45 / 3,048
第1章~あなたを目指して~
第45話
しおりを挟む
「!? フレインか……!」
「おや、まだ正気は保っていたか」
にこりと微笑み、ランゴバルトの武器を打ち上げる。そして彼の鎧を蹴り、強制的に距離をとらせた。
「イノシシ神を誘き出したって聞いたけど、こんな狩りをしていたとは驚きだ。狩りの獲物としては最高の贅沢だけど、これ以上はだめだよ。わかってるね?」
「……ちっ」
大きく舌打ちすると、ランゴバルトは血に濡れた長戟を担ぎ上げた。
「興が削がれた。俺は帰るぞ」
「おや、狩った獲物はどうするんだい?」
「雑魚どもに運ばせろ。俺は知らん」
そう言い捨てると、彼はその場を去ってしまった。こちらを一瞥することもなかった。
兄が腰に手を当てて小首をかしげる。
「ふむ……相変わらずだね、彼は。私以上に自分勝手だ」
「おーい、フレイン。あっちにいっぱい獲物がかかってたぞ」
ランキング五位のジークもやってきた。あともう一人、目元に赤っぽいシャドウを施した人物もいる。見たことがないが、誰だろう。
彼がやや大袈裟な仕草で額に手を当てた。
「一〇〇メートル毎にイノシシの罠が仕掛けられておりました。それにしても、なんと無粋な罠なんでしょう! わたくしユーベル、熱が出て来そうです」
「熱でもなんでもいいけど、あれ全部運ぶの大変だぜ? 応援頼むか?」
「そうだね。私はお手伝いできないけど、みんなで協力して運んでね」
兄はアクセルの側に寄ると、屈んで手を差し伸べてきた。
「ひどい目に遭ったね。大丈夫?」
「あ……あにう……」
兄上、と呼びそうになり、アクセルはきゅっと唇を噛んだ。そして視線を落とし、小さく言い直す。
「……いえ、フレイン様」
「おや、まだ正気は保っていたか」
にこりと微笑み、ランゴバルトの武器を打ち上げる。そして彼の鎧を蹴り、強制的に距離をとらせた。
「イノシシ神を誘き出したって聞いたけど、こんな狩りをしていたとは驚きだ。狩りの獲物としては最高の贅沢だけど、これ以上はだめだよ。わかってるね?」
「……ちっ」
大きく舌打ちすると、ランゴバルトは血に濡れた長戟を担ぎ上げた。
「興が削がれた。俺は帰るぞ」
「おや、狩った獲物はどうするんだい?」
「雑魚どもに運ばせろ。俺は知らん」
そう言い捨てると、彼はその場を去ってしまった。こちらを一瞥することもなかった。
兄が腰に手を当てて小首をかしげる。
「ふむ……相変わらずだね、彼は。私以上に自分勝手だ」
「おーい、フレイン。あっちにいっぱい獲物がかかってたぞ」
ランキング五位のジークもやってきた。あともう一人、目元に赤っぽいシャドウを施した人物もいる。見たことがないが、誰だろう。
彼がやや大袈裟な仕草で額に手を当てた。
「一〇〇メートル毎にイノシシの罠が仕掛けられておりました。それにしても、なんと無粋な罠なんでしょう! わたくしユーベル、熱が出て来そうです」
「熱でもなんでもいいけど、あれ全部運ぶの大変だぜ? 応援頼むか?」
「そうだね。私はお手伝いできないけど、みんなで協力して運んでね」
兄はアクセルの側に寄ると、屈んで手を差し伸べてきた。
「ひどい目に遭ったね。大丈夫?」
「あ……あにう……」
兄上、と呼びそうになり、アクセルはきゅっと唇を噛んだ。そして視線を落とし、小さく言い直す。
「……いえ、フレイン様」
10
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
説明は初めの方に詰め込んでます。
えろは作者の気分…多分おいおい入ってきます。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫だと……思います(?)
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
5/25
お久しぶりです。
書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる