ねぇ、恋、しようか。

弱りもぞする

部長の預言と予言は的確だった。

ミサト(同期女子。イケメンが嫌い。)はとことん俺を嫌った。
本人曰く、イケメンは目の保養になるから嫌いではなく、俺の態度が気に入らないとのことだけど。

そして何故か奈々ちゃんとミサトは仲がよく、奈々ちゃんと仲良くしたくてもなかなか機会は来ず、部長のアドバイス通りとことん本を読んでとことん彼女の興味があるだろう事柄を先んじることに徹した。

あまりにも部長の言う通りなのが腹立たしくて、せめて口説き文句くらいはと抗おうと思い、百人一首やら源氏物語やらを読んでみたが、式子内親王の歌より口説きに書かれそうな歌はなかった。

本当に腹立たしい。

なんでこんな歌を選んだかな藤原定家は、と偉人に八つ当たりしたくなる。


それでも、やっぱり諦めきれなくて、待ちきれなくて。
そうするには、彼女の協力が必要だった。

「で、呼び出しはなんなのよ。大谷雅俊。」

「いきなりフルネーム呼び捨てはヤメテホシイデス、ミサトさん」

「そう。でもあなたのお願いを聞いてあげる義理はないわね。呼び出しに出てきてあげただけでも感謝なさい。」
「地に付して御礼申し上げますミサト様、」

「むかつくからやっぱやめていいわ」

理不尽。
こんな理不尽な性格なのに、描く物語は繊細とかずるい。

「で、本題は？」

「…奈々ちゃんを口説きたいデス。協力オネガイシマス。」

部長を彷彿とさせるバリキャリ。ちなみに部長はその成績優秀さから奨学金の返金免除をもぎ取った上、いわゆるキャリア官僚コースに就職していった。
目の前のミサトさんも外資系企業の総合職に内定を決めているそうだ。

そんな頭のいいこの人を言いくるめるのは、なかなかに骨が折れる。

そう言う奴には案外、ストレートな方が効くものだ。

「やーっと言う気になったか、この万年片想いうじうじ主人公。」
「それはひどくないですか？」

「まぁいいわ、素直でよろしい。計画は？」

「え、協力してくれるのか？」

「あらいらないと言うならもちろんしないわよ。うじうじうじうじ4年も片想い拗らせてる男なんか見てて気持ち悪かったけど、素直になるってんなら見直してもいいわ。」

ということは、つまり。

ミサトには、割と初期にバレていて。

なにもしないから嫌われていた、と…？
なんじゃそりゃ。


「近い機会だったら…そうね、あんたの誕生日でしょうね。」

「え？それはまず、」

「むしろ遅いのよ。
年末はあの子は卒論でそれどころじゃなくなるわ。ほら、ちゃっちゃかあの子に連絡入れなさい。」

「え、」

「あーでもあんたから誘うとあの子気兼ねするわね、いいわ、わたしが恥かいてあげる。代わりにわたしに酒奢りなさい、日本酒飲めるとこよ。」


そのまま、テキパキと。
嵐山でのデートが決まったのだった。


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次回すごく短いです。