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一章
カジノ
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「おや?あの車は…」
医院長は現在、病院の車である場所に向かいながらパトロールをしている。その最中に知っている車両を見かけたのだ。それも目的地の駐車場に停めてあった。
医院長はその車両の隣に駐車し、目の前の建物、『カジノ』に足早で向かう。
「あら、医院長先生じゃないですか。今からですか?」
ちょうどその入り口から一人の赤髪の女性が現れ、医院長を見るなり尋ねてきた。
「やはりルイさんでしたか。…ええ、これから一賭け行こうと思っていたのですが、ご一緒しませんか?」
医院長は入り口の方を示しながら誘う。
「いえ、今日はこれくらいにしておこうかと。負けが込んでしまいまして…」
ルイは落ち込んでいるようだ。それは負けてしまったからだけでもないように感じる。
「そうでしたか…では、次の機会には趣向を変えて一緒にスロットでもどうですか?」
「ああ、いいですね。その時はぜひ!」
ルイは医院長に笑顔を向け、帰路についた。
医院長はその背を見送り、カジノに入る。
「残念ですねぇ、相談したいことがあったんですが…」
医院長にとって、ルイは数少ないギャンブル仲間、所謂『ギャン友』である。互いに気を許し合っている仲なので、簡単に他人に相談できない事も話せるのだ。
「まあ、それは今度にしましょうか。…さて、今日も楽しみますかね。」
その後医院長はディーラーの前の席に座る。医院長お気に入りのブラックジャックだ。
そこで医院長はふと思い出した。ここで初めてルイさんと会った時のことを。
「ぐうううう…こ、ここでエースが来るとは…」
それは珍しくも医院長が負け続けだった時の事。合計すると一体何百万の赤字になっただろうか、もしかすると一桁高くなったのではないか。さすがの医院長も危機感を感じ始め、席を立とうとしたとき…
「お隣よろしいですか?」
赤い髪の女性が医院長にそう話しかけてきた。当時のルイである。
「え?…あ、ええ、どうぞ。」
医院長は反射的に返事をした。そして席を離れるタイミングを逃してしまった。今、席を離れるのは話しかけてくれた人に失礼が過ぎる。
医院長は決心した。このまま続けることを。
「いや~、ボロ負けでしたね~」
「はは、そうですね…」
結局医院長はあの後も負け続けたのだ。さすがの医院長も気が沈む。
ルイも残念そうな顔をする。しかしその声からはどこか晴れやかな感じがした。
医院長は直感した。この人は同類だと。
「…もしよろしければ、また一緒にやりませんか?」
この主語も目的語も無いような一言が医院長にとって精一杯だった。後から思えば、もっと言い方があっただろうに…と悔やんだことは数知れず。
「いいんですか!?ぜひ!またご一緒しましょう!」
しかしそれでもルイは嬉しそうに笑い、誘いに乗ってくれた。
それからは偶に待ち合わせをしたり、図らずも出会って笑い合ったり…
「今思えば、ルイさんと出会えたのが幸運だったのでしょうね…」
たかがお金で気の置けない友人と出会う事ができた。それなら負け続けた甲斐があるものだ。
「うっ、ここでエースですか。計22…」
医院長はため息をつく。
「今日はこのぐらいにしておきましょうか。帰りにパン屋に寄っていきましょうかね。」
医院長は早々と席を立ち、駐車場に向かうのだった
医院長は現在、病院の車である場所に向かいながらパトロールをしている。その最中に知っている車両を見かけたのだ。それも目的地の駐車場に停めてあった。
医院長はその車両の隣に駐車し、目の前の建物、『カジノ』に足早で向かう。
「あら、医院長先生じゃないですか。今からですか?」
ちょうどその入り口から一人の赤髪の女性が現れ、医院長を見るなり尋ねてきた。
「やはりルイさんでしたか。…ええ、これから一賭け行こうと思っていたのですが、ご一緒しませんか?」
医院長は入り口の方を示しながら誘う。
「いえ、今日はこれくらいにしておこうかと。負けが込んでしまいまして…」
ルイは落ち込んでいるようだ。それは負けてしまったからだけでもないように感じる。
「そうでしたか…では、次の機会には趣向を変えて一緒にスロットでもどうですか?」
「ああ、いいですね。その時はぜひ!」
ルイは医院長に笑顔を向け、帰路についた。
医院長はその背を見送り、カジノに入る。
「残念ですねぇ、相談したいことがあったんですが…」
医院長にとって、ルイは数少ないギャンブル仲間、所謂『ギャン友』である。互いに気を許し合っている仲なので、簡単に他人に相談できない事も話せるのだ。
「まあ、それは今度にしましょうか。…さて、今日も楽しみますかね。」
その後医院長はディーラーの前の席に座る。医院長お気に入りのブラックジャックだ。
そこで医院長はふと思い出した。ここで初めてルイさんと会った時のことを。
「ぐうううう…こ、ここでエースが来るとは…」
それは珍しくも医院長が負け続けだった時の事。合計すると一体何百万の赤字になっただろうか、もしかすると一桁高くなったのではないか。さすがの医院長も危機感を感じ始め、席を立とうとしたとき…
「お隣よろしいですか?」
赤い髪の女性が医院長にそう話しかけてきた。当時のルイである。
「え?…あ、ええ、どうぞ。」
医院長は反射的に返事をした。そして席を離れるタイミングを逃してしまった。今、席を離れるのは話しかけてくれた人に失礼が過ぎる。
医院長は決心した。このまま続けることを。
「いや~、ボロ負けでしたね~」
「はは、そうですね…」
結局医院長はあの後も負け続けたのだ。さすがの医院長も気が沈む。
ルイも残念そうな顔をする。しかしその声からはどこか晴れやかな感じがした。
医院長は直感した。この人は同類だと。
「…もしよろしければ、また一緒にやりませんか?」
この主語も目的語も無いような一言が医院長にとって精一杯だった。後から思えば、もっと言い方があっただろうに…と悔やんだことは数知れず。
「いいんですか!?ぜひ!またご一緒しましょう!」
しかしそれでもルイは嬉しそうに笑い、誘いに乗ってくれた。
それからは偶に待ち合わせをしたり、図らずも出会って笑い合ったり…
「今思えば、ルイさんと出会えたのが幸運だったのでしょうね…」
たかがお金で気の置けない友人と出会う事ができた。それなら負け続けた甲斐があるものだ。
「うっ、ここでエースですか。計22…」
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