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第三十六・五話 VSラグナロク・妖炎
さらば妖炎
しおりを挟むナガレの言葉を一通り聞いたジョーは、満足げに頷いた。そしてまたシルヴィアの方へ視線を戻す。
「……これが答えだ。霊感大波を扱えば、勝負は一瞬で決まっていた。だからそれだけは出させまいと優先的に阻止に動いた」
「……ええ。一目見て、あれはヤバいと悟った。だから、その技に最大限警戒して、そもそも出させないようにした。それだけのことよ」
彼女の言う通りなら、それは誰だってやっている。モンスターの危険な攻撃を常に警戒し、避けられるように、阻止できるようにしておく。それは大切なことだ。
「……霊感大波は遠距離攻撃。それを出させないんなら、牛魔壊も金銀砕もハグルマコンボも、事前に攻撃で阻止できたはず。霊感大波『だけ』を阻止した。そうすると、勝負がすぐに終わってしまうから」
ジョーは真っ直ぐ彼女の方を向く。
「……結果、ナガレは新技を完成させまた一つ、ラグナロクの壁を乗り越えた。お前がマッシバーに逆らってまでやりたかったことだ」
「そ、そうなの……?」
「……九割正解ってところね」
ナガレの問いに頷くシルヴィア。それについてもっと聞こうとしたナガレだが……。
ヒヒィーーン! ガラガラガラ……。
カランカラーーン!
唐突に、何やら高級そうなベルの音が鳴り響いた。音が遠くでもしっかり響く製品だ。
「あらっ! アタシの馬車が来ちゃったわ。それじゃあ二人とも、アデュ~♡」
と言うなり、スタスタと森の外へ歩いていく。木々の隙間から見える様子では、一台の高そうなピカピカの馬車が停まっていた。
「それじゃまたね、ジャック! ナガレボーイ! それと……そこのちんちくりん!」
「だれがちんちくりんじゃーー!」
手を振れない代わりに、足をフリフリさせるシルヴィア。そしてどキツイウィンクをしてから、馬車に乗り込んだ。
ガラガラガラ……と、振り返らぬまま馬車は去っていった……。
~☆~☆~☆~☆~☆~
戦いの熱がようやく冷めて、冒険者たちの心身に寒さが戻ってくる。
ガラガラガラ……。
雪原を進む一台の馬車。シルヴィアのものではない。
中ではナガレとジョーとレンの三人が話していた。
「時にナガレ君。あの時の自爆を説得したのは、堂々としていて危なっかしかったのじゃ。やっぱり戦っとるモン同士は、フェアだとかそうじゃないとか分かるんかのう?」
レンの言葉にナガレは笑いながら、首を横に振った。
「はっはっは! いやあ、そんなまさか。むしろアレはオレにとっても、一つの賭けでしたよ」
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