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第1章~あなたを目指して~

第56話

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「というわけで、なるべく早く手伝いに来てくれよー! 宴は夕方から始まるからなー!」

 そう言ってジークは岩場から立ち去ってしまった。

 ……というか、こんな風にイチャついている自分たちを見ながら、それでも平然と事務連絡できる彼も変わっているかもしれない。

「それで……真面目な話、もう怪我は大丈夫?」
「え? ああ……」

 抉れた脇腹や斬られたふくらはぎに意識を戻す。いつの間にか痛みはなくなっており、きちんと両脚が動く感覚があった。

 兄がようやく腕を緩めてくれる。

「どうやら大丈夫そうだね。残念だけど、そろそろ行かないとだめかな」
「ああ、そうだな……」

 二人で一緒に泉から出た。せっかくの二人きりの時間が終わってしまうと思うと、少し名残惜しかった。

「兄上はイノシシを捌く方に行くんだよな?」
「そうだよ。細々こまごまと料理するより、すぱすぱ肉を捌く方が性に合ってるからね」
「確かに、兄上が料理したら全部大味になりそうだ」
「やろうと思えばできるんだよ。性に合わないだけで」
「へえ、そうか」
「おや、その顔は信じてないね? 一緒に暮らせるようになったら料理してあげるから、楽しみにしてて」

 その台詞に、不覚にもキュンとしてしまった。大好きな兄とひとつ屋根の下で暮らせる上、手料理まで振る舞ってもらえるとは。考えただけで甘酸っぱい気持ちが溢れてきた。

「じゃあアクセル、またランク上げ頑張って。お兄ちゃん応援してるからね」
「ああ、もちろんだ」

 軽く手を振って、兄と別れた。初めての狩りで大変な目に遭ったけれど、結果的には幸せな時間を過ごせた。早く一緒に暮らせるよう、また鍛錬に励まなくては。

 アクセルは足取りも軽く、宴の厨房に向かった。
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