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生き残り
しおりを挟む暗黒世界には時間という概念がない。朝に日が昇る事も夜に星が瞬く事も存在しないと言われる。元々、暗黒世界は幾つもの世界の中で最も危険なとされている。それでもここに極僅かな魂達が生まれるのは何故だろう。
それは私にも分からない。
《レイ……》
私の名前を呼ぶ声がする。
誰かは分かる気がするようで分からない。
《君は…我が暗黒の世界へと何故……生まれてきた?》
そう問いかける謎の声。
真っ暗な空間にいる私は辺りを見渡しても誰もいない。
「あなたは、誰…?」
質問を返す。けれど。
《我の問いに答えられなければ……》
その瞬間、眩しい眩しい光が差し込む。
「うっ…!」
また、何処かで体験したような光。
この感覚は。
「あ…ああああああああっ……!!」
誰かの悲鳴…!?
私は目を開き目撃したのは。
「ベラさん…!」
いつのまにか広いダンスホールに場所が変わっていた。そしてダンスホールの真ん中に黒いマントを着た、パフティールさんがベラさんの首を絞め片手で持ち上げている。
「え……パフティール、さん?」
なんで?なんでパフティールさんが?
は…助けないと!!
私はベラさんを助けにいく。
「ベラさん!!!」
『レイ…!待ちなさい!』
またあの優しい声が聞こえた。
でも今はそれどころじゃない。
私はベラさんを助ける!!
「ベラさん!!」
「レイ…危ないよ?」
「パフティールさん、やめて!どうしてあなたが…」
「まだ気づかないのかい。僕は暗黒世界の頂に立つ者…話しただろう?この世界に時間というのが存在せず、だが君の命には時間があるが…制限がかけられているって」
パフティールさんが…暗黒世界の頂?
「因みに向こうの存在の事も、この魔物の魂を滅ぼした後…ゆっくり説明するさ」
「やめてっ!離して!!」
私は、ベラさんの首を絞めてるパフティールさんの手をどうにかして離させる。
だけどパフティールさんの手はとても力が強くビクともしない。
「はは…無駄だよ。君は人間、僕は暗黒世界での頂。他の者には無い力を持つからね」
「それでもっ…私はベラさんを助ける!!」
「…ぐぐっ……レ…イ…!」
ベラさんは苦しみながらも私の名前を呼ぶ。
くっ…ダメだ…力が強過ぎる。
これじゃあベラさんが!!
《レイ!そこを退け!!》
「えっ…!?」
私は何処からか聞こえる声に従い咄嗟に手を離した。
バァァァン…!
銃の音が響き同時にパフティールさんが床に倒れ込む。手も離された。
「ぐっ…ははは…何のつもりかな…?」
パフティールさんが向ける視線の先には。
「はっ!あなたは、ウルージャさんとヒュータさんが死んでしまった事を伝えに来た人…」
「パフティール、いや…暗黒世界の頂。あんたこそ何のつもりでこんな世界を創り上げた…」
あの時の豹の顔した人がパフティールさんに問う。その隙に私はベラさんの方へ駆け寄る。
「ベラさん!ベラさん…!」
「…ケホッ……レイっ…あたしは…大丈夫よ…」
そう言っても、ベラさんの首には、とてつもなく強い力でパフティールさんが手で絞めた跡がくっきりと残る。特有の再生能力が効かなくなるほどのダメージみたいだ。
私ならすぐに死んでいただろう。
「…レイ…」
「ベラさんっ!!」
ベラさんの身体から舞い上がる透明な光の欠片たち。呼吸が浅くなっていってるようで私は、ベラさんを抱きしめる。
「私っ…最後まで……ベラさんの事…」
涙がポロポロ流れベラさんの頬に零れ落ちる。
「…泣くんじゃ…ないよ……どうせ、あたし達は…」
「どうせなんて、言わないで…こんなのって……」
「…あたしにも…時間…が来たようだね」
徐々にベラさんが消えかかっていく。
それでもベラさんは微笑み言う。
「…ありがとうね…大切なもの……あたしは…」
「大切なもの?」
「…ああ。今、側に…いるじゃないか………」
「ベラ、さん…?」
ベラさんは最後まで私の手を握りしめていた。
そして離さず消えてしまった。
その様子を豹さんと笑顔のパフティールさんが見ていた。
「はははっ…!さあ、レイ話の続きをしてあげよう。」
パフティールさんは胸を銃で撃たれた跡がありながらも立ち上がり私に近づいて来る。
「チッ…!!」
「……!!」
豹さんはパフティールさんの背後から腰につけた長い剣を引き抜きザバッと背中を切り裂く。その衝撃で、パフティールさんは膝をついた。
「…ぐっ…!?き、貴様……」
「もう終わりだ。レイが暗黒世界の最後の生き残りとして生きろ」
「豹さん!?」
パフティールさんは豹さんを睨みながら手を伸ばそうとするけど。
「答えてもらおうか。パフティール。貴様がこの残酷な世界を作り上げた理由を。」
「意味なんて…無いさ…。暗黒世界は………」
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