大輪の花火の輪

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第24話 誇り高い猫

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わたしが幼い頃、家の近くに誇り高き野良猫が居た。

その猫は汚れているけど白猫だ。

毛並みで大きく見えたけどきっと中身はやせ細っていただろう。


当時はあまり食べ物もない時代だった。


その猫はとても強く、他の大きな傷だらけの猫を乱闘で倒した。

いつの間にかその白い猫はその猫たちのボスになっていた。


でも何故だろう。ボスらしき貫禄は無く、なにか繊細で弱弱しい感じもした。

あんなに強いのになぜ?

子ども心に不思議に思っていたものだ。


ある日、唐突に白い猫はホコリが溜まっている神社で息絶えていた。

どうも、寿命だったらしい。白猫は思っていたより老体だったようだ。

何故か、この神社に縁がある猫だったのかもしれないとわたしは思った。

わたしはひそかに神社の近くの花が咲いているところに猫を埋めた。

その上にいっぱいの良い匂いがする野草や花を添えた。

呆気ない死だった。あんなに強い猫でも寿命には叶わない。 


わたしはなんだか悲しくてわあわあと泣いた。まだこどもだからわからかったけど胸と頭がぐちゃぐちゃだった。

ばらばらになりそうだった。

わたしははじめて、生と死の無常を子どもながらに知ったのだ。


今わたしは死に近づいている。怖いけど恐ろしいけど誰もが辿った道だ。

わたしはわたしの道を歩んだ。あの白い猫も白い猫の道を歩んだのだろう。


その果てには何かあるのだろう?何もないかもしれない。でも生き物はみんな己の道を歩き続けるのだ。

わたしはあの誇り高い猫を真似して、誇り高く最後まで生きてみよう。




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