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第二十話 崖っぷちのギルド!
禁忌の力
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その頃、タイガスでは祭りの準備の真っ最中だった。
ガタガタ……ダンダン……ガガガッ……!
「今日中に運び込むんだー!」
「このエリアではあと八十七つの屋台が立つ予定で……」
「こらっ、まだゴミが落ちてるぞ! ちゃんと掃除するんだっ」
「急いで! 日が暮れる前に花火を準備しないと!」
ワイワイガヤガヤ……。
町から少し離れたところで見ても、大きなバリケードの中から光が漏れ出して見える。作業する職人や住人、お店の店員などたくさんの人が行き来していた。そのために魔力によってあちこちで特別なランタンが吊るされ、夕暮れの街は昼間のように明るい。
「……呑気なものですねえ。お祭りもきっと楽しみでしょう。春の到来を祝うスラガン地方最大のフェスティバル、大陸全土から人が訪れる……」
キッザーニ山という、標高五百メートルほどのそこそこ高い場所。
褐色の山頂付近の崖から、一人の女性がタイガスの街を見下ろしていた。……彼女は真っ黒なローブを身に纏って、フードを目深に被っている。不気味なほど白いアルビノ肌の口元だけが見えていた。
「それに伴い、タイガスが得られる収入は計り知れない。あの冒険者ギルドも、ほとんどの維持費用がこの祭りで賄われています」
一人でブツブツ言っている、アルビノの女性。後ろに控えている黒ローブの男女は顔を見合わせた。
「……あの、ご報告がありまして」
「ええどうぞ。どうかしましたか?」
「はっ。先日ワッカーサ様がサンーダ洞窟のアジトへ到着していました。例の冒険者……ホムーランとラストハーレムズのリーダーも一緒です」
「まあ、それではついに始められますね」
女は嬉しそうに微笑んで、配下の黒ローブへ向き直った。
「はい。それで、管理の信者たちが指示を求めています。この実験においては祭司様がご指示いただけると聞いていますから」
「ええすぐに向かいます。全員生きているでしょうね? 自害なんてされたらたまったものではありません。……せっかく超優良の実験材料なのに」
「はい。ワッカーサ様はとても弱っていますがまだご存命です。ですが下の物からの報告によれば、銀の毒が心臓部位にまで回っており、持ってあと数日とのこと……」
「冒険者たちは視界を塞ぎ布を噛ませて拘束しています。必要な時だけパンを与えて延命させております」
黒ローブからの言葉で、アルビノの女性は微笑んだ。
「そうですか、分かりました。それではサンーダ洞窟へ戻り、最終準備を始めましょう。あなたたちは麓にいる信者の皆様に、撤収の指示をしてください。このアジトはもう撤収します」
「はっ!」「かしこまりました!」
信者の二人は一礼して、山道を降りていった。アルビノの女性はタイガスの街を振り返る。ここから見ても眩しいほど、光が煌めいていた。
「二日後にまた、お目にかかりましょう。……タイガス最期の日、にね……フフフッ……!」
夜の闇が迫る中、夕陽をバックに光るタイガス。それは非常に美しく、どこか恐ろしい景色だった。
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