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ムカイはうれしそうだった。根っからこの世界の人間なのだ。
「そこを刺された。しかも、下手したら死んじまう腹をだ。示しあわせての芝居にしちゃ、やりすぎだな」
「ええ、刺したヤツはたぶんヤクでもやってたんでしょう」
これで、カズキはほぼ動きが取れなくなった。あとはダイスケだ。
「一応師弟ってことになってるんで、店長からカワカミに連絡するよう言っときました。明日にでも見舞いに連れて行って、その帰りに」
ムカイは天井を指さした。事務所の上の部屋に監禁するのだ。
「カズキは病院から消えるだろうな」
「ええ、師弟に今生の別れをさせてやりますよ。我々も鬼じゃありませんから」
二人は低く笑いあった、まだ油断はできないが、思っていたより早く、この抗争に決着がつくかも知れない。それはもうシュウを利用しなくてもいいことを意味し、ケンは内心ほっとした。
明日にはもう、監禁したダイスケをどうにでもできる。どす黒い歓びが、ケンの身体を覆った。
翌日。
「ボス! 大変です! 大変です、シュウさんが撃たれました!」
部下の一人が、血相を変えて事務所に飛びこんできた。
「なんだと!」
ケンは社長室を飛び出した。その場にいた他の部下達も一気に緊迫する。ムカイがダイスケを連れて病院に行くのに何人か若い者を連れていったせいもあり、いつもより人が少ない。
「どういうことだ、今どこにいる!?」
息を切らしている部下の肩をつかむ。部下はケンの勢いに押されながらも答えた。
「あの、ついそこで撃たれてよろよろ歩いてるところを見つけて……。今こっちに運んでいる最中です。すんません、俺もまた手伝わないと」
「バカ、外出るなら防弾チョッキ着ろ! 撃ったヤツがまだその辺にいるかも知れねえだろうが!」
すぐに出ていこうとするのを、ケンは思わず怒鳴りつけた。
「先生を呼べ! お前らは先にゲストルームの準備をしに行け、お前はシュウを裏のエレベーターでゲストルームに運ぶように伝えに行け」
ケンは部下達に早口に次々指示しながら、血管が切れそうなほどの怒りに震えていた。なぜ今シュウが撃たれたのか。どれほどの傷なのか。早く確かめたいが、ボス自ら飛び出していくわけにはいかない。
きつく唇を噛みしめて仁王立ちになっているケンのそばを、部下達がばたばたと行き交う。
「ボス、こちらに」
事務所が騒然としている中戻ってきたムカイが、ケンの姿を見るなり社長室へと連れて行く。
「座って下さい、シュウさんは大丈夫ですから」
誰よりも長くケンを見守ってきたムカイだからこそ、ケンの怒りと動揺を気遣える。社長室を出て冷えたミネラルウォーターを持ってくると、一本をケンに渡して隣に座り、自分も飲んだ。
「カワカミは、上に」
ペットボトルを強く握りしめ、ケンはうなずいた。
「心配でしょうが、先生の手当も終わってからゲストルームに行きましょう」
ムカイはケンの肩をいたわるように抱き、言い終わると励ますように肩を軽くたたいて離れた。
「そこを刺された。しかも、下手したら死んじまう腹をだ。示しあわせての芝居にしちゃ、やりすぎだな」
「ええ、刺したヤツはたぶんヤクでもやってたんでしょう」
これで、カズキはほぼ動きが取れなくなった。あとはダイスケだ。
「一応師弟ってことになってるんで、店長からカワカミに連絡するよう言っときました。明日にでも見舞いに連れて行って、その帰りに」
ムカイは天井を指さした。事務所の上の部屋に監禁するのだ。
「カズキは病院から消えるだろうな」
「ええ、師弟に今生の別れをさせてやりますよ。我々も鬼じゃありませんから」
二人は低く笑いあった、まだ油断はできないが、思っていたより早く、この抗争に決着がつくかも知れない。それはもうシュウを利用しなくてもいいことを意味し、ケンは内心ほっとした。
明日にはもう、監禁したダイスケをどうにでもできる。どす黒い歓びが、ケンの身体を覆った。
翌日。
「ボス! 大変です! 大変です、シュウさんが撃たれました!」
部下の一人が、血相を変えて事務所に飛びこんできた。
「なんだと!」
ケンは社長室を飛び出した。その場にいた他の部下達も一気に緊迫する。ムカイがダイスケを連れて病院に行くのに何人か若い者を連れていったせいもあり、いつもより人が少ない。
「どういうことだ、今どこにいる!?」
息を切らしている部下の肩をつかむ。部下はケンの勢いに押されながらも答えた。
「あの、ついそこで撃たれてよろよろ歩いてるところを見つけて……。今こっちに運んでいる最中です。すんません、俺もまた手伝わないと」
「バカ、外出るなら防弾チョッキ着ろ! 撃ったヤツがまだその辺にいるかも知れねえだろうが!」
すぐに出ていこうとするのを、ケンは思わず怒鳴りつけた。
「先生を呼べ! お前らは先にゲストルームの準備をしに行け、お前はシュウを裏のエレベーターでゲストルームに運ぶように伝えに行け」
ケンは部下達に早口に次々指示しながら、血管が切れそうなほどの怒りに震えていた。なぜ今シュウが撃たれたのか。どれほどの傷なのか。早く確かめたいが、ボス自ら飛び出していくわけにはいかない。
きつく唇を噛みしめて仁王立ちになっているケンのそばを、部下達がばたばたと行き交う。
「ボス、こちらに」
事務所が騒然としている中戻ってきたムカイが、ケンの姿を見るなり社長室へと連れて行く。
「座って下さい、シュウさんは大丈夫ですから」
誰よりも長くケンを見守ってきたムカイだからこそ、ケンの怒りと動揺を気遣える。社長室を出て冷えたミネラルウォーターを持ってくると、一本をケンに渡して隣に座り、自分も飲んだ。
「カワカミは、上に」
ペットボトルを強く握りしめ、ケンはうなずいた。
「心配でしょうが、先生の手当も終わってからゲストルームに行きましょう」
ムカイはケンの肩をいたわるように抱き、言い終わると励ますように肩を軽くたたいて離れた。
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