妖狐と魅惑の遊戯

夢咲まゆ

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第二十五話

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 九尾は特に自分の要望を口にしてくることはなかったが、あるコーナーを通りかかった途端、急に足を止めて青ざめ始めた。

「おい九尾、どうしたんだ?」
「……いや、だってここ……」

 九尾はチラチラと周囲を見回しながら、晴斗の裾をギュッと掴んできた。その手がわずかに震えていた。

「……今の人間はキツネまで食すのか? 昔は毛皮を利用するくらいだったのに」
「へっ?」

 ハッとして周りを見たら、そこには「キツネ」のイラストが描かれたパッケージが大量に陳列されていた。商品のラベルには堂々と「きつねうどん」と書かれている。

「違う違う! これはキツネが入ってるんじゃなくて、ただの商品名だよ。油揚げが乗ってるうどんを、一般に『きつねうどん』って言うんだ」
「……えっ? そうなのか?」
「ああ。他にも『たぬきそば』とかあるけど、それだってタヌキは入ってないからな」
「……本当に?」
「本当だって。そんなところで嘘なんかつかねぇよ」

 すると九尾は心底ホッとした顔をして、

「そうか……よかった。じゃあ、こっちの『熊かれー』にも熊は入っていないんだな?」
「あ、いや……それにはちょっとだけ入ってるかな……」
「……え? だったら、あそこにある猫の缶は?」
「あれはキャットフードだから人間は食べないよ。猫用の餌だから猫の絵が描いてあるんだ」
「……。……なんか難しい。わからないことばかりだ」
「だんだん慣れていけばいいさ。まあとにかく、『きつねうどん』にキツネは入ってないから安心しな」

 晴斗は「きつねうどん」のパッケージを手に取り、九尾に聞いてみた。

「せっかくだから今日の夕飯はこれにしないか? 初めてのうどん、挑戦してみようぜ?」
「あ、ああ……じゃあ……」

 曖昧な顔をしている九尾。キツネが入っていないことは理解できたみたいだが、未だにそのネーミングが気になっているようだ。
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