崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第十話 闇を抱える爆音波

それはさておき手伝い

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「……組織は動いている。今は何もするな」
 サニーは一瞬目を見開き……そして眉を顰めた。
「……分かりました。ですがあの赤髪の男、ジョー・アックスは他のザコ冒険者とは違います」
「……報告しろ」
「……ヤツの正体は分かりませんが、他の馬鹿どもとは違って警戒心が強いです。頭もキレるしカンも鋭い……気をつけてください」
「……うむ」
 
 小声で話し合い、そして小さく頷いた。
「ちょいちょい、何話してんの?」
 センチアが近づくと同時に、サニーは素早く笑顔を作る。
「……いえいえ、どういたしまして」
 センチアからすれば、ワッカーサが小声でサニーにお礼を言ったように見えただろう。
「おや? センチアさん、どうしました?」
「い……や、なんでもないっしょ」
 何も怪しさを感じさせない、サニーの穏やかな笑み。不思議そうな表情のセンチアだが、肩をすくめて去って行った。

「ありゃりゃー、行っちゃった……」
「……妙な奴らだったな」
「では私たちも行きましょう。とりあえず現場監督のヤングさんに伝えますか?」
「そうだな! さっさと行って作業を手伝うとするか」
 ナガレたちも回れ右して歩いて行く。
「……ケッ」
 しかしケンガは何か引っかかっているようだ。幼馴染との再会なのに、あんまり楽しそうではない。ポケットに手を突っ込み、不機嫌そうに石ころを蹴っ飛ばしている。
「何怒ってんだよケンガ、どうしたんだ一体よぉ?」
 見かねたタネツが声をかけるも、ケンガは「……別になんも」とそっぽを向いた。
「話せば楽になるかもしんねえぞ? 言いたくないってんならこれ以上は聞かねえけど……」
「タネツ。そっとしときましょ~。機嫌悪い時って一人になりたいコトよくあるし~」
(それ、本人の前で言うの良くないんじゃねえの?)
 
「おーいアンタら! なんか遅かったね、大丈夫なのかいー⁉︎」
 遠くでヤングさんが手を振っている。ナガレたちに仕事させる気満々なのは引っかかるが、先に心配の言葉をかけるのはリーダーとして良いことだ。


~☆~☆~☆~☆~☆~


 そうしてナガレとタネツで資材運びの作業中……。
「行きまっせ! せーのっ!」
「ふんぬっ!」
 だいぶ体も慣れてきて、重い木材もしっかり持ち上げることが出来た。
「それにしてもケンガのヤツ、何をあんなにキレてたんすかね?」
「さあな~……普段見栄張ってるから、昔のことを俺らに言われたくなかったんじゃねぇの?」
「あー、なるへそ。良いセン行ってるかも……おやっ?」
 ……と言うところで、突然担いでいる木材が軽くなった。
「ありゃ? おめえまた来たのか。休んでりゃ良いのによぉ」
 タネツが誰かと話している。振り向くとそこには、先ほどのケモ耳でちょっと古めギャル娘のセンチアがいた。
「ちゃーっす。ウチも手伝ったげる。三人でやればマヂスピードで終わりっしょ!」
「おっ、サンキュー! スピード上げていこう!」
 このくらい負担が減れば、いっぱい往復できそうだ。
「ところで……えっと、チンピラ?」
「……センチアね。なに、なんか用?」
「そっか、ごめんごめん。センチアも冒険者なんだろ? ランクとか色々どうなのかなーってさ。ちなオレはCランク」
「ウチはBランクだから、ウチの勝ちぃ! てかあーしも聞きたいことあってさぁ」
「一人称コロコロ変わるなぁ。んで聞きたいことって?」
「……ナガレちゃん、本当にオトコなん?」
「………………」
「マヂこう言う男子ってなんて言うんだっけ……そーそー! 男の娘!」
 歯に衣着せぬセンチアの物言いに……ナガレは何の前触れもなく、突然木材にぶら下がった。
 ぐいっ!
「うぎゃ⁉︎」
 『豚の丸焼き』のように全体重を木材にかける。そのせいでバランスが崩れ、センチアとタネツは前にずっこけた。
「もー! ごめんジャン!」
「……俺、何もしてないのに……」
 タネツに関しては完全にとばっちりである……。

 その後ナガレが機嫌を治すのにしばらくかかったが、その間に五往復くらいした。
「マーヂごめんちナガレっちぃ。カワイイってのは女子にとって最強の褒め言葉だからさー……いやこれでもガチ謝罪よー?」
「ハイハイ、もう良いって」
 センチアもいよいよ謝罪が本気になってきたので、ナガレも許してやることにする。
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