大輪の花火の輪

栗菓子

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第16話 人間の崩壊

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この国では、抑圧された人間が年に何万人も自殺している。
原因はいろいろあるけど、わたしは単にもう厭になったんじゃないかと思っている。

この世界はなんか生きづらいのだ。嗚呼そう金魚鉢に入れられてぎゅうぎゅう詰めになって窒息死寸前だったんじゃないかと思って要る。

なんでも監視されて、安全や便利の代わりに人間らしさと希薄性と漂白剤をつめた不自然な世界になっていった。


時々なにもかも解放されたい人の気持ちはわかる。

でもわたしはまだ生きていたい。だんだん頭がすこしずつガラスのカケラのように崩れていく感触がするけど
生きながら死んでいるけど、わたしは最後の最後まで生き続けたい。諦めたくない。

生き汚い。浅ましいと言われたこともある。でもわたしのからだは私に反して存在を存続させようとしている。

わたしはそれを止められないのだ。

所詮理性は、人間が生きるために生み出したちっぽけな歯止めに過ぎない。

それが無い人は、唯喰らうだけの生きるだけのものだ。

恐らくそれが一番正しい生存の形なのだろう。

それを嘆くひともいるが、わたしは唯、終わりを自分の終わりの過程を見届ける。

わたしにはわたしかいないのだ。

他人にも他人しかいない。

お互いに仮初に付き合っているだけなのだ。

その中で、何かが生まれ好ましい共に過ごしたい相手もいたようだが、わたしは残念ながら現れなかった。

わたしはわたしを抱えたまま、死へと還っていく。

つまらないわたしでも人生は濃厚だったと思う。

醜い思いを抱えたこともあった。自己嫌悪もした。優越感も抱いた。色々と穢い感情も抱いた。

でも今となっては、何もかも疲れ果てて、きれいな水にずっと浸かりたいなと思って要る。
輝く星とか美しい光景。朝露に光る葉の一枚を見る度に、わたしは嗚呼・・世界はこんなに美しいんだと思えた。


人間はなにもかも間違えていきていたのだろう。多分限界なんだ。

わたしはわたしという人間の崩壊を唯呆然と見つめていた。


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