君の『色』は…

親の目を盗んで

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一章

九重 咲良

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私は、今日から高校生です。

…でも、あまり嬉しくない。

だって、本当は他の高校に入るはずだったのに…

私は、運が悪いです。嫌になっちゃうくらいに。

昔から、そうでした。本命の高校の入試の時だって、その前日にインフルエンザになってしまい、試験会場に行くことすらままならなくなってしまったのです。

その結果、滑り止めどころか、ただ入試の雰囲気を経験するために受けた高校に入らなければならなくなってしまいました。

しかも、その高校で、私より上の成績の人が一人いるらしいのです。両親は気にするなと言っていたけど、落胆させてしまったでしょうね。姉様にも嗤われてしまいましたし…

私は家の送迎車でその学校に向かいます。

私のお父様は『九重財閥』の社長です。財閥の中ではまだ小さい方ですけど、それでも財閥と言われるほどには大規模の会社のようです。それに、将来性が高いと言われています。

たぶんお父様の後を継ぐのは姉様でしょう。私はそれにあまり興味が無いですから。

でも、姉様は私に対抗意識を持っているの。そのため、何かと難癖をつけてくるのです。

そんなことを考えている間に教室の前についてしまいました。教室からは何の音も聞こえません。…少し来るのが早すぎたのでしょうか?

あら?でも、扉が開いています。

私はその扉から教室に入りました。

私は、そこで一人の男子生徒が座っている姿に、目を奪われました。

細身だけど、背は私よりも高いくらいでしょうか。座っていても分かります。髪は随分と太く、そして真っ黒です。とても静かで、儚いような印象を受けますが、ちゃんと地に足を着けている様な感じがしたのです。

彼がこちらを見て、目が合いました。彼も何故か驚いたような顔をしていますが、私も驚いて、声が出ませんでした。

モデルか何かをしていてもおかしくはない程に整った顔。とても凛々しく、でもどこか、少年の様な幼さを感じます。そして、なにより、私はその目に惹かれてしまいました。

彼の目は右と左で色が違いました。所謂、オッドアイです。

その左目は吸い込まれそうな程、黒に近い濃い茶色。
その右目は何かを見透かしている様な薄い茶色でした。

いつまで見つめ合っていたのでしょう。私はその人に見惚れていたことを自覚しました。

そう思った瞬間、私の胸は羞恥心でいっぱいになりました。おそらく、私の顔は今、真っ赤になっているのでしょう。私は耐えられず、急いで自分の席を確認し、その席に座りました。

…彼の隣の席でした。待ってください。もう、心臓が持ちません。私は誰かに訴えました。

しかし、追い打ちをかけるように、彼はまだ私の事を見つめ続けているのです。ど、どうしたらいいのでしょうか?せ、せめて挨拶だけでも…

私の決心は定まらず、とても気まずい空気が流れます。

は、話しかけないと。私はこの空気に耐えられる気がしませんでした。

「あ、あの!」

あ、変な声になってしまいました。おかしな人だと思われてないでしょうか…

「ん?」

彼は首を傾げました。その仕草は少し、子供っぽく感じました。…い、いけません。会話に集中しないと。えっと、何を言おうかしら。な、なんて話せばいいのかしら?

「え、あ、いえ、その…オッドアイなんですね。」

あ~!もう、私の臆病者!名前を聞くぐらいしなさいよ!

でも、話題としては良いかもしれないわ。このまま、話を続ければ…

「ん?ああ、そうだよ。昔、ちょっとね…」

彼はとても悲しそうにして目を伏せる。

…やってしまいました。踏み込んではならない場所。所謂、地雷というものを踏み抜いてしまったようです。

絶対にこの話題は続ける訳にはいきません。と、とりあえず!謝らないと!

「あ、その、ごめんなさい。」

「気にしなくていいよ。…それより、俺は『新城 翼』。君は?」

え!?な、名前が聞けました!シンジョウ ツバサ君。え、えと、名前呼びはまだ早いよね?気安い女なんて思われたくないし…あ!私も自己紹介しないと。

「わ、私は、『九重 咲良』と言います。よろしくお願いします。」

い、言えました。新城君の声が凄く綺麗で、心臓が高鳴り続けていますけど。

「ああ、よろしく。」

新城君はそう言い、手を差し出しました。…え?これは、握手を求めているのでしょうか?

…え!?う、うそ。そ、そんな、いきなりそんな事、恥ずかし過ぎます!

でも、断ってしまったら、私、凄く感じの悪い人なのでは?そうです!それは相手に失礼です!け、決して、触れあいたいとか、そんな、やましい事とか!考えてませんから!

私も自分の手を差し出し、き、緊張します。これはどう思われてしまうのでしょうか…

…ついに、新城君と握手することができました!でも、その手は、凄く冷たかったのです。いえ、私の体温がが恥ずかしさで上がっていたからなのかもしれませんが、でも、何かから怯えている様な気がするのです。

「ふふっ、新城君って、変わっていますね。」

私はつい、そう言ってしまいました。他意はないのです!本当に!

「そう、かな…」

そうですよ!凄く達観したような凛々しい眼をしているのに、どこか子供っぽくて、可愛くて、でも実際は高校生なんですよ?見た目と精神年齢と実年齢がどれも合わないんですよ?

そんな人、そういませんよ。まあ、そんな事、言えないんですけどね。

恥ずかし過ぎて。

そんな時、教室の扉が開きました。

「おっ?お前たち早いな。まだ三十分前だぞ?」

先生でしょうか。中年の男性が教室に入ってきました。

「おはようございます。…えっと、気が急いて、早く来すぎてしまいました。」

私はその人に挨拶をしました。もっと新城君と一緒に居たかったような、でも二人きりにならなくて安心したような…何でしょう、この気持ち。

「ああ、おはよう。えっと…九重、だよな?私は『杉山 透』。このクラスの担任だ。一年間、よろしくな。」

驚きました。まさか、もう生徒の名前を憶えているのでしょうか。

「おはようございます。俺は『新城 翼』と言います。」 

「ああ、君があの…君の事は知っているが、特別扱いはしないよ?」

「はい。よろしくお願いします。」

え?な、何の話なのでしょう。聞かない方が良いのでしょうか?

私は、訳が分からないという風に首を傾げましたが、二人とも説明はしてくれませんでした。

…私は、学びました。こういう時、聞いてしまうのは、いけない事です。ですので、私は何も言えず、気まずい時間だけが流れていきました。
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