【18禁】てとくち

クナリ

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第三章 砕け散らずにいられたありふれた幸福の形

青四季海と、想い人の鮎草亜由歌1

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「亜由歌……いいんだ、そんなことしなくても……」

 しかし覚悟を決めているらしい亜由歌は、パンツの中心にある布の合わせ目を、指でつまんで左右に割り広げていく。

 もうすぐ見えてしまう。
 一度は見られているとはいえ、今度は、明確に亜由歌に向けて興奮してしまっているペニスを、じかに見られてしまう。

「やっぱり、……やっぱり、だめ……」

 つッ。
 パンツはそんな音がしそうな小気味よさを最後に見せて、ついに前が開いてしまった。

「ああっ……」
「あ……!」

 海と亜由歌の口から、同時に声が漏れる。
 一度先端が窓を出てしまうと、ペニスは、たやすくその全貌を現した。
 さんざん前方に引っ張られていた布が、反動で下へ引き寄せられた。幹の根元を黒い円形が縁取り、大きさをことさらに強調する。
 また、パンツの色が黒かったせいで分からなかったのだが、すでに海のペニスは欲望の印を溢れさせていた。

「あ、海くん……凄い、濡れてる……」

 海は亜由歌から顔をそむけた。
 直接的な刺激を受けたわけでもないのに、もう決壊間近な状態にまで出来上がってしまっているところを見られると、自分がひどくいやらしい人間に思えた。
 こんなところを亜由歌に見られたくない。もっと落ち着いて、分別のついた、聡明な人間に見られたい。
 なのに、それとは真逆の姿を、あますところなくさらしてしまっている。
 自分の体の一番いやらしい部分が、一番いやらしい形になってしまっている。

 亜由歌がパンツの端を持ち、海が腰を浮かせた。
 パンツが脱がされる。
シャツは、海が自分で脱ぎ捨てた。
 すべての衣服を失って、海が完全に裸になった。

 海は、全裸の自分のペニスが、服を着たままの亜由歌の目の前でひくつくところを正視できなかった。 
 だから気づくのが遅れた。
 海は、今から、亜由歌に指でされるのだと思っていた。
 もう、制止できる余裕もつもりもなかった。だから心のどこかで、その刺激を待ちわびながらも、快感に対する心構えもできていた。
 しかし、海の最も敏感な部分に与えられた刺激は、思っていたものとは違った。

ぬるっ……

「う……」

 想定していたよりも、だいぶ力が弱い。
 そして、とても柔らかい。

 え? と、海が正面を見下ろした。
 亜由歌は、その唇の間に、海の先端を迎え入れていた。

 弱弱しかった刺激の意味が分かると、亜由歌が力を強めたわけではないのに、海の受ける快感が倍加された。

「あっ!? あ、亜由歌っ!?」

 思わず大声が出た。
 亜由歌が驚いて、びくりと動きを止める。
 隣の陽菜が、大丈夫、というようにうなずいた。
 それに励まされたように、亜由歌が唇を進める。

 ずぐ……

 かすかに歯の感触があった。
 亜由歌の口には、海のそれは大き過ぎる。
 亜由歌は顎を限界まで下げていたが、それでぎりぎりだった。

 亜由歌の……
亜由歌の、……口、……本物の……

 事態が言語化され、海の頭の中が亜由歌でいっぱいになった。
 ただでさえ思いがけないことをされた上、海は、もうとっくに濡れ過ぎるくらい濡れていて、その液体も目の前の少女の口の中に飲み込まれていることになる。
 興奮する、などという言葉では表現できなかった。

「先、生……」
「ん、どしたの?青四季くん?」

「すみません、……亜由歌と……二人にして、もらえませんか……おれ……」

陽菜が、そっと立ち上がり、寝室から出て行った。
そこからはもう、海は我慢できなかった。
すがるように亜由歌の肩に両手を置く。頭をつかんでしまわないよう、そして腰を突き込んでしまわないよう、自制するのが精一杯だった。

「あ、亜由歌……ああッ、亜由歌……! うああ……!」

 名前を呼ぶ合間に、あえぎ声が挟まる。
この声を、亜由歌以外には聞かれたくなかった。もだえ苦しむさまを、亜由歌にだけ見て欲しかった。

 亜由歌の動きは、ただ口を進めていくだけのものだったが、海はかつてないほどの甘美な感触に溺れそうだった。
 やがて、亜由歌の動きが止まった。まだ、海の幹は半分以上残されている。経験のない身では、ここまで飲み込むのが限界なのだろう。
 
 ずるずると唇が引いていく。それを追いかけて、無意識に海の腰が動いた。
 自分の浅ましさにはっとなった海だったが、再び亜由歌の唇が侵攻してくると、その羞恥心すら弾け飛んでしまう。
 唇はまた引いて、さらに押し寄せてくる。そのたびに、海の胸の中でガラスのようななにかが砕け散るように思えた。

「亜由歌、凄い……! 凄く気持ちいい……! 亜由歌ッ……!」

 万感の思いを込めて、海は何度も名前を呼んだ。
 一往復ごとに、ほんの少しずつ、飲み込まれる深さが増していくことに、海は気づいた。
 無理しなくていい。本当にそう思うのに、海の口からは、お願いだ、もっと、と懇願の言葉ばかりが溢れてくる。
 やがて、その言葉も出なくなった。

 亜由歌の、色も厚みも薄い、性のために使われるなんて思いもよらない唇が、時に嗚咽のような声をあげながら、懸命に自分に尽くしてくれている。
 この世で最も美して可憐なものに、男の凶暴さを詰め込んだような固い熱の柱が何度も打ち込まれていく光景が、海の胸の中で巨大な感情を生んでいく。

鳴き声のような己のあえぎの中で、海は、耐えようのない精液の殺到を感じた。
 ひとたまりもなかった。こらえようなどとは、及びもつかなかった。

 最後の力を振り絞って、海は、亜由歌の頬を両手で挟んだ。
 とても生地の薄い菓子か何かを包むように。余計な力なんて込められるはずがない。
 そしてほんの少しだけ、亜由歌を後ろに押しやった。

「亜由歌……いきそうだ、おれ……。気持ちよすぎて、絶対、たくさん出るから……だから、離れて……」

 呂律を確かめながら、ゆっくりと、確かにそう伝えた。
 亜由歌は、静かに顔を引くと、その口から、ずる……と長大なペニスがまろび出た。

「……いいよ」

 亜由歌がそう言ったが、すでに愛おしさと快感で頭の回転が止められている海は、意味が理解できない。

「いいって、なにが……?」
「……このまま出しても」

 このまま。
 ようやく、思考が追いついた。

「だ、だめだ。本当に、たくさん出るから……! おれ、亜由歌にそんなこと、できな」
「私、海くんのなら飲んであげる」

 陽菜だ。絶対に陽菜に仕込まれたセリフだ。海のなけなしの思考がそう察する。
亜由歌の口を、これ以上汚すわけにはいかない。断らなくては。ただ離れるだけでい。それで済む。
 しかし、亜由歌が再び先端を口に含むと、今度こそ海のすべてが快楽の海に沈んだ。
 海の絶頂を意識したのか、亜由歌の口の絞めつけは、先ほどまでよりも強かった。

 ぎゅちッ、ぎゅちッ、ぎゅちッ……

 亜由歌、ともう一度名前を呼ぼうとした。
 しかしのけぞってベッドに倒れ込んだ海の唇からは、甘くとろけた叫び声だけが漏れた。

「ああッ……ッ!」

 そして、射精した。
 信じられないくらいの量の精液が、ペニスの中を走り抜ける感覚を残して、ひとたまりもなく放たれた。
 ばしッ、と熱い塊が亜由歌の舌の奥を叩く。

「ん、ぐぶっ!? あ、は、かはッ!」

 亜由歌は、自分が海に与えた快感と、それに比例して打ち出されてくる精液の量と質を見誤っていた。
 精液というくらいだから、牛乳のような液体が出てくるのだろうが、いくら勢いよく出たとしても――一応、勢いよく飛び出してくるものらしいという程度の知識はあった――、ストローで熱い紅茶を吸うのに比べれば大したことはないだろう。それくらいに考えていた。
 海がいつも穏やかそうなので、射精もきっと大人しいだろうというイメージもあった。

 しかしさんざん快楽に翻弄された少年の絶頂の高さをそのまま表したかのように、口の中で受け止めた精液の粘度は、飲み物などとは比べ物にならなかった。
 ほとんど個体のような触感と重さを持った白い液体は、瞬く間に亜由歌の口の中の間隙を埋め、収まりきらなかった分がぼとぼとと唇からこぼれてしまう。
 いつの間にか、射精に押されたのか、亜由歌はペニスも吐き出してしまっていた。

 いけない、飲まないと。
 亜由歌は慌てて口中のものを飲み下そうとした。しかし何度も嚥下しようとするものの、そのかつて味わったことのない異物感に、全然喉が受け入れてくれない。

 早く、早く飲まないと。私が、飲んであげるって言ったんだから。
 しかし亜由歌が飲もうとすればするほど、逆に体は吐き出そうとしてえづいてしまう。
 泣きそうになった亜由歌の頬に、手のひらが当てられた。
 海は、まだ体は起こせそうになかったが、それでも精一杯に亜由歌に手を伸ばしていた。

「海くん……?」
「いいんだ、亜由歌。口から出して」

「で、でも、私、私から海くんに、飲むって」
「いいんだよ。先生に言われたんだろう? そう言えば、おれが喜ぶって」

 亜由歌がうなずいた。
 海は、まったく、と胸中で嘆息する。

「その時、無理するなって言われなかったか?」
「……言われた」

「なら、無理しないでくれ。おれも、そのほうが嬉しい。……亜由歌の気持ちが、凄く嬉しいよ」
「海くん……」

 海としては、陽菜には感謝もしているが、一言言ってやらなくてはならないとも思っている。
 重い体をなんとか起こそうとした時、亜由歌が、なにやら決意を込めた声で言ってきた。

「分かった、じゃあ、飲むのはやめておくね……それなら、最後のをしないと」
「最後の?」

 最後のなんだ? と海が訊こうとした瞬間に、再び亜由歌がペニスを握ってきた。

「あっ?」

 すでに精液を出し切ったペニスだったが、快感の余韻に浸るように、まだ多少の硬度は保たれている。ただし、自らが吹いた精液でどろどろだった。

「あ、いいよ亜由歌。拭いてくれようとしてるんなら、それくらい自分で」

 しかし亜由歌は、すっと顔をペニスに寄せると、再び、少し柔らかくなった先端を唇の間に押し込んだ。

「ああッ!? 亜由歌!?」
「最後、こうすると、……いいんでしょう?」

 これも陽菜だ。間違いない。どう吹き込まれたのか知らないが、こういう後戯をすると海が喜ぶと思わされたのだろう。
 海はとにかく亜由歌を離そうとしたが、その前に、射精直後で過敏になっている粘膜が、亜由歌の舌のざらつきに襲われた。

「ああ……!」

 気持ちいいというよりは、むき出しになった弱点にじかに触れられているような感覚に、海は再びのけぞり、身をよじる。
 それを、亜由歌は、単純に感じていると受け取ったらしい。
 刺激を受けて、すぐに再び限界まで怒張したペニスも、(まだ、もっと気持ちいいんだ、海くん……)と亜由歌のの勘違いを助長した。

 海は逃げようとしたが、射精の直前と同じくらいに、体に力が入らない。
 亜由歌の舌で、敏感過ぎる先端の丸みを一撫でされるごとに、海の口からは甲高い悲鳴が漏れた。

 その声を聴いて、亜由歌は止まらなくなった。
 凄い。やっぱり、先生の言った通りなんだ。あの海くんが、こんなになっちゃうなんて。
 私の口で、あんなにおかしくなっちゃうなんて……

 亜由歌の胸に充実感と喜び、そしてほんの少しのいたずら心が膨らんで、度を越えた後戯は終わるどころか、どんどん熱を帯びていった。
 海は汗が止まらなくなり、足は突っ張りっぱなし、腰は筋を浮かせながら宙に浮きっぱなしだった。
ペニスからは精液よりも薄い、海が濡れる時と同じ液体が断続的にぴしゅぴしゅと溢れ出している。それを舌で感じる亜由歌は、勇気づけられたように、唇と舌になおも力を込めた。

 一度絶頂に至らされ、すべての防御をはぎ取られた急所。
 そこに加えられる、悪意なくも容赦もまったくない追い打ち。

 最後は、どんな声を出していたのか、海は覚えていない。
 だが、射精という終わりのないいたぶりに、自分の口から出ているとは思えない、絶叫に近い吠え方をしていたような気がする。
 無限の上昇を描く快感曲線の極致で、海はとうとう気死した。
 短い夢の中で、時折気弱そうな、でも大切な瞬間にはとても気高い、今までに見てきた亜由歌の顔が、海の脳裏で明滅していた。

 自分がその後、半泣きの亜由歌と、なにがつぼに入ったのか笑いっぱなしの陽菜にどう手当てをされたのかを、後で陽菜から聞かされたが。

「ご、ごめんね、海くん。私、てっきりこれが気持ちいいんだと思って……! 海くん、ずっと凄く固かったし、いいのかと思って……ごめんなさい!」

「あははは、あんなの初めて見た! ちょっと焦ったけど、ただ寝てるだけみたいだったしすぐ起きたから、男の子ってこんなことあるんだって、あははは! それにしても気絶してやっと小さくなったよねー! お、お腹痛い……!」

「ず、ずっと海くんが体をがちがちにしてびくんびくんてしてるから、途中で、あれ? って思ったの。でも痛いとかならそう言ってくれると思って、私、それまでは力いっぱいやってみようって……」

「鮎草さんが、先生来てー来てーって泣いてるから何事かと思ったら、気絶! 力いっぱいされちゃったんだから仕方ないかー! こんな男子はなかなかいないよ、貴重な経験できてよかったね、あはははは!」

気持ちはありがたいが(亜由歌のほうだけは)、できれば早く忘れたかった。
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