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ダイスケはなにか言いかけて、裏口のドアが開く気配にシュウがドアにぶつからないよう、とっさに自分の方に引き寄せた。この前抱きあったのに、厨房のにおいが染みついたダイスケの白衣の胸に顔が触れて、シュウはどきりとする。
ドアを開けた人物はシュウ達には気づかず、どこかに歩いて行った。
「ありがとう。あのね、今日キヨヒトさんとレコーディングしてきたんだ」
ダイスケはシュウの左手首より少し上をつかみ、身体の距離も近いままだ。それがなんだか、シュウにはうれしかった。
「今日だったんだ、いよいよなんだね」
ダイスケの笑顔が心にしみる。少し動悸がする胸を押さえながら、シュウはうなずいた。
「うん、今日録りたてほやほやの曲、聴く?」
「えっ、いいの? ホントに?」
ネオンの明かりを浴びた、ダイスケの瞳が輝く。
「うん、正真正銘、まだなんもいじっていない録ったまんまの音源だよ」
シュウは胸を張った。キヨヒトを長年好きなダイスケの感想を聞きたい。
「そうなの? いややっぱり、そんな貴重なリリース前の音源を聴かせてもらうわけには……」
ダイスケは遠慮深すぎる。シュウは少し強引に、あとは帰るだけだというダイスケと一緒に帰り、部屋で音源を聴くことにした。五分ほどの道を、レコーディングの話をしながらダイスケと並んで歩く。
「そういや、今日カズキは?」
なにげないふりで訊いたが、カズキが帰ってこないのが一番いい。
「あ、ああ、どうなんだろう。聞いてないや」
店の残り物を適当に詰めたパックが入ったビニール袋をがさがさ言わせながら、ダイスケが部屋の鍵を開ける。今日こそは、というかすかな期待を秘めて、シュウはダイスケの後について中に入った。むわっとした熱気。部屋は真っ暗で、カズキはまだ帰ってきていないようだ。
「九月なのにまだまだあっついよねえ」
「冷凍庫にアイスあるはずだから、食べていいよ」
ダイスケが言う声と、エアコンをつける電子音が重なる。こんななんでもない会話を、ダイスケと毎日積み重ねて暮らしていけたらいいのにと、思う。
ここに来るのは何度目だろう。リビングの左側の手前がカズキ、奥がダイスケの部屋だが、結構来ているのにまだ部屋に入るどころか中をのぞいたことすらない。
「シャワー浴びてくるから、先につまんでて」
えっ、という声が出そうになった。仕事柄さんざん聞き飽きたはずの言葉が、ダイスケの口から出るだけで妙に心にどしりと来る。深い意味があるわけがない、仕事後にさっぱりしたいだけだ。分かっているのに顔が赤くなりそうだ。
ダイスケはそんなシュウに気づかず、ソファの前のテーブルへ、シュウのためにパックの中身を皿に盛ったものとワインを出すと、自室から着替えを取ってきてバスルームへ消えた。
ドアを開けた人物はシュウ達には気づかず、どこかに歩いて行った。
「ありがとう。あのね、今日キヨヒトさんとレコーディングしてきたんだ」
ダイスケはシュウの左手首より少し上をつかみ、身体の距離も近いままだ。それがなんだか、シュウにはうれしかった。
「今日だったんだ、いよいよなんだね」
ダイスケの笑顔が心にしみる。少し動悸がする胸を押さえながら、シュウはうなずいた。
「うん、今日録りたてほやほやの曲、聴く?」
「えっ、いいの? ホントに?」
ネオンの明かりを浴びた、ダイスケの瞳が輝く。
「うん、正真正銘、まだなんもいじっていない録ったまんまの音源だよ」
シュウは胸を張った。キヨヒトを長年好きなダイスケの感想を聞きたい。
「そうなの? いややっぱり、そんな貴重なリリース前の音源を聴かせてもらうわけには……」
ダイスケは遠慮深すぎる。シュウは少し強引に、あとは帰るだけだというダイスケと一緒に帰り、部屋で音源を聴くことにした。五分ほどの道を、レコーディングの話をしながらダイスケと並んで歩く。
「そういや、今日カズキは?」
なにげないふりで訊いたが、カズキが帰ってこないのが一番いい。
「あ、ああ、どうなんだろう。聞いてないや」
店の残り物を適当に詰めたパックが入ったビニール袋をがさがさ言わせながら、ダイスケが部屋の鍵を開ける。今日こそは、というかすかな期待を秘めて、シュウはダイスケの後について中に入った。むわっとした熱気。部屋は真っ暗で、カズキはまだ帰ってきていないようだ。
「九月なのにまだまだあっついよねえ」
「冷凍庫にアイスあるはずだから、食べていいよ」
ダイスケが言う声と、エアコンをつける電子音が重なる。こんななんでもない会話を、ダイスケと毎日積み重ねて暮らしていけたらいいのにと、思う。
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