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第三話 誇りとプライドを胸に
緊急事態!
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「うわっ⁉︎」
「な、何事じゃ!」
三人が見守る中、建物の中に一人の男性が息を切らせて転がり込んでくる。紺色の軍服を来た、身なりの良い青年だ。
「ん! あの制服……ありゃあ、タイガス冒険者ギルドからの緊急伝令じゃねえか」
説明してくれたのはアルクルだ。ソーダではなく、そこら辺に置いてあった水筒を手に取り立ち上がる。
「緊急伝令? なんですかソレ?」
「大きな街で大きな事件が起きたり、凶暴なモンスターが出て来た場合だけに動く、冒険者ギルドの特殊部隊じゃ。普段は仕事がない分、常日頃より訓練を積んでおる。ほれ、そのお方はタイガスの街より、伝令用の早馬でやって来てくれたのじゃろう」
そうレンが教えてくれた。
「ほら、冷たい水だ。飲んで落ち着け」
「はひっ、はーっ、はーっ……」
その青年は喘ぎながら水筒を受け取り、そのまま豪快に飲み干した。
「……ぷはぁっ」
「落ち着いたかの。それで、一体何事じゃ?」
レンとナガレも近づいてみる。すると青年は息を整えようともせず、疲労でのガラガラ声で高々と叫んだ。
「き……緊急事態! 緊急事態にあります! 観測隊がカープー森林より危険度S級モンスター、ガラガラマムシの出現を確認しました!」
「な……! ちょっと待てよ、危険度S級だって⁉︎」
ナガレの顔が真っ青になった。モンスターの危険度とは、その名の通り対象の危険性を表している指標だ。基本的に危険度から一つランクを下げた冒険者が討伐クエストを受けられる。冒険者ランクは『強さの信頼』であるため、信頼のある冒険者だけに受注してもらうことになっているのだ。例えば危険度B級のクエストは、Cクラス冒険者以上が受注可能である。
しかし、そのモンスター……ガラガラマムシの危険度はS級。A級以上の実力でなければ太刀打ちできないということになる。
「ぜぇぜぇ……。き、気球観測部隊からの伝書によりますと、当時刻より一時間前、カープー森林からガラガラマムシが出現したとのことです。進行方向から計測して、目標地点はおそらく……カープー森林南東の集落、ここバッファローと思われます!」
「なっ⁉︎」
「なんだとぉ⁉︎」
「ば、馬鹿な!」
一同驚愕した。あのスカルクリーチャーを超えるような化け物が、真っ直ぐこの街へやって来ている⁉︎
「お、おい! 冗談だろ! 近場に新しい餌場でも、できただけじゃねえのか!」
アルクルが伝令係の胸ぐらを掴んだ。その顔には隠しきれない焦りが見える。
「よせ、アルクル! たとえこの町に来なくとも、このスラガン地方にガラガラマムシが出て来たことが問題じゃ。そやつの生息地は過酷な砂漠のデクネク地方……スラガン地方とはかなりの距離がある。それを全くギルドに見つかることなく、ここまで移動して来たというのじゃぞ!」
レンがアルクルを叱咤する。そう、スラガン地方にガラガラマムシは生息していない。別地方からやって来たのなら、全国に点在するギルドの観測部隊がほぼ確実に気づいて、近隣のギルドに報告するはずだ。ましてや気候の違うカープー森林から出現したという事実……これはただ事ではない。
「近隣の街にも避難要請を伝える伝令が向かっています。私はタイガスへ戻り報告しなければなりませんので、これで失礼します。急ぎ避難を!」
「うむ……! アルクル、すぐ警報の大鐘を鳴らせっ! 全ての市民を避難させるのじゃ!」
レンの一声には、全く弱々しさがない。側にいただけのナガレまで、いつものユルさが少しも感じられないほどの緊迫した雰囲気がよく分かった。
「な、何事じゃ!」
三人が見守る中、建物の中に一人の男性が息を切らせて転がり込んでくる。紺色の軍服を来た、身なりの良い青年だ。
「ん! あの制服……ありゃあ、タイガス冒険者ギルドからの緊急伝令じゃねえか」
説明してくれたのはアルクルだ。ソーダではなく、そこら辺に置いてあった水筒を手に取り立ち上がる。
「緊急伝令? なんですかソレ?」
「大きな街で大きな事件が起きたり、凶暴なモンスターが出て来た場合だけに動く、冒険者ギルドの特殊部隊じゃ。普段は仕事がない分、常日頃より訓練を積んでおる。ほれ、そのお方はタイガスの街より、伝令用の早馬でやって来てくれたのじゃろう」
そうレンが教えてくれた。
「ほら、冷たい水だ。飲んで落ち着け」
「はひっ、はーっ、はーっ……」
その青年は喘ぎながら水筒を受け取り、そのまま豪快に飲み干した。
「……ぷはぁっ」
「落ち着いたかの。それで、一体何事じゃ?」
レンとナガレも近づいてみる。すると青年は息を整えようともせず、疲労でのガラガラ声で高々と叫んだ。
「き……緊急事態! 緊急事態にあります! 観測隊がカープー森林より危険度S級モンスター、ガラガラマムシの出現を確認しました!」
「な……! ちょっと待てよ、危険度S級だって⁉︎」
ナガレの顔が真っ青になった。モンスターの危険度とは、その名の通り対象の危険性を表している指標だ。基本的に危険度から一つランクを下げた冒険者が討伐クエストを受けられる。冒険者ランクは『強さの信頼』であるため、信頼のある冒険者だけに受注してもらうことになっているのだ。例えば危険度B級のクエストは、Cクラス冒険者以上が受注可能である。
しかし、そのモンスター……ガラガラマムシの危険度はS級。A級以上の実力でなければ太刀打ちできないということになる。
「ぜぇぜぇ……。き、気球観測部隊からの伝書によりますと、当時刻より一時間前、カープー森林からガラガラマムシが出現したとのことです。進行方向から計測して、目標地点はおそらく……カープー森林南東の集落、ここバッファローと思われます!」
「なっ⁉︎」
「なんだとぉ⁉︎」
「ば、馬鹿な!」
一同驚愕した。あのスカルクリーチャーを超えるような化け物が、真っ直ぐこの街へやって来ている⁉︎
「お、おい! 冗談だろ! 近場に新しい餌場でも、できただけじゃねえのか!」
アルクルが伝令係の胸ぐらを掴んだ。その顔には隠しきれない焦りが見える。
「よせ、アルクル! たとえこの町に来なくとも、このスラガン地方にガラガラマムシが出て来たことが問題じゃ。そやつの生息地は過酷な砂漠のデクネク地方……スラガン地方とはかなりの距離がある。それを全くギルドに見つかることなく、ここまで移動して来たというのじゃぞ!」
レンがアルクルを叱咤する。そう、スラガン地方にガラガラマムシは生息していない。別地方からやって来たのなら、全国に点在するギルドの観測部隊がほぼ確実に気づいて、近隣のギルドに報告するはずだ。ましてや気候の違うカープー森林から出現したという事実……これはただ事ではない。
「近隣の街にも避難要請を伝える伝令が向かっています。私はタイガスへ戻り報告しなければなりませんので、これで失礼します。急ぎ避難を!」
「うむ……! アルクル、すぐ警報の大鐘を鳴らせっ! 全ての市民を避難させるのじゃ!」
レンの一声には、全く弱々しさがない。側にいただけのナガレまで、いつものユルさが少しも感じられないほどの緊迫した雰囲気がよく分かった。
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