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高校を卒業して、大学に合格して、初めての夏だった。
高校からの彼女と別れた僕は、何を思ったのかわからない。
夏休み、3ヶ月のバイト代を全て注ぎ込んで、僕は別の大学に進んだ彼女が住む場所に旅行することにした。
別れたきっかけは、耐えられなかったからだった。
彼女の顔が見たくて、見たくて、毎日電話するくらいに仲は良かった。
でも、彼女は大学の勉強が楽しい、サークルが楽しい、といつのまにか僕の話をしなくなった。
先輩が優しいの、同期と仲良くやれてるの。
数学の授業難しくてよくわからないけど頑張ってるわ。
人付き合いが苦手な彼女が、良い人たちに囲まれて楽しく生活しているのなら、それに越したことはないのに。
僕は彼女が、僕の知らない彼女になっていくのが耐えられなくて、別れた。
彼女がいない夏。
それを確かめるためなのかもしれないが、ともかく僕は彼女に会いに行った。
彼女は大学の寮に住んでいて、僕は彼女の住所を知っているけど、流石に待ち伏せるのはまずいだろう、と思って彼女がバイトしているという大学の食堂に行くことにした。
大学の食堂は、夏休みでも営業しているのがいい。
彼女の大学は郊外で、駅からそこそこ歩くところにあったので、夏場だからか、すごく汗をかいてしまった。
その状態なものだったから、食堂のクーラーはとても気持ちが良かった。
テキトーに食券を買い、列に並ぶ。
僕と同じ年代の人は少なかった。
当たり前だ、今は夏休み、お盆明けだ。
せいぜいサークル活動している学生か、大学職員くらいしかキャンパスには来ないだろう。
冷たいサラダと、ヨーグルトと、冷やしうどんという謎の選択を受け取り、ふらふらと席を探す。
当たり前だが中は見えなくて、彼女がいるかどうかなんて確かめられなかった。
というか、そこまでして、ようやく僕は、普通に彼女を呼び出せばよくて、何もバイトしてるかもしれないなんて儚い望みでここまで来るなんて馬鹿みたいだ、というのとストーキングじゃないか、と少し冷静になった。
窓際のカウンター席に座り、目の前のコンビニに入っていく白い肌の群れを眺めながら、サラダをむしゃる。
汗で濡れた体は食事を受け取る間にクーラーですっかり冷やされてしまい、寒いくらいで、それを避けてカウンター席に座ったのに、まだ寒くて、すぐに冷やしうどんを食べる気にはならなかった。
「あいかわらず、クーラー好きだなお前」
…??
「よっ、久しぶり、真也、あれ、おぼえてない?」
黒髪の、中性的な顔立ち。
誰だろう、と一瞬考え込んで、同級生だったことを思い出した。
「良弥?」
「3ヶ月で忘れられてたらショッキングだよ、まったく。
真也と来たら、やっぱり岩屋さんにしか興味ないんだな。」
良弥は俺よりも成績が良くて、恥ずかしながら彼女もそうだった。
彼女と同じ大学に、行きたかったけど行けなかった俺は、良弥に嫉妬してた。
「なに、岩屋さんに会いに来たの?」
「あー…、実は、別れたんだ、俺たち。」
「…は?まじで?校内1のカップルだったのに?」
「恥ずいからそれやめてくれ」
良弥は親子丼とサラダが乗った盆を、俺の隣に置いた。
「隣、座るぜ。」
「あ、ああ」
上着を脱ぎ、良弥は腰掛ける。
「んで、なにがあったのお前ら?」
高校からの彼女と別れた僕は、何を思ったのかわからない。
夏休み、3ヶ月のバイト代を全て注ぎ込んで、僕は別の大学に進んだ彼女が住む場所に旅行することにした。
別れたきっかけは、耐えられなかったからだった。
彼女の顔が見たくて、見たくて、毎日電話するくらいに仲は良かった。
でも、彼女は大学の勉強が楽しい、サークルが楽しい、といつのまにか僕の話をしなくなった。
先輩が優しいの、同期と仲良くやれてるの。
数学の授業難しくてよくわからないけど頑張ってるわ。
人付き合いが苦手な彼女が、良い人たちに囲まれて楽しく生活しているのなら、それに越したことはないのに。
僕は彼女が、僕の知らない彼女になっていくのが耐えられなくて、別れた。
彼女がいない夏。
それを確かめるためなのかもしれないが、ともかく僕は彼女に会いに行った。
彼女は大学の寮に住んでいて、僕は彼女の住所を知っているけど、流石に待ち伏せるのはまずいだろう、と思って彼女がバイトしているという大学の食堂に行くことにした。
大学の食堂は、夏休みでも営業しているのがいい。
彼女の大学は郊外で、駅からそこそこ歩くところにあったので、夏場だからか、すごく汗をかいてしまった。
その状態なものだったから、食堂のクーラーはとても気持ちが良かった。
テキトーに食券を買い、列に並ぶ。
僕と同じ年代の人は少なかった。
当たり前だ、今は夏休み、お盆明けだ。
せいぜいサークル活動している学生か、大学職員くらいしかキャンパスには来ないだろう。
冷たいサラダと、ヨーグルトと、冷やしうどんという謎の選択を受け取り、ふらふらと席を探す。
当たり前だが中は見えなくて、彼女がいるかどうかなんて確かめられなかった。
というか、そこまでして、ようやく僕は、普通に彼女を呼び出せばよくて、何もバイトしてるかもしれないなんて儚い望みでここまで来るなんて馬鹿みたいだ、というのとストーキングじゃないか、と少し冷静になった。
窓際のカウンター席に座り、目の前のコンビニに入っていく白い肌の群れを眺めながら、サラダをむしゃる。
汗で濡れた体は食事を受け取る間にクーラーですっかり冷やされてしまい、寒いくらいで、それを避けてカウンター席に座ったのに、まだ寒くて、すぐに冷やしうどんを食べる気にはならなかった。
「あいかわらず、クーラー好きだなお前」
…??
「よっ、久しぶり、真也、あれ、おぼえてない?」
黒髪の、中性的な顔立ち。
誰だろう、と一瞬考え込んで、同級生だったことを思い出した。
「良弥?」
「3ヶ月で忘れられてたらショッキングだよ、まったく。
真也と来たら、やっぱり岩屋さんにしか興味ないんだな。」
良弥は俺よりも成績が良くて、恥ずかしながら彼女もそうだった。
彼女と同じ大学に、行きたかったけど行けなかった俺は、良弥に嫉妬してた。
「なに、岩屋さんに会いに来たの?」
「あー…、実は、別れたんだ、俺たち。」
「…は?まじで?校内1のカップルだったのに?」
「恥ずいからそれやめてくれ」
良弥は親子丼とサラダが乗った盆を、俺の隣に置いた。
「隣、座るぜ。」
「あ、ああ」
上着を脱ぎ、良弥は腰掛ける。
「んで、なにがあったのお前ら?」
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