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冬の日
しおりを挟む「で、結局言えなかったと。」
「ハイ。」
「やっぱあんた嫌いだわ。」
「ハイ。モウシワケアリマセン。」
嵐山で、三十路になったら。とまでは、言えたものの。
言えませんでした。
「あーーーーもう、4年よ!?片想い拗らせてわたしに嫉妬するような大馬鹿者初めてみたわ、しかもその後また8年待つの!?ほんっと一途ね、」
酒をかっくらいながら、俺を罵るのはミサト様。
細身のその体のどこに入っていくんだと思わずにいられないくらい、日本酒がどんどん入っていく。
「あんたそれ、待つの?」
「待つしかない…」
「かっこつけるからそうなるのよ。バーカバーカ」
「ミサトさん酔ってらっしゃる…?」
「そらそうでしょ。水頼みなさい。」
「ハイ。仰せのままに。」
そのままホッケを頼まれてしまい、俺は案の定会計で泣くことになった。
帰り際、
「まーちゃんと三十路まで待ったなら、今度はわたしが奢ってあげるわ。ちゃんとなさいね。」
と言われて、とことん敵わねー、と思い知ったのは、卒業式のその日だった。でも、悪い奴ではなかった。むしろいい奴なのだと、印象がガラリと変わってしまった出来事でもあった。
就職後も、2、3ヶ月に一回は飲みに行き。
三十路まで待つって決めたんでしょ、と釘を刺され続け。
それでも彼氏はいないらしいわよ、とくれる情報に励まされ続けた。
そしてようやく、あの人の誕生日を迎えた。
そわそわと。
予約したホールケーキ。
あの人が好きだったお酒を買い込み。
俺たちは、式子内親王の恋をしようと約束した。
でも無理だ。
だって、俺のこの恋心はミサトにも、部長にも筒抜けだった。
それくらい俺は君に恋焦がれていた。
君も、そうであったらいい。
そうであってくれ。
——————————————
まだ数話ストックはあるのですが、校正が終わっていないことと卒論書き終わるまで一時投稿をお休みします。
すみません。
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