君の『色』は…

親の目を盗んで

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一章

体育大会

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もうすぐ、この学校の体育大会が始まる。

俺は二百メートル走、綱引き、そしてリレーに出場する。

さて、これを機に、九重さんと親睦を深めれればいいんだが…

…うまくいくかなぁ?

俺は頑なにこちらを向かないようにしている九重さんを見て、ため息をつく。

そう、完全に手詰まりだ。返事はしてくれるようになったが、それだけだ。なので、この体育大会に望みを託している。

といっても、そこまで重要な事でもないんだけどな。そもそも、この右目の手がかりを見つけられる可能性を秘めているのかも分からないのだ。

まあ、暇つぶしにはなるから、良いんだけど。






~体育大会、当日~

…何もなかった。後は、リレーだけだ。

俺はアンカーとして九重さんからバトンを受け取る側だ。直接的な接触がある分、目的には最適だと思ったんだが、まあ、右目の視界が悪い。嫉妬だったり恨みだったり、不安だったり…

何十人いるんだよ。うんざりだよ。何もしないよ。

って、叫びたいくらいにはストレスだ。この状況。

あのオッサン、マジで何なんだ?完全に『殺意』なんだけど?完全にあの周囲一帯、真っ黒なんだけど?

俺は観客席の一部を見て、ため息をつく。



突然、銃声がする。


悲鳴や怒声が会場全体に響き渡る。


…マジかよ。俺はその光景を見て、血の気が引いた。

こんな、こんなに…




こんなに注目されるのかよ!やべえよ。片目で走らないといけないのか!?俺だけ難易度高くねえ!?

俺は期待や歓喜の色に塗りつぶされた、リレーの走者であろう人影を見て、愚痴る。

しばらく待ち、俺は開始戦の前に出る。

…どうやら九重さんが一番らしい。俺は一番内側に立つ。

…ん?あのオッサン、何か叫んでいるな。って、まぶし!

俺はすぐに右目を閉じた。どれ程の感情を九重さんに向けているんだ!?これほど右目を痛めつけるような量の感情は初めて見た。黄色い、『歓喜』。

俺の頬は思わず引きつっていた。人一人の感情の量に限界はあるのか、気になってしまう。

いかんな。九重さんがもうそこまで来ている。

俺は重心を下げ、九重さんを見る。目が合った。俺は片目だけだけど。

九重さんは驚いたような顔になり、次にそれを真っ赤に染め、足をもつれさせて転倒した。俺の目の前で。

…『驚愕』『動揺』『不安』『心配』

会場中の人々の感情が押し寄せる。目をつぶっていてもまぶしい。気持ち悪い。

…いや、それより、

「九重さん!大丈夫か!?」

俺は問いかけながら、容体を見る。ふむ。受身は取ったようだが、足を痛めているのか。

俺は急いで九重さんを抱き上げ、トラックの外に運び、バトンを持って走る。本気で。

九重さんが何か言いそうだったが、風の音で聞こえない。

追いつくか?…よし、なんとか行ける。


俺は運動神経が他人より高い。そして効率の良い走り方もすぐに習得できた。多少足が速い程度の高校生なんぞに、遅れは、取らん!

…紙一重だった。ぎりぎり、俺の勝ちだ。なぜ、柄にもなく、こんな事をしてしまったのだろうか。これでは多少どころか、目立ちすぎてしまう。

苦しい。これ程、息を切らしたのはいつぶりだろうか。

なのに、なぜ後悔の一つもしていないのだろうか。

なぜこんなにも、晴れやかな気分なんだろうか。

分からん。分からんなぁ。

俺は『僕』の体を見て、目元に手を置く。

その体の端っこに、小さな、今にも消えてしまいそうな『桃色』が、確かにあった。

なぜこんな感情を、彼女に抱いてしまうのか。本当に、人間は分からない。
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