この街で

天渡清華

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「好きだよ、ダイスケさん。マジ大好き」
 シュウはダイスケのぬくもりにもっと埋もれようとした。ダイスケも、そんなシュウをしっかりと包みこんでくれる。
「……これが俺の精一杯なんだ。ごめんね」
 見た目よりも力強い腕に抱きしめられながら、シュウは子供のように首を横に振る。
「いいよ、いいんだよ、俺はダイスケさんといられればそれでいいよ。よかったらこれからも、ここで一緒にメシ食ったり映画観たりしようよ」
 シュウはダイスケの胸に頭を預けながら言った。なんとなく、ダイスケの顔は見られなかった。セックスできないから歌で絡みたいと言ったキヨヒトのように、ダイスケにもきっとなにか事情があるのだろう。だからこれ以上、ダイスケが悲しげな表情でなにを語ろうとしているのか、知るのが怖かったのかも知れない。
「ねえ、残りも聴いて。ハモってる方はもっとすごいんだから」
 この歌をもっと聴いてもらって、そして少しでもダイスケの中に残ればいいと思った。一人の愛を求めるこの歌が。自分やキヨヒトの想いが。
「うん、せっかくだもんね」
 ダイスケはシュウを抱きしめたまま、ローテーブルの上のリモコンに手を伸ばし、CDを再生させた。
 さっきはただダイスケの反応を見るのが楽しみだったが、抱きあいながら歌を聴いている今は、自分の歌に泣きそうになる。本当に欲しい愛は、手に入ったようでいてそう遠くない未来に失くすことが分かっているから。
 ダイスケが、静かに泣いている。歌をきっかけに、なにかこらえていたものがあふれ出したかのように。
 シュウが指で涙を拭うと、また悲しげに微笑んで、ダイスケはシュウの肩に頭を預けた。
「本当に、いい曲だね」
 一瞬、ダイスケの仕草にキスされるのかと心臓が跳ねた。いつでも唇が奪える距離。それでもそうしないのは、ダイスケとキヨヒトぐらいだ。でも、身体を求めない愛し方もある。男娼の自分にとっては抱かれることは時にキスよりも軽く、だからこそ、手を出してこないダイスケに本気になってしまったのだろう。
「当たり前じゃん、あのタダキヨヒトが俺と歌うために本気で作ってくれた曲なんだから」
 わざとらしいほどのドヤ顔で、シュウは胸を張った。ダイスケの涙も悲しげな微笑みも、もう見たくない。
「そうだよね。あの人は、信じられる人だよ」
 涙を腕で拭いて、ダイスケが優しく笑いながらうなずく。
「うん、俺もそう思う」
「メジャーデビュー、楽しみにしてるよ」
 キスが欲しかった。このシチュエーションでもキスしてくれないのか、と正直思ってしまう。でもキスはなくても、こうして大事に思ってくれるなら、それでいい。セックスなんてなくてもいい。その代わり、少しの間くっついて眠るぐらいは許して欲しい。
「ごめん、なんか眠くなってきちゃった……」
 心の奥底に確かにある一筋のせつなさを無理やり無視して、シュウはダイスケのぬくもりに身を沈めた。
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