転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています～ヴァルハラで死合いましょう～

第２章～溢れる想い～

第３１話※

　――嘘だろ……！？

　こいつら、俺を犯すつもりか？　最初からそれが目的だったのか？　恨みや腹いせとかではなく、単に欲情しているだけ？　ただ俺で欲望を処理したいだけ？　そのためだけに俺をここまで連れてきたのか……？

　そう言えば兄が、「綺麗な男は狙われる」と言っていた。その時は気にも止めなかったが、本当にこんなことが起こるなんて思ってもみなかった。「変な人にはついていくな」と忠告されていたのに、完全に油断していた。

　――兄上……。

　固く目を閉じて顔を背ける。閉じたまぶたの隙間から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。

　犯されるのは嫌だ。でもこうなったのは自分の油断が原因である。兄の言いつけを守らず、武器を携帯することも忘れて、のこのこやってきてしまった自分が悪いのだ。

　それに、俺は兄上を……。

「……ぅぎゃあ！」

　その時、蛙が潰れたような声が聞こえた。次いで肉が切断される音がした。

　何かと思って目を開けたら、自分を組み敷いている男の背後で、鮮血が噴き上がっているのが見えた。まるで噴水のようだった。

「ギェアアアアア！」

　獣のような咆哮が室内に響く。男たちの悲鳴ですら掻き消すほどの迫力があった。

　――兄上……！？

　見慣れた金髪が逆立っている。怒気と殺気を滾らせ、血のついた太刀を振るっていた。心臓を一突きされた者もいれば、スパッと首を刎ね飛ばされた者もいた。