大輪の花火の輪

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第26話 善悪を忘れている人々

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病院で入院していた。しばらく点滴を打ちながら、わたしの腕は点滴の赤い跡でいっぱいになっている。

わたしはまだ生きている。 医学の発達は目覚ましいものがあり、本来なら死んでいた人も無理やり生かすようになっているみたいだ。


わたしは今や半死半生の身であった。そんな折、少し体調が良くなったらテレビを見た。


すると、芸人や、詐欺師が投資のポンジスキームとやらをやらかして、何十億ものの詐欺をやったらしいと話題になっていた。

わたしは呆れた。そんなに金に踊らされて騙される人が居るのか?

嗚呼・・。でも不安だったのかも。どうしようもなく生きることに不安な人たちが嘘かもしれないと思って藁をもつかむ思いでやったのかもしれない。バカとか阿保とか本当に頭が良い人は罵倒し嘲笑うかもしれないけどわたしはその気になれなかった。
彼らも生きることや未来に不安ばかりで怖かったのだろう。そんな心の弱さに付け込むのが詐欺師だ。


唯、己の欲と弱さに負けたのだ。彼らも勉強になっただろう。今裁判になっているらしい。

訴えた被害者側が勝ちそうだ。でも詐欺師はどこか他人事で夢を見ているようだと己の罪を求めていないらしい。

どうしてだろう?

本当に忘れているのかな。こういう人の騙す奴らは、被害者の痛みや嘆きは眼中にないんだろう。

弱いから負けたとも思って要るのだろうか?それは畜生道だよ。


なんだか被害者も加害者も善悪を忘れて何かに憑かれているみたいだった。


そうかみんな忘れているんだ。欲と不安や、生きる事への恐怖に憑かれて金という信仰に狂っていたのかもしれない。だから騙されるんだ。

これは本当に良い事か?悪い事か?

だから戦も起こる。何もしていない人がたくさん殺されても何も感じない。唯無情があるのみだ。


みんな本当に大切なことを何もかも忘れていくんだ。


わたしは少し怖くなった。 この世界は大丈夫かな。本当に良い事や悪い事を判断できる人はまだ残っているかな?

わたしのような愚かな人はいてほしいと願わずにはいられない。


わたしは生きることに戦うことで精一杯だ。

わたしが死んだ後の子どもたちが本当に頭もよく心も良かったらいいなと思わずにはいられない。


叶わぬ夢かもしれない。わたしは願わずにはいられない。
よりよく進化した子どもたちが幸福になることを願わずにはいられない。


わたしは死の間際に親の気持ちになった。











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