崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第一話 最悪のギルド!?

迷子の馬探し

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~☆~☆~☆~☆~☆~

 ナガレは急いで自宅からバックを取ってきて、ホクス平原へ飛び出した。
「えっと地図地図……岩場エリアはあっちだな!」
地平線上にちょっとだけ、ゴツゴツした大地が見える。地図的にもきっとあそこだ。
「ようし、やってやるぞ! 馬は鞍をつけている、栗毛の個体みたいだな。口笛を吹けば寄ってくるのか……」
 依頼書を確認して情報を集める。何かを探すには、こういった細かい情報を頼りにするのが鉄則だ。
 ホクス平原はそれほど広くないため、小走りで道を進めばすぐに岩場へ着いた。
 ゴツゴツした岩がそこら中に転がっており、中にはとても大きな巨岩もある。ところどころに生えた木々もあり、微妙に見通しが悪い。不用意に近づいたモンスターが襲ってくるかもしれないため、注意しなくては……。
 ぴゅ~♪ 
 とりあえず口笛を吹いてみたナガレ。……景色に変化はなく、動く影もない。もっと奥にまで行かなければならないだろう。
「しっかしこんなところにまで来ることになるとは……こりゃクエストも出したくなるよ」
 夜になれば、荒野の気温はぐっと低くなる。それに話によれば、ゴーストや骨系モンスターが多く出没するようだ。加えてスカルクリーチャーのこともある……依頼金の少なさを見るに、依頼者自身もダメ元だったのだろう。
 ピュピュピューッ!
 今度は指を加えて、強めに口笛を吹いた。冒険者の講習で習った、大きな音を出して助けを求める特殊な吹き方だ。快音が周囲に響き渡る……。
「……ん⁉︎」
 視界の隅っこで、何かがもぞっと動いた! ずっと遠くで何かが顔を上げ、こちらの方を見た。慌てて望遠鏡を使いその方向を見る。

「いた……アイツだ! 見つけたぞっ」
 水晶レンズの向こうに映ったのは、鞍をつけた栗毛の馬!
 ピューーッ!
 もう一度口笛を吹くと、今度はまっすぐこちらにやって来た。かなりのスピードで近づいてくる……。
「ブルルルル……」
「どうどうどう、さっそく見つけたぞ。お前を探してたんだ……」
 すぐに馬はこちらにたどり着いた。こちらを認識しては、人懐っこく頭を擦り付けてくる。バックからニンジンを取り出して差し出すと、上品にかじり始めた。
「なんだい、すぐに見つかったな。こりゃ拍子抜けだ……ま、のたれ死んでなくて良かったぜ。さぁ帰ろう、お前のご主人様が待ってるはずだぞ!」
「ヒヒーン!」
 流石に乗るのは怖いので、手綱を握って歩き出す。馬もナガレが安全だと判断したのか、蹄をカポカポ言わせながら着いてきた。バッファローの街まで徒歩で三十分ほど。そう遠い距離ではないため、今日は帰ってゆっくり料理が出来るかもしれない。
「しっかし、何事もなくて良かったぜ。モンスターに見つかる前に、早いとこズラかろう……」
 ナガレが早足になった、その瞬間!


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「ッ⁉︎」
 突然遠くから、甲高い女性の悲鳴が聞こえた。
「なんだ……おわぁっ⁉︎」
「ブルルルル!」
 それを聞くや否や馬が暴れ出し、ナガレが握った手綱を振り解く。そして悲鳴がした方に駆け出した!
「あっおい! くそっ、とにかく助けねえと!」
 ジャキッ! とマルチスタッフを展開してナガレも駆け出した。悲鳴はすぐ近くの谷から聞こえてくる……。


 同時刻、バッファローギルド支部。
 バァン!
 大きな音を立てて、支部のウエスタンドアが開いた。
「た、大変だぁっ!」
「うわ! って、ルック君じゃないの。どうしたんだい?」
 室内に転がり込んできたのは、あのアルカナショップにいた少年・ルック。普段の血気盛んな様子はどこへやら、真っ青な顔に脂汗を浮かべている。只事ではなさそうな雰囲気に、アルクルが声をかけた。
「う、ウチの姉ちゃんがいないんだ!」
「ルック君よ、何があったのじゃ!」
 彼に姉がいることは、バッファローの街では周知の事実。それがいなくなったとは一大事だ。レンが肩に手をやり落ち着かせると、ルックは涙目になって縋り付いてきた。
「お、おれ、昼飯買って家に帰ってきたんだ。声かけても返事がないから居間を開けたらいなくて、机に書き置きがしてあった。姉ちゃん、ブラウンの奴を一人で探しに行っちゃったんだ!」
「なんだって⁉︎ マ……マスター、それって……」
 ブラウンとは、アルカナショップの仕入れを手伝っている栗毛の馬だ。アルビーたちによく懐いており人懐っこい。……しかし数週間前にモンスターに襲われた時、体を張って戦い続け、そのままどこかに行ってしまったのだ。
「うむ、ナガレ君に斡旋したクエストに違いない。痺れを切らして依頼人自らが探しに行ってしまったか……まずいことになったのう」
 レンは頭を抱える。気の毒だが最初に帰ってきた冒険者に探しに行ってもらうことになりそうだ。うまくナガレと合流してくれれば楽なのだが、それでも不安は消えない。
「ナガレ君ならうまくやるじゃろうが、なんだか胸騒ぎがする……。アルクルよ、タネツとヒズマがクエストに行ったのはどのくらい前じゃ?」
 スカルクリーチャーのこともある。まだまだ新米のナガレにはとても勝てる相手ではない。一般市民とあれば、尚更だ……。
「あいにく、つい一時間ほど前です。それに二人ともホクス平原の反対側にいます……今から呼び戻しても、どれだけかかるか分かりませんよ」
「うぬぅ……じゃが仕方がない、急いでタネツとヒズマを呼び戻すぞ」
 下手に動くわけにはいかない。レンにはナガレの無事を思うことしかできなかった。
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