうなれるでしょうか?」

おずおずと真理子はアクタ様と神様に尋ねた。

『何を今更・・既に魂の友であろうか。』

「お姫様・・もう既に友人だよ。俺たちはずっと仲間だよ。大変だったな。辛かっただろう。お姫様・・。」

アクタは心配そうに真理子を労った。
真理子はポロポロとアクタの目の前で、子どものように泣いた。嗚呼・・やっとここに帰って来たんだ。
わたくしの本来あるべきところ。もう離れたくない・・。ずっと一緒に居たい・・。

神様なんとかならないでしょうか?

『そうじゃのお、よし我に任せよ。真理子の家族の夢で託宣しよう。』

『この二人は前世からの因縁深き運命の人だから二度と離れてはいけない定めと託宣しよう。待っておれ。』



神様ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

もう魂の友や仲間とは離れたくないのです・・。

真理子は願った。アクタ様とずっといたいと・・。

真理子はそのためならアクタ様と結婚して伴侶になることも厭わなかった。もう既に知り尽くしているからアクタ様の事は・・。まあ14年離れていたからそのごろのアクタ様は知らないけど大方、アクタ様の本質は変わっていないだろう。ほんの少しの会話で真理子は確信した。

お姫様は‥アクタ様の本質に惹かれたのだ。真理子も勿論同様だ。


そのためなら何でもしよう。もう何も知らない人と結婚は嫌だ。ぞっとする。

真理子は固く誓った。 

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