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初めてのお稽古編
第27話
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脱いだ着物を持って元の茶室に戻ろうとした時、
「ちょっとあなた」
後ろから女性に声をかけられた。振り向くと、そこには祐介の実母・美和が立っていた。
(うわ……また面倒な人と遭っちゃったなぁ……)
一体何の用なんだろう。夏樹はやや身構えながら尋ねた。
「ええと……なんでしょうか」
「あなた、祐介の弟子になるんじゃないの?」
「え……いや、俺は市川せ……いえ、健介さんの弟子のつもりなんですが……」
「あら、健介より祐介の方がちゃんと教えてくれるわよ。師匠はしっかり選んだ方がいいわ」
「は、はあ……でも」
「本当は家元だって、健介なんかより祐介の方がふさわしいの。稽古もしないであちこちフラフラしてる健介より、毎日真面目に稽古して弟子の面倒もしっかり見ている祐介の方がいいに決まってるでしょ」
「ええ、まあ……。でも俺は……」
「あんなのに弟子入りしても勉強にならないわ。今更弟子をとったところで、ちゃんと教えられるはずがない。祐介にしておいた方がいいわよ」
「…………」
市川をこき下ろす発言に、だんだんイライラしてきた。いくら市川のことが嫌いだからって、言っていいことと悪いことがある。だいたい、人の悪口を平気で吹聴する人にいい人はいない。
腹が立ったので、夏樹は堂々とこう言い返してやった。
「ご心配ありがとうございます。でも大丈夫です、俺は健介さんの弟子になるので。失礼します」
「あっ、ちょっと!」
美和を無視し、スタスタと廊下を歩く。
これ以上話していたら、いずれ怒りが爆発してしまう。暴言を吐く前に退散するのが一番だ。
「ちょっとあなた」
後ろから女性に声をかけられた。振り向くと、そこには祐介の実母・美和が立っていた。
(うわ……また面倒な人と遭っちゃったなぁ……)
一体何の用なんだろう。夏樹はやや身構えながら尋ねた。
「ええと……なんでしょうか」
「あなた、祐介の弟子になるんじゃないの?」
「え……いや、俺は市川せ……いえ、健介さんの弟子のつもりなんですが……」
「あら、健介より祐介の方がちゃんと教えてくれるわよ。師匠はしっかり選んだ方がいいわ」
「は、はあ……でも」
「本当は家元だって、健介なんかより祐介の方がふさわしいの。稽古もしないであちこちフラフラしてる健介より、毎日真面目に稽古して弟子の面倒もしっかり見ている祐介の方がいいに決まってるでしょ」
「ええ、まあ……。でも俺は……」
「あんなのに弟子入りしても勉強にならないわ。今更弟子をとったところで、ちゃんと教えられるはずがない。祐介にしておいた方がいいわよ」
「…………」
市川をこき下ろす発言に、だんだんイライラしてきた。いくら市川のことが嫌いだからって、言っていいことと悪いことがある。だいたい、人の悪口を平気で吹聴する人にいい人はいない。
腹が立ったので、夏樹は堂々とこう言い返してやった。
「ご心配ありがとうございます。でも大丈夫です、俺は健介さんの弟子になるので。失礼します」
「あっ、ちょっと!」
美和を無視し、スタスタと廊下を歩く。
これ以上話していたら、いずれ怒りが爆発してしまう。暴言を吐く前に退散するのが一番だ。
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