4 / 22
裏界線と裏世界と切風4
しおりを挟む「わっ!?」
そこにいたのは、柴犬ほどの大きさはあろうかという、巨大なカラスだった。
民家の木の枝にとまっているのだが、その重さに、枝がだいぶたわんでいる。
「あ!? あのカラスって、昨日も!?」
「そ。大鴉っていう妖怪。名前は雷蘭。裏世界から抜けた君を、見ててもらったんだ」
「えっ。……心配してくれてたんですか? それとも、監視のような?」
「両方っ」
そう言って、切風が足を止めた。
その前にあったのは。
「ここは……和菓子屋さん? ですか?」
「この時間はほんとは閉まってんだけどね。主人とおれがダチでさ。ほら、人と話す時って、お茶とお菓子が必要じゃん。昨日は、どっちもなかったから、もとから話なんてできるわけもなかったんだよ」
そういうものか? とは疑問に思った茉莉だったが、切風はそうなのだろう、と納得した。
切風は引き戸を開けると、中の喫茶室に進み、勝手知ったる様子で明かりのスイッチを入れ、茉莉に座るよう促した。
喫茶室はテーブルが二つだけの小さなもので、ついたての向こうが販売所になっているらしい。あちらが主で、店内での飲食スペースはついでのような扱いなのだろう。
「あんまり時間ないでしょ? お茶とお菓子はこっちで選んじゃった。天竜村の赤石銘茶と、この店のくず桜」
そう言いながら、手慣れた様子で切風が三人分の湯呑みと菓子皿、菓子切り用の黒文字を並べて茶を入れていく。ポットから出したお湯は、少量の水と合わせて空の急須に入れ、それから茶葉の入った別の急須に注いだ。
茶を入れる手順として正しいのかどうかは茉莉には分からなかったが、やたら手馴れている。
茉莉が手伝いましょうかと言うのもはばかられるような、巧みな所作だった。動きは速いが丁寧で、ほとんどよどみがない。
すると、引き戸ががらがらと開いた。
入ってきたのは、黒髪に濃い藍色の和服を着た、目つきの鋭い少女だった。ボブカットにした髪はつややかで、前髪が眉の高さに切りそろえられており、そのせいでなおさら視線が鋭利に見える。
知らない子だ。しかし、あ、もしかして、とすぐに茉莉は思い至った。
「あー、雷蘭。こっち座んなよ。茉莉の隣ね」
「隣……?」と、雷蘭と呼ばれた少女が不満そうに眉根を寄せる。
果たして、彼女は先ほどの大鴉のようだ。
じろ、と雷蘭は茉莉を一瞥して、テーブルを挟んで茉莉の斜め前に座る。
どうやらあまり歓迎されていないらしい、と茉莉が察するには充分だった。
「あ、あの、初めまして、雷蘭さん。私、湖ノ音……」
「マツリでしょ。知ってる。あんたが昨夜さっさと帰ってからなにがあったか、あんたは知らないだろうけど」
「雷蘭~」と切風が半眼になってとがめたが。
「なによ。ほんとのことでしょ。この女が裏世界から出ていったら、すぐに、切風様の牙が消えたんだもの。どういうつもり、あれ?」
「えっ!?」
と茉莉が切風を見る。
ちょうど湯呑みに茶を注ぎ切った切風は、それを盆に乗せて運び、茉莉、雷蘭、そして自分の前に菓子と共に並べた。
「自分で言うのもなんだけどさ、完璧だぜ……温度と言い、抽出時間と言い……完璧としか言えねー……」
切風の切れ長の目が、恍惚を讃えている。
口元は、喜びのあまり波打つようにして笑っていた。
たまりかねたように、雷蘭が肩を怒らせて言う。
「じゃなくてっ! 切風様だって、いきなり牙の剣が消えて仰天してたでしょ! 戻ったら有象無象と素手で取っ組み合いしてるからびっくりしたのなんの! 結局、四半刻近くひたすら猿どもをぶん投げ続けてたんじゃない!」
「そっ……そうなんですか!? どうして!? 私が裏世界から逃げてしまったことと、なにか関係が――」
切風が、茉莉の目を見つめた。
「あるね。あの牙は多分、今、完全に茉莉が持ち主になってるよ。だから、離れすぎると牙のほうが茉莉のところに戻っちゃうんでしょ」
「持ち主……?」
「茉莉、いくつか質問していい?」
「ど、どうぞ!」
「あ、その前に食べて食べて。今お茶は飲みごろだし、お菓子の食べごろは出した瞬間だから」
「あ、はいっ。いただきます」
茉莉はまず茶を口に含んだ――含もうとした。
しかし、真っ先に鼻腔に飛び込んできた香りに、思わず手が止まる。
「わあ、なんだか、すっごくいい匂いです……」
「ふっふっふ。だよねだよね」
そろそろと湯呑に口をつけると、穏やかな温度のとろりとした液体が唇の間に滑り込んできた。
「わあ、味もおいしい……なんていうか、味わいは濃いんですけど、しつこくないというか……渋みはあるんですけど、甘みが加わっていて……。あ、飲んだ後も凄くいい匂いが残ってます……」
「信州はいいお茶があるんだよねー。ほらほら、雷蘭も」
雷蘭が、しぶしぶという様子で湯呑みを口にした。
茉莉がちらりと横目で見ると、それまでかたくなに作られていた雷蘭の仏頂面が、簡単に緩んでしまったのが分かった。
くず桜も、茉莉がこれまでに食べてきたもののよりも群を抜いて味がいい。厚すぎず薄すぎないくずの外皮にすっと黒文字を入れ、二つに分けて、改めて横から静かに黒文字を差し入れた片割れを口に運ぶと、きめの細かいこしあんがさらりと舌の上でほどけた。
思わずほうと息をついた茉莉が、しみじみと言う。
「小豆あんの夏のお菓子って、涼しげでいいですよね……この、水の香りと涼風を感じる甘さは、和菓子ならではですよね……それをくずが強調してくれて、くず桜って作りはシンプルなのに、本当に凄い……」
あきれたように、雷蘭が「この人、えらく語るじゃない」とこぼす。
それで、茉莉は我に返った。
「はっ!? す、すみません! それで、私に質問というのは、なんでしたでしょうか!?」
「ん。単刀直入に訊くよ。茉莉、どうやってあの剣を――おれの牙を手に入れたわけ?」
「そ、それ、分からないんです。本当に、あんなことが起きたのは昨日が初めてで」
なにか言おうとした雷蘭を、切風は目くばせで制した。
「分かった。信じる。質問を変えるよ。茉莉、君、昔から霊感があるみたいなこと言ってたよね? 怪異を見たこともあるって。昨日は詳しく訊かなかったけど、そういう時はどうしてた? 剣で――牙の力で追い払ってたわけじゃないんだ?」
「どう、と言われても、……確かにお化けみたいなものを見ることはありましたけど、たいてい、お化けがどこかに行ってしまって私はなにもされませんでしたし」
「毎回? なんの悪さもされずに?」
「はい。祖母が霊感の強い人で、そういうものだから気にしないようにと言われていました」
ふは、と切風が吹きだした。
「適当なばーさんだなあ。でも、生まれつきの性質か……血統が関係あるのかなー。茉莉のお母さん、名前なんていうの?」
「薫です」
切風が、一瞬だけ思考を記憶へ巡らせた様子で、首を回す。
「知らないなあ。ちなみにばーさんは?」
「祖母は、八澄です」
「え?」
頬杖をつきかけていたためにけだるく曲がっていた切風の首が、ぴんと伸びた。
雷蘭も、両手で持っていた湯呑をどんとテーブルに置く。
血相を変えた二人に、茉莉がおののく。
「な、なにか?」
雷蘭が「なにかって……」と切風を見た。
切風も半ば呆然としたまま、「祖母……?」とつぶやく。
「あの、私の祖母になにか」
「茉莉。もしかしてだけどさ。じーさんの名前って、也寸志?」
「あ、そうです。……え? なんで分かったんですか?」
雷蘭は、口をぱくぱくさせて、目を見開いていた。ただ小さな声で、「ま、孫……孫……? もう……?」と繰り返している。
切風も、「ま、孫かあ……子供ですらなくて、孫かあー……。あれって昭和何年だったっけ? ちょっと合わない間に、孫……」と独り言のように言うだけだった。
「切風さん、雷蘭さん、どうしたんですか? 祖父も祖母も去年亡くなったんですけど、お知り合いなんですか?」
「亡くなったあ!?」と妖怪二人は同時に立ち上がった。
「は、はい。二人ともかなりいきなりの急変で、苦しむ間もなく……。持病とかありませんでしたから、本人たちも予想外だったと思います、……どうしたんですか、お二人とも?」
切風は、すとんと椅子に座り、茶をあおって、茉莉を見つめた。
「いや……なんでもない。ただ、分かったよ。君がおれの牙を持ってるのは、不当でもなんでもない。おれが八澄にあげたものだから。それが八澄の娘へ、そして君に受け継がれたんだな」
「やっぱり、お知り合いなんですね? 不思議な感じがします、祖父母と、妖怪の方が……」
「ああ。君にちょっかい出そうとしてた妖怪どもがなにもできずに回れ右してたのも、君の体の中にあったおれの牙の妖力のせいだね。もともと八澄を有象無象の怪異どもから守るためにあげたもんだから、道理だ」
そう言われて、茉莉ははっと腹に手をやった。
「そうだったんですか!? じゃあ、小さい時からずっと、あの刀は私を守ってくれていて……」
急激に、目の前にいる妖怪に、親しみが湧いていく。
一方的になれなれしくするわけにもいかないとは思いつつ、まるで幼少のころからずっと近所に住んでいた知り合いのように思えてしまった。
「あ、でも、そのせいで、切風さんて……」
「おれにはもともと、全部で四本の牙があった。いろいろあって減らしちゃったけど、最後の黒い牙を八澄にあげたのは、おれの意志だよ」
そこで、ようやく腰を下ろした雷蘭が会話に復帰した。
「そうよっ。でもそのせいで切風様は苦労したんだから! 平身低頭、額が擦り切れるまでお礼を述べなさいっ!」
「ちょっと黙ってよーか、雷蘭。時間ないんだったよね、じゃあもう一個だけ質問」
「は、はいっ。どうぞ」
「昨夜、山次の最後の攻撃、おれじゃなく茉莉を狙ってくるって言い当てたよね? あれなんで? 適当に煽ったりもしてたけど、あのくらいじゃあいつの行動を誘導できないでしょ?」
「あ、はい……あれは――」
ふん、雷蘭が鼻を鳴らした。対照的に切風のほうは、いつも通りに皮肉めいた笑みを浮かべながらも、視線は茉莉をしっかりととらえている。
「――あれは、ただ山次さんの様子を見ていて、そう思ったんです。私と切風さんのどちらを狙ってもいい状況なら、どちらにするのか。見たところ、結構その、山次さんと切風さんて確執がありそうだったので」
「あったので?」
言いづらそうにしながら、茉莉が続ける。
「先に切風さんを倒してしまったら、後に残るのはおびえて震えているだけの私です。多分、山次さんにしてみたら、凄くつまらないと思うんですよね。それに対して、先に私をやっつければ、後に残るのは、守ろうとした人間を傷つけられて打ちひしがれている切風さんです。こっちのほうが、つまりその、前者よりもずっと……」
「楽しいだろうと」
「そう言うとなんですけど、そういうことです」
「やるじゃん」
切風が口角を挙げて、嫌味なく笑った。
「い、いえそんな。たまたまでして」
「茉莉。苗字、なんだっけ」
唐突に言われて、「え?」と目をしばたたかせてから、「湖ノ音です」と答える。
「そうだよなー。コノオト。聞いた時に思い出せてもよさそうだったのに。確かに、也寸志の苗字がそんなんだった。そうかー、じゃああいつら、あれから結婚して、子供ができて……」
ふっと切風が視線を落とす。
「……それでもう、この世にはいないのか。……あいつらといた頃を知ってるのは、もうおれ一人ってことか……」
雷蘭が慌てて、切風のほうへ首を突き出した。
「あ、あたしも知ってるのと、それに何人かの祓い師も覚えているかと!」
「いや、なんか縁が薄いじゃん、その辺は」
あっさりと言われて、雷蘭が衝撃のあまりのけぞった。「う、薄い……!? 縁が!? あたしも!?」
それをよそに、切風が茉莉に向き直る。
「茉莉。そういえば、ちゃんと言ってなかったね。おれは切風。齢三百年の、年経た犬神だよ」
「さんびゃく……ねん!?」
目を見開く茉莉をよそに。
「一時は、この信州において『牙の王』なんて呼ばれる妖力の持ち主だった。でも今は、ただの群れからはぐれた犬妖だけどね。本当はもう、妖気を全部手放して、山の風の中にでも紛れて消えちゃおうかなと思ってた。やりたいことも、やらなきゃいけないこともなくなったから。……でも今は、もう少し生きてみるのも楽しいかなと思い始めてる。なんだか、妖怪どもも騒がしくなってきたみたいだしさ」
切風が、店の扉のほうに目をやった。
つられて茉莉と雷蘭(少し涙目だった)がそちらを見ると、ひどく弱弱しい音を立てて、引き戸が開いた。
そして、よろよろと入ってきたのは、痩せた狸だった。いや、茉莉には最初狸に見えたが、違う。顔に模様がなく、痩せているのではなくて全体的にほっそりしている。胴も、狸よりもすらりと長かった。
雷蘭が「あ、あんた? 魏良の郎党の」と指をさす。
「ヒトを指さすなよ、雷蘭。確かお前、魏良の弟分だよね。カマイタチの伊織とかいったっけ? ……どうしたの?」
「お……お助けください、霧風殿……。恥を忍んで、お頼み申します……」
しゃべった、と茉莉だけが危うく叫びそうになった。獣にしか見えない生き物――カマイタチというから妖怪なのだろうが――が人間の言葉で話すのには大きな違和感があったが、それどころではないと努めて口を閉じる。
「どうしたんだよ。まさか、もう一敗地に塗れたってわけでもないでしょ?」
「いえ……我ら魏良党、不覚を取りました……」
見ると、伊織は右の後ろ脚を引きずっている。
その奥にある尾は、獣の毛とは思えない、光沢を帯びた黒光りをしていた。茉莉は、あれが有名なカマイタチの刃の尾かと思ったが、茉莉の目にも、その刃はひどく傷んでところどころ欠けている。
「我らは『赫の王』をいかに待ち受けて返り討ちにすべきか、評定を重ねておりました。するとそこに、『赫の王』の尖兵の奇襲を受け、あえなく……」
「どんくさいな」と切風が息をつく。
たまらず茉莉が「切風さん!」と立ち上がる。
「ああ、悪い悪い。茉莉ってまじめだねー。で、魏良や山次ともはぐれて、ここまで逃げてきたわけだ」
「はい。やつらは、信州の山々に隠れて進みながら、そこかしこにあります裏世界の入り口へ飛び込んで、そこにたむろしております妖怪に奇襲を重ねておる模様。ほかの地域の妖怪たちも同様の手口でやられておるそうで」
「まあ、裏世界の入り口なんて隠してるわけじゃないもんね。敵はどんだけいたの、それ?」
「はっ。しかと数えたわけではございませんが、恐らくは三四十匹かと。我らはその場に集っておらぬ者もおりましたので、十数匹でございました」
「そん中で首領格っていうか、魏良やお前と互角にやれた敵は?」
「なにぶん混戦だったため、それもしかとは分かりかねまするが、一対一であれば拙者と同格ほどの者はそうおりませんでした。しかし、とにかくすぐに引き包まれてしまい……」
「それじゃ不覚を取っても仕方ないか。でもそれにしたって、お前ら油断が過ぎるんじゃないの?」
呆れた様子の切風にそう言われて、伊織は、ただでさえ低い頭をさらに床に近づけた。
「左様! 左様なのです! 昨夜我々は妖狐の成家殿を軍師に迎え、陣容を整えんとしておりました! 成家殿の読みでは、少なくとも信州で本格的な戦端が開かれるまでには、あと三四日はかかるであろうと! しかしやつらは、早すぎるのです! そして数も多く、我らはなすすべもなく!」
成家という名前を聞いて、切風が目を閉じてのけぞった。
「だあから、成家なんかと手を組むなってあれほどー」
「しかし、我らにはほかに頼む軍師がおりませぬ! 成家殿と並ぶ歴戦のつわものと言えば、ほかには……」
ちら、と上目遣いの伊織の視線が切風に向く。
「おれは無理だから。全然向いてないからね、軍師とか」
「存じております。魏良からは、切風殿は開戦と同時に剣を振り回して敵に突っ込んで行く、放たれた矢玉のような方で、およそ後方で戦陣を指揮するたちではないと」
「……なんかはたからそう言われると腹立つな」
「とにかく、成家殿の非を鳴らすつもりも拙者にはありません。我らが考えても、『赫の王』の進軍が早すぎまするゆえ」
確かにな、と切風が小さく言ったのが、茉莉には聞こえた。
「切風殿、どうか、どうか、我らに合力くださらんか! 全ての非礼は、『赫の王』を退けましたなら、一族すべからくこうべを垂れてお詫びし申す! このままでは、信州がやつらめの手に!」
切風は、すっかり冷めた茶を飲み干して、頭をかいた。
「……正直、妖怪の覇権争いなんて、今更首突っ込む気にはならないんだけどさ。まあ、人間には――人間のごく一部には世話になったから、そいつらが人間まで襲うっていうなら、止めたいなとは、思わなくもないよ。そんな連中が大きく動いてるってのは、なんだか気味悪いし」
「……では!?」
「でも、おれは力になれない」
一度体を起こしかけた伊織が、へなへなとくずおれる。
「やはり……我らの仕打ちに、お怒りで」
「あのさ、見ただろ、おれと山次がやり合ってるとこ。牙を失くしてひたすら投げ飛ばすしかできなかったおれに、なにが期待できんの」
「それは!」再び体を起こし、ほとんど二足歩行のような格好になった伊織が、かっと茉莉を見た。「そちらの、マツリどのとおっしゃるのでしたかな!」
「は、はいっ!?」
「そちらのマツリ殿から、切風殿の牙が生えたと聞き及んでおります! 切風殿に牙が戻れば、昨夜より散り散りになっております我ら郎党、『牙の王』のもとに馳せ参じましょう!」
「あ……ええと」
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる