幸せの在り方

親の目を盗んで

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二章

名演技

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「オリバー!一体、何をしたんだ!?」

ウィリアムが隙だらけの構えで僕に問う。

僕はそれに答えるように放出していた魔力を収束し、保有魔力として存在させた。

「ッ!?…なんて保有魔力なの!?まさか、スカーレットが何かをしたのかしら?」

「いいえ、違いますよ。」

僕はシャルロットの疑問に答える。

「なら、何をしたんだ!?」

再びウィリアムが聞いてくる。

「魔力の封印を解いただけだよ。」

「封印、ですか?」

シャルロットが尋ねる。

「ええ、スカーレット様の魔法に抗えずに隷属される直前、自分の魔力を封印し、この力を利用されないようにしたのです。」

僕は作った設定を話す。

「ということは、それがお前の本来の力なのか?」

ウィリアムが確認するように言う。

「はい。…それと、僕の意志ではないにしても、あなた方に多大なる迷惑をかけてしまった事をお詫びいたします。」

僕は申し訳なさそうな顔をして、この場にいる全員に頭を下げた。

「え、ん、お?…どういうことだ?」

僕に向かって走ってきた男が首を傾げる。

「言いたいことは分かったわ。…でも、なぜスカーレットがそのようなことをするの?あの子はそんな事をするような人間じゃないわ。」

シャルロットは僕に問う。ここからが演技の見せどころだ。

「はい。全てお話しします。…シャルロット様、今なら王族魔法での命令が通じるはずです。」

「それは…いいのかしら?」

シャルロットは心配するように聞いてくる。

「はい。どうぞご命令を。」

「分かったわ。…オリバーよ、我が命に応えよ。なぜ、スカーレットがこのようなことをしたのですか?」

シャルロットが魔力を込めた声で僕に命令する。

「はい。それは、スカーレット様がウィリアム・マーティン殿を好いておられることが原因です。」

「へ?」

シャルロットが間抜けな声を出す。

「どういうことだ?」

ウィリアムも同じようだ。

「あ…」

「まさか、そういうこと?」

ソフィアとリリアンは心当たりがあるようだ。

「く、詳しく話しなさい。」

シャルロットは訳が分からず、混乱しているようだ。

「スカーレット様にとって、ウィリアム殿の近くに居る女性は全員、敵なのです。初めは監視という、まだ可愛いものでした。しかし、ウィリアム殿がソフィアと正式に付き合い始めてから、あの方はまるで人が変わったように僕に非道な命令を突き付けてきたのです。」

「そんな…ですが、確かに被害にあっているのは女性の方ばかり。…おや?しかし、あなたはソフィアさんに昔からちょっかいを出していた、と聞いたことがありますが…」

「あ、そ、それは…」

僕はしまったという様な仕草をする。

「怪しいですね。あなたは、私に何を隠しているのですか?包み隠さず、全て答えなさい!」

シャルロットが僕に命令する。

「ぐ、う…ぼ、僕は、その頃…」

僕は王族魔法に抗うフリとして、呻く。

「その頃?何ですか?答えなさい。」

シャルロットが再び王族魔法を発動する。

「ソフィアに、恋情を抱いておりました。」

僕は魔法で頬を染め、俯いた。

「へ?」  シャルロット

「え…」  ソフィア

「何!?」  ウィリアム

「あ~…」  リリアン

僕は続ける。

「それは僕にとって経験の無い事であり、錯乱しておりました。…かつて僕の友人だった者がソフィアに好意を寄せていた事を知った時、僕は初めて、家の権力を行使してしまいました。僕はどうしてもこの恋を実らせたかった。」

僕は懺悔するように言葉を紡ぐ。

「ですがそれは許されることではありません。僕は父にこの事を伝えようとしたのです。…そこであることが頭をよぎりました。もし伝えたら、もうソフィアに会えなくなってしまうのではないか?…僕は恐れました。なにより、それをソフィアが知り、失望されてしまうことが。」

四人は息をのんで僕の話を聞く。

「結局、僕は何もできなかった。そのまま父に伝えず、ソフィアに近づく男を脅し続けていました。…ですが、もう限界だと感じていたのです。このままでは、僕がしていることも周囲に広まってしまう。そのため、ソフィアにその気持ちを伝えようとしたのです。」

僕は拳を握り締め、顔をしかめる。

「ですが、素直に言えなかった。しかも、あろうことか、権力を使ってソフィアを脅してしまったのです。そして当時、その事に疑問を持つことすらしなかった。…フフフ、そこで入学試験の時、ウィリアム君に言われましたね。おかげで目が覚めましたよ。僕は、何であんなことをしていたのでしょうか。…嗤ってください。ここまで哀れで間抜けな男など、珍しいですよ?」

僕は自嘲するように言う。もちろん演技だ。

「次会うときは、謝ろうと、そう思ったのですが…」

「第二王女様に操られたと?」

ウィリアムが先読みをする。

「はい。僕の体は僕の意識に関係なく、スカーレット様の命令に従っていました。」

僕は無念という様に顔を伏せる。

四人は僕に同情するような反応をする。

…いいぞ。さすがは僕だ。名演技だねぇ。
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