55 / 1,768
第三話 誇りとプライドを胸に
みんなで避難
しおりを挟む
カーンカーンカーン!
冒険者ギルドの屋根上にある大きな鐘が、けたたましく鳴り響いた。バッファローの町中に響き渡り、住民たちに危機を知らせている。
それは家で呑気に爆睡している、アリッサの耳にまで届いていた。
「むにゃ……もうちょっと寝かせて……」
「呑気に寝てる場合かっ! 起きろねーちゃん、大変だ!」
ルックが階段を駆け上がり、バタン! とアリッサの部屋の扉を開ける。普段なら店を開いているところだが、そんなことは言っていられない。
「なによう、私の睡眠欲求を満たせないことより大変なことなんて……」
「寝ぼけてる場合じゃねえんだよ!」
バキッ!
二度寝しようとするアリッサの後頭部を、ルックが思い切り蹴飛ばす。アリッサはベッドから転げ落ちた。
「いったーい……何すんのよ!」
「ギルドの鐘の音が鳴っているんだよっ! すぐに避難するんだ早くしろっ! 何が起こってるかは知らんが、あの鐘が鳴ってるってことは、どえらい事が起こってんだっ!」
「え、嘘っ⁉︎」
さすがのアリッサもこの異常事態で跳ね起きた。
「は、はやく着替えなきゃ! えーっとえっと持ち物は財布に着替えにタオルにコスメ用品に……あ、あとベッドと机も……」
「そんなに持てるかバカタレ! 非常バッグだけ持ってとっとと逃げるぞ! ほらアレだよ、メットとか乾パンとかタオルとか入れてるやつ!」
「あ、あれこの前食べちゃった。あんまり美味しくなかったね」
「何やっとんじゃあぁぁぁぁぁ!」
ルックの絶叫がこだまする。しかし本当にそんな言い合いをしている場合でないのだ。
「早く避難するんだ! 若い奴らは、他の人たちにも知らせてくれ!」
「避難用の荷物を持って、高台の避難所へいってください!」
「焦らなくても大丈夫です! 落ち着いて行動してください」
若者たちがこのように叫んでいるだけあって、すでに町中で避難が始まっている。この鐘が鳴った時どう行動するべきか、バッファローの町ではあらかじめ決まっていた。平和な地方だろうと、数年に一回ほど危険なモンスターが出現することもある。そういう時のために日頃から避難訓練をしているのだ。
ちなみに大きい街では、だいたいそこの冒険者ギルドから討伐隊が出てくるので、避難などはあまり行わない。え、バッファローの町? それは……冒険者ギルドがあの有様だし……。
それはともかく、町中の人々が出口へ行進している。みんな荷物は最小限だ。それぞれ大切なものだけを持って、目指すは町の近くの崖の上。陸地を歩くモンスターには気づかれにくく、空を飛べるか崖を登れるモンスターでなければ、そこまで登ってくることはできないだろう。崖を越えた先の森の中に、長期保存用の物資がある避難キャンプに着く。
冒険者ギルドの屋根上にある大きな鐘が、けたたましく鳴り響いた。バッファローの町中に響き渡り、住民たちに危機を知らせている。
それは家で呑気に爆睡している、アリッサの耳にまで届いていた。
「むにゃ……もうちょっと寝かせて……」
「呑気に寝てる場合かっ! 起きろねーちゃん、大変だ!」
ルックが階段を駆け上がり、バタン! とアリッサの部屋の扉を開ける。普段なら店を開いているところだが、そんなことは言っていられない。
「なによう、私の睡眠欲求を満たせないことより大変なことなんて……」
「寝ぼけてる場合じゃねえんだよ!」
バキッ!
二度寝しようとするアリッサの後頭部を、ルックが思い切り蹴飛ばす。アリッサはベッドから転げ落ちた。
「いったーい……何すんのよ!」
「ギルドの鐘の音が鳴っているんだよっ! すぐに避難するんだ早くしろっ! 何が起こってるかは知らんが、あの鐘が鳴ってるってことは、どえらい事が起こってんだっ!」
「え、嘘っ⁉︎」
さすがのアリッサもこの異常事態で跳ね起きた。
「は、はやく着替えなきゃ! えーっとえっと持ち物は財布に着替えにタオルにコスメ用品に……あ、あとベッドと机も……」
「そんなに持てるかバカタレ! 非常バッグだけ持ってとっとと逃げるぞ! ほらアレだよ、メットとか乾パンとかタオルとか入れてるやつ!」
「あ、あれこの前食べちゃった。あんまり美味しくなかったね」
「何やっとんじゃあぁぁぁぁぁ!」
ルックの絶叫がこだまする。しかし本当にそんな言い合いをしている場合でないのだ。
「早く避難するんだ! 若い奴らは、他の人たちにも知らせてくれ!」
「避難用の荷物を持って、高台の避難所へいってください!」
「焦らなくても大丈夫です! 落ち着いて行動してください」
若者たちがこのように叫んでいるだけあって、すでに町中で避難が始まっている。この鐘が鳴った時どう行動するべきか、バッファローの町ではあらかじめ決まっていた。平和な地方だろうと、数年に一回ほど危険なモンスターが出現することもある。そういう時のために日頃から避難訓練をしているのだ。
ちなみに大きい街では、だいたいそこの冒険者ギルドから討伐隊が出てくるので、避難などはあまり行わない。え、バッファローの町? それは……冒険者ギルドがあの有様だし……。
それはともかく、町中の人々が出口へ行進している。みんな荷物は最小限だ。それぞれ大切なものだけを持って、目指すは町の近くの崖の上。陸地を歩くモンスターには気づかれにくく、空を飛べるか崖を登れるモンスターでなければ、そこまで登ってくることはできないだろう。崖を越えた先の森の中に、長期保存用の物資がある避難キャンプに着く。
1
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる