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それはシュウにとって、悔しくもあったがうれしくもあった。周りには、男娼だからとシュウに性的なことばかり期待したり、卑猥なことを言っても平気だと思っているような人間ばかりだ。
でも、男同士は絶対に無理というわけではないなら、まだ望みはある。
「なに? ダイスケさん」
ダイスケがなにかささやき、一瞬腕に力がこもる。声があまりにかすかで、聞き取れなかった。
「……ごめん、なんでもない。映画観ようか」
どこかさみしげな笑顔が、近い。キスが欲しいと切実に思う。でも今この幸せを、自分から踏みこんだせいで壊したくなかった。
抱きしめてくれたから、もうこのぐらいはしてもいいだろうと思った。シュウはダイスケの左腕に右腕を絡め、両手でダイスケの左手を握って、子供のようにひっついて映画を観た。映画の内容はほとんど頭に入ってこなかった。ダイスケはなにも言わず、シュウのしたいようにさせてくれたが、キスはもちろん、髪をなでたりといった恋人の仕草はなにもない。
ただ黙って寄り添っている二人の前で、映画だけが饒舌に語る。そんな夜が、静かに更けていく。たぶん今日も、映画が終わればタクシーを呼ばれてしまう。
それでも、シュウは満足だった。嫌われたくないから、帰りたくないとごねるのはやめようと決めている。
こんなに不器用で臆病な自分は、知らない。これが初めて知る、本当の恋だ。
でも、男同士は絶対に無理というわけではないなら、まだ望みはある。
「なに? ダイスケさん」
ダイスケがなにかささやき、一瞬腕に力がこもる。声があまりにかすかで、聞き取れなかった。
「……ごめん、なんでもない。映画観ようか」
どこかさみしげな笑顔が、近い。キスが欲しいと切実に思う。でも今この幸せを、自分から踏みこんだせいで壊したくなかった。
抱きしめてくれたから、もうこのぐらいはしてもいいだろうと思った。シュウはダイスケの左腕に右腕を絡め、両手でダイスケの左手を握って、子供のようにひっついて映画を観た。映画の内容はほとんど頭に入ってこなかった。ダイスケはなにも言わず、シュウのしたいようにさせてくれたが、キスはもちろん、髪をなでたりといった恋人の仕草はなにもない。
ただ黙って寄り添っている二人の前で、映画だけが饒舌に語る。そんな夜が、静かに更けていく。たぶん今日も、映画が終わればタクシーを呼ばれてしまう。
それでも、シュウは満足だった。嫌われたくないから、帰りたくないとごねるのはやめようと決めている。
こんなに不器用で臆病な自分は、知らない。これが初めて知る、本当の恋だ。
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