ホロスサントスの医院長 ※二次創作

親の目を盗んで

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一章

医療費ギャンブル

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「ああ、ありがとよ。お陰様で随分、楽になった。」

病院に搬送された男は医院長に頭を下げた。初めは不安そうな態度であったが、今では自分の恩人なのだ。その程度の礼儀はわきまえているようだ。

「いえいえ、私は医者ですからね。…こちらが請求書です。できるだけ早く、振り込んでください。」

医院長は男に一枚の紙を手渡す。

男はそれを受け取り、ため息をつく。

「二十万…やっぱこの街の物価は高えなぁ。」

…そう。この街の物価は高い。外からやってきた者は皆、知っていてもなお、それを目の当たりにして驚くほどだ。

その瞬間、医院長の目が獲物を見つけたかのような獰猛な光を帯びた気がした。

「…実はですね、このホロスサントスの外からやってきた人に、特別に『医療費ギャンブル』というものをやっているんですよ。医療費免除の機会をかけた賭け、興味ありません?」

医院長のその言葉に男は反応する。

「ほう?そりゃあ、なんだ、その…アレか?」

が、何かを疑うような視線を向けている。

「いえ、違法ではありませんよ?ちゃんと警察も認めてくださってます。…ルールは簡単です。あなたが一から六までのお好きな数字を二つ選んでください。そしてダイスを一つ振り、見事的中すれば!…その請求書は破り捨てていただいて結構ですよ。」

医院長は男の様子から何を心配しているのかを探り当て、さらにギャンブルについて詳細に説明した。

「お、おう…だが、外せばどうなるんだ?」

男は急に饒舌になった医院長にたじろぎつつも、ちゃんと冷静な判断ができているようだ。過去には目先の餌にしか食いつかず、医院長に身を滅ぼされた者も少なくはない。

「医療費倍です。」

医院長は短く告げる。

「っ…」

男は一瞬目を見開き、眉間を抑えて何かを考えている。

「大丈夫ですよ。外さなければ良いのです。それに、二十も四十も同じですよ。」

「いや、二十と四十は違うだろ」

男は反論する。

「あなたは医療費免除が欲しいから悩んでいるのでしょう?それはつまり、今二十万失うと何かしらを妥協せざるを得なくなる。違いますか?」

医院長は男に問う。

「い、いや、それは確かにその通りだ。」

「だったら四十万を失っても何かを妥協しなくてはいけないのは変わりません。ならそのくらいのリスクで二十万がタダになるかもしれないのですから、それに賭けてみるのも一興でしょう?」

医院長が追い打ちをかける。

「………分かった。やってやるよ!倒産しても知らねえからな!…3と5だ!」

男は宣言し、医院長から手渡されたダイスを投げる。

結果は… 2

「ああああああああああ!」

「フフフ…では、四十万請求させていただきますね?」

男は膝から崩れ落ち、医院長は上機嫌だ。勝負に勝ったからだけというわけでもないようだ。

「ちくしょう、負けたぁ…」

「では私はパトロールに行ってまいりますので、ちゃんと振り込んでおいてくださいよ~?」

医院長はそう言い残し、病院のガレージに向かった。


これが医院長がギャンブル狂いと呼ばれる所以の一つである。

何人もの患者たちがその巧みな話術に誘導され、図らずして身軽になってしまった。

もちろん勝負に勝った者もいるが、それは数えるほど少数である。

イカサマだ!と警察沙汰にもなったこともあるが、医院長は何も小細工はしていない。そして医療費ギャンブルを止めることも無かった。


ギャンブル狂いと呼ばれるまでギャンブルを愛している者がギャンブルを懲りることもイカサマもするはずがない。

彼は利益など目的ではなく、ギャンブルそのものを楽しんでいるのだから。
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