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第7章~ラグナロクの最中に~

第20話

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 アクセルは母親のことをほとんど知らない。物心がついた時には、既に母親は家にいなかった。父親も当時は勇敢な戦士だったらしく、しょっちゅう戦場に立っていたのであまりいた記憶がない(しかもいつの間にか戦死してしまった)。

 代わりに面倒を見てくれたのは、いつも兄・フレインだった。幼い頃からずっと、兄だけが自分のことを見てくれた。アクセルにとってフレインは兄であり、父であり、母だった。兄こそが自分の全てを作り上げたと言っても過言ではない。

 だから生前、兄が戦死した時、アクセルの世界は崩壊したのだ。生きているのに死んでいるような感覚とは、ああいうことを言うのだと、今になって思う。

 ――もう、あんな思いはしたくない……。

「……兄上」

 アクセルも優しく兄に抱擁を返した。

 そして少し身体を離し、こちらも真っ直ぐ兄を見返した。

「兄上はごく普通の親心って言うけど、それなら俺だって同じだよ。俺も、兄上に危ないことをして欲しくない。それがごく普通の子供心だ」
「子供心ね……」
「今はこんな状況だから、別行動をとるのもやむを得ないかもしれない。それならせめて、無茶だけはしないで欲しい。絶対に一人で死なないって約束して欲しい。出陣したら、必ず俺のところに帰ってきてくれ」
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