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暗黒の世界へ
しおりを挟む目を覚ませば……誰かの顔?みたいなのが見えてきて何やら話し声が聞こえる。
私の周りにいるのは一人じゃなく2~3人ほど。
「何だこの玉は…」
「とりあえず割ってみるか。」
「ちょっと、お止しよ。何かの危険物だったらどうすんだい」
声からすると男の人が2人でもう一人は女の人。この人達…人間の顔じゃない。まるでお化けみたいだ。
あれ?でも私は目を開いているはずなのに、どうして気づかないんだろう?
…んな事を考えると。
「よし、割るぞ」
パキィィン!と何かが割れた音がした。
それは私の方から聞こえたのだ。
……んん。さっきまで身動きが取れなかったのが今になって動かせるようになったような。
「こ、これは」
「なんて事だい…!人間じゃないか!」
「うおっ。へへ、美味そう…」
なんだか今まで何か器みたいな物に入ってたような、やっと地に足をつける事が出来たよ。あれあれ?やっぱりお化け達がいる。私を見て驚いてるけど、一人だけ美味そうだなぁ…と言ってる。
え?食べられちゃうのかな?
私は恐れながらもお化け達に聞く。
「あ、あの…」
「しゃ、喋った!」
「当たり前でしょ。どう見たって人間なんだから…というより、アンタはどうして卵から出てきたのさ。」
このお化け達…二足歩行してる。それぞれ違った姿だ。魔人か何かかな?
とにかく最初に、喋った…!と言った狼の姿をしてる男の人に続き花の形をしたスレンダーな女の人が、どうして卵から出てきたのかを私に聞いた。
「わ、私…えっと…」
あれ、何も思い出せない。基本的な事は覚えてるはずなのに。歩くとか、話をするとか。
「ん~?どうした?早く答えねぇと食っちまうぞ?」
「えぇ!?ちょっと待って下さい!な、何も思い出せなくて…気づいたら卵?から出てきて…」
もう一人の男の人、食っちまうぞって言ったドラゴンみたいな姿で今にも食べてしまいたそうな勢いで迫って来る。そこへお花さんが止めに入る。
「お止しと言ってるだろう。全くアンタは目の前に獲物がいるとすぐ襲いかかろうとする」
「んじゃあ、おめぇは食いたがらねぇのか?こんなに美味そうな肉があんのによぉ。」
「だーかーら!お止し!」
再度、私に襲いかかろうとするドラゴンさんをまた止めに来てくれたお花さん。
嬉しいんだかなんだか……。
「アンタも人間なんかが、あたし達の居場所にいられちゃあ困るよ」
「えっ」
「あたし達は見ての通り、人間の姿をしてないだろう?そしてあたしやこの2人が身に纏っているマントはね、この世界に相応しい証なんだ。」
そう説明してくれた、お花さんの言う通り3人共マントを身に纏っている。
「分かるかい?」
「は、はい…」
「けど可笑しいねぇ。この世界には人間なんて生まれてこれないはず…」
「あ、あの…お花さん?」
「はぁ?アンタ今、あたしをお花さんって呼んだかい?」
「えっとダメ、ですか…」
「まあ仕方ないか。この世界の者だと認められていない魂にはねあたし達、名前すら教えちゃいけない決まりなんだよ。しばらくは好きに呼びな」
うわぁ…厳しい世界に来ちゃったな。
しかも私は人間かそれ以外のものかも分からないし、どうしたらいいんだろう。何にも覚えていないし…とりあえず自分の姿を見たい。
「お、お花さん!」
「なんだい…」
「突然で申し訳ないのですが」
私はもじもじしながら今どんな姿をしているか聞いてみた。
「私は、やっぱり人間の姿…ですか?魔物とかになったりしてませんか?」
「だから人間の姿だよ。しかもアンタは女だね?男ならまだしも女ときた…こんな魔物だらけの世界で。」
思った通りだ。私は人間だった。
しかもかなり落胆してる、お花さん。
あー…どうして私だけ魔物じゃないんだろうか。それよりもさっきから気になってるこのお化け達が大きく見えるのは何故?私が小さいのかな?
ますます自分の姿が見たくなった。
「おい、そいつ食えねぇんなら俺はいつもの場所戻って寝てんぞ。」
「俺はもう少しその娘について知りてぇ。なあ、なんならついてくればいい」
ドラゴンさんは大あくびをして、いつもの場所とやらに帰ろうとするみたいで狼さんの方は私という存在が珍しいのか興味を示してくれいつもの場所に案内してくれるらしい。
けど……。
「馬鹿!そんなのダメに決まってるだろう!」
お花さんは猛反対みたいです。
「バレなきゃいいだろ?」
「アンタねぇ…もしも、あたし達の居場所に人間なんかが同居してるなんてあのお方に知れたりでもしたら全員抹殺されるだけよ。」
恐ろしく反対するお花さんの顔はとても怖い。それに比べて胸倉を掴まれた狼さんは平気な顔をして、お花さんの手を振り払う。
「そん時はそん時だ。俺はいつだって狙った獲物は逃がさねぇ。連れてくぞ、ベラ」
「たくっ…面倒な事になればアンタが責任を負うのよ。」
お花さんの名前、ベラって言うんだ。
ひとまずベラさんは呆れたようにスタスタ…歩く狼さんの後ろについて行く。
私が立ち止まってるとベラさんは振り向き言う。
「ほら、アンタも来るのよ」
「いいんですか?」
「こんなケースは滅多にないがあたし達に感謝するのね。もし、あの馬鹿な男があんたを卵を見つられず…あのお方が見つけていたら」
「見つけていたら…?」
「すぐに処分されてたわ」
処分という言葉にドキッとした私は改めて私を見つけてくれた狼さん達に感謝をした。なんだろう…記憶が一つも無いのに死んじゃいけないって強く何処かに刻まれている気がする。
前の2人について行く事…大体1時間だろうか。さすがに歩くのが疲れてきた。ヘトヘトになりながらも歩いて行くと見えてきたのは木で出来た家。見れば森の奥みたいだけど当然、木々が多い。それ以外は沢山の花々や見た事もない虫とかがいる。ちょっと怖い。
「ここがいつもの場所、ですか?」
色々ビビりながらもベラさんにさっき言ってた、いつもの場所かどうか聞くと、やっぱりそうらしい。にしても薄暗い所…空を見上げれば……ん?ま、真っ赤!?
普通、空は青いかその他なんだけど何故かこの世界の空はさっきまで晴れて青く澄み切っていたのに今見上げるとマグマの色みたいに真っ赤であった。
「おや?やばいね…アンタ、早く来な!」
「うぇ…!?」
ベラさんは私の手を引っ張り木の家の中へ連れ込む。な、何かの異常気象のせいかな。すごく焦っていたけど。
そんな中、部屋の中に連れ込まれた私は辺りを見渡し思う。
(テーブルや椅子は木で出来てるみたい。あとはソファなどが置いてあるし…なんかさっきのドラゴンさんが寝てるけど)
見る限りは何の変哲も無い家みたい。
「ぐがあぁぁぁ…!」
うわっ、何!?といびきがする方を見ると、ドラゴンさんがお腹を掻きながら大口を開けて寝ている。
「うるさいわ。いつもいつも…」
「ベラの寝言も人のこと言えないだろう?」
「アンタ、聞いたわね…」
「おー怖い怖い。鬼婆が怒ってらぁ~」
「ウルージャ!」
うるー…じゃ…?狼さんの名前だろうか?
それぞれ皆には名前がちゃんとついてるんだ。
いいな…私にもそんな名前が欲しいけどやっぱり思い出せないや。あるっていうのは分かっているのに肝心な本当の名前を忘れてる、気がするよ。
「おい」
「あ、はい!」
狼さん…じゃなくて、ウルージャさんは椅子に座りながらも私を呼ぶ。
「まず聞きたい。お前は何故あの変な玉から出てきたんだ?あー思い出せねーんだったっけか。」
「はい…何も。」
「じゃあ質問を変えよう。お前の名前は?」
名前は?と聞かれた瞬間、耳がピクッと反応した。それが思い出せないから困っているのに、なんて言えない。
そこで、ベラさんが口を開く。
「何にも覚えてないんだ。要はあの卵から生まれた瞬間からの記憶しかない。そういう事だろう」
「確かに…卵とベラさん達に見つけられた記憶しかないのかもしれない…」
「あ、ちょいと。」
「え?」
「あたしの名前、ウルージャ~!!知られちまったじゃないか!」
話の途中に私がベラさんの名前を言ってしまったからかベラさんは敏感に反応しウルージャさんを睨む。
「我が暗黒世界の掟を破ってもいいつもりでいるのかい!?」
「悪りぃ、悪りぃ。だがよ…この娘もいずれは俺達の仲間になって魔物化すりゃあ掟だかなんだか破らずに済むだろ」
「魔物化だと?こんな小娘が魔物になる訳がないよ!最初から人間として生まれた者なんかいやしない。」
段々と複雑な話になってくし、ベラさんは苛々してるし…私やっぱりここから離れた方が…。
不安でいっぱいになっていると。
そんな時に後ろから私の肩に手が。
「心配する事ねぇぜ。あいつら~、ちっと複雑に捉え過ぎてるだけだ」
ド、ドラゴンさん…起きたんだね。
肩に手を置いたのは後ろにあるソファで、いびきをかいてたドラゴンさんだ。私は彼の言葉で少し安心した。
はぁ…これからどうなるんでしょうか。
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