君の『色』は…

親の目を盗んで

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一章

学校生活

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学校が始まり、一か月が経過した。俺の周囲には友人の様な人間が多くいる。広く、浅く付き合うのが基本だ。

だが、肝心の九重さんとの仲は全く進展しなかった。いや、むしろ後退しただろう。席順こそ変わっていないものの、俺が挨拶をしてもお辞儀をするだけで、すぐに逃げるように立ち去っていく。なぜ逃げるのか、何を思って逃げているのか。

…分からん。皆目見当もつかぬ。感情が見えないという事がこんなにも不便だとは。

はて、嫌われるようなことをしただろうか。いや、反応で言うと警戒されているのだろうか。そういえば彼女は俺が近くに居ると身を縮こませていたな。

俺が施設育ちだという事をどこかで知ったという可能性もある。

俺はそう思いながら登校している。

…ん?『敵意』の色が、俺に伸びて来ている。辿ってみると、背後のビルの屋上付近からだ。

まあ、『敵意』と言っても殺意とかではなく、警備員のような『警戒』に近いし、放っておいてもいいだろう。

俺は校門前まで着いた。ついでに色々連れてきてしまった。

四人か。心当たりなんて、一つしかないぞ?

俺は九重さんが来るであろう時間帯に校門に来た。これではっきりするだろう。

俺は送迎車から降りてきた九重さんに挨拶をするためにそちらに足を向ける。

瞬間、その四人から殺意や怒り、妬みなどの感情が発せられた。…それで仕事が務まるのか、九重さんのボディーガード達よ。

…まあ、原因は分かったし、無視でいいだろう。

「おはよう、九重さん。」

俺は九重さんに挨拶をした。四人からの感情のほとんどが妬みになった。

…もうダメだろ、こいつら。

「ひゃえ!?///あ、お、おはよぅ、ございます。新城、君…」

お!今回は逃げなかったな。でも、やはり警戒されている、どころか恐れられてないか?体が震えている。

まさか逃げないのは足が竦んでしまったから、じゃないよな?

前途多難だな。感情が見えないと。

俺は自分の教室に向かう。







授業は俺にとって簡単だった。子供の頃に何も考えないように詰め込んだ知識が役に立つ。なんてものじゃない。授業の内容のほぼ全て、その応用まで知っているのだ。

そのため、つまらない。だから右手で板書を写しながら、自分の問題集を左手で解いている。

俺はなぜか、マルチタスクができるのだ。昔は苦労した。複数の思考の全てを埋めないと余計な事を考えてしまうのだ。今では割り切ってしまったので、ただ便利にしか思っていない。

俺の席は窓際だから、誰にも見えないように左手で問題集を解いているのだが、今日は窓際に彼らがいるのを忘れていた。

俺の問題集の付近が『驚愕』の色で染まる。…見づらい。





~その日の夜、九重邸で~

「な!?こ奴は施設で育っているだと!?」

咲良の父、『九重 裕樹』が叫ぶ。

「まあ、幼い頃に両親からの暴行を受けたらしいですわ。こんな親も居るのですねぇ。」

悲しげに手に持った資料を読み上げたのは咲良の母、花蓮である。

「ねえねえ!オッドアイにマルチタスクですって!随分、高性能じゃない!」

咲良の姉、冬華が言う。

「ダメだ。施設育ちの奴は大抵、愛を知らぬ。そんな奴に私の大切な娘をやれるか!」

裕樹は反対のようだ。

「ですが、この資料を見る限り、優秀で、交友関係も広いようです。すでに何人かの女性に交際を求められたとか。…すべて断っているようですが。一体誰の為なんでしょうね?あなた?」

花蓮が笑顔で裕樹に尋ねる。

「まて、や、やめろぉ!やらせはせんぞおおおおお!」

裕樹が何を想像したのか、叫んだ。

「もう。お母さんも止めなよ。でも、施設育ちってそんなにひどいの?」

冬華が花蓮を諫め、尋ねる。

「そうねえ、親から愛されなかった者は人の愛し方も分からなくなっちゃうのよ。それに、親から暴行を受けた者もまた、自分の身近な人に暴力を振るう人が多いと聞くのは確かね。」

花蓮はそう言った。

「そんな!そんなの駄目よ!絶対!咲良には近づかせない!」

冬華が叫ぶように言う。

「あら、素直になったわね、お姉ちゃん?」

花蓮がからかうように言う。

「あっ、///いや、違うの!これは、その…」

言い訳を思いつかなかったのか、冬華は言い淀む。

「もう少しあの子に寄り添ってあげなさいな。あの年頃の女の子の心は脆いのよ?あなたも支え、支えてもらいなさい?」

花蓮が真剣な顔で冬華に言う。

「…うん。」

冬華は返事をする。

「なら!私が直接、出向いてやるまでだ!貴様の心の内を、全て暴いてやるぞ!シンジョオオオオオオ!」

叫びから復帰した裕樹は突然そんなことを言い出した。

もちろん二人が止めたが、『いつかは会って、見定める。』ことが決定した。
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