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第四章
その二 二
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貴之の言葉にうなずき、そろりと唇に唇を重ねて、しかけた。春が近づいて雪も解けたように、貴之の中の氷も溶けるかと思ったが、まだまだだ。だがそれを、悲しむべきではない、と思う。
十年という長い年月に、勝とうなどと思ってはならない。源次郎はなにかにつけ、逸る自分に言い聞かせる。
楽しませたい、喜んで欲しい。ただそれだけの単純さで寄り添い、時を重ねる。望み望まれてここにいる、それだけでもう充分だと思う。そうしてのんびり構えていれば、やがては寄り添い続けたぬくもりで氷もすべて溶け、春が来るだろう。
「だいぶ、上達したな」
枕行灯のわずかな明かりに、貴之の横顔が鈍く照らされる。その笑みからしたたるような色気に、息の根を止められてしまいそうだ。もう、逃れられない。逃れるつもりもない。どこまでも溺れたい。
「それに、艶っぽくなってきた。肌もすべらかで、たまらぬ」
恥ずかしさのあまり泣きそうな顔になり、いつものへらず口も出てこない。何度からかわれても慣れない源次郎を、貴之も何度でもからかう。
「では、遠慮なくいただくとしようか」
低く笑い、貴之は源次郎の帯を解く。はらりと絹が胸をすべる感覚に、源次郎の身体がかすかに跳ねる。淡い快感が背筋を走り、源次郎はなかば恍惚として貴之の頭を抱いた。
「あ、あっ……」
胸の突起を吸い、舌でなぶりながら、貴之はすでに緩く勃ちあがっているものに愛撫の手を伸ばす。優しく容赦なく、源次郎を快楽で縛めてしまう。
「んっ……、あ、ああっ、殿、とのっ……!」
甘くしびれて力が入らない指先で、源次郎は自分の下腹に顔を埋めている貴之に必死であらがう。
まただ。また、恐れ多くも殿の口中に……。
わずかに残った理性で、そんなことを思う。いくら身体がなじみあう仲になったとはいえ、この国で絶対の存在である貴之への畏敬は、忘れてはならない。
「気にするな、借りは返せばいいんだ」
貴之はいったん顔を上げ、自分の頭を押しやる両手を右手でまとめて握った。そうしておいて、限界を訴えている源次郎のそれにねっとりと舌を這わせ、わざと音をたてて先端をしゃぶる。
「との……」
虚脱した源次郎の泣き声に近いつぶやきは、貴之が源次郎の精をすすりあげるいやらしい音にかき消されてしまった。
「遠慮はいらぬと言ったはずだぞ」
口もとをぬぐいながら、貴之は笑った。子供を見るような、あたたかな視線。まるで場違いだ。情事の合間にこんな顔をされるのは、たまらない。
貴之は身を起こすと、源次郎の頬に手をかけた。こころなしか潤んだ瞳が求めているものを察して、源次郎は下へ視線を向ける。はだけた前から、膨張しきった貴之のそれがのぞいていて、いつものことながらどきりとした。
吐情したばかりの下半身がまたうずき始める。引き寄せられるように、源次郎は貴之の前へ顔を埋めた。同時に、貴之の両手が源次郎の顔をそっと包みこむ。
「無理はするな、濡らしてくれれば、それでいい」
多少うわずった声。そう言いつつもより深くくわえさせようとする動きに、源次郎も精一杯応える。下半身のうずきが高まったのを見計らったように、貴之の両手が背中を滑りだした。
気持ちがいい。うっかりすると歯を立ててしまいそうで、源次郎はうめきながらなんとかこらえる。ただ背中をなでられるだけで、びくびく身体が波打ってしまう。
「どこに触れても、感じるか」
うれしそうな声が降り、いきなり背骨に沿って、深く身体を折り曲げた貴之の舌先が肌をなぞる。
「やっ……!」
あられもない声が出た。貴之はびくりと跳ね上がる背中を押さえて、執拗に舌を這わせる。
「あ、との、もっ……、ごかんべん……」
恥ずかしさと快感に、思わず涙がこぼれる。貴之の腰にしがみついて、かすれた声で源次郎は懇願した。
「お前は、いいな」
貴之は聞く耳を持たず、源次郎の腰を乱暴に引き寄せ膝を立てさせた。
「や、やめ……っ」
「恥を捨てれば、もっといい」
貴之は目の前にさらされている源次郎の奥へ、口に含んで充分に濡らした指を差し入れた。同時に腰のあちこちに口づけたり、舌を這わせたりを繰り返す。
「快楽は、恥ではないぞ。今まで、俺に抱かれて気持ちよかったろう?」
貴之の左手が、奥を責められて勃ち上がり始めているそれを包んだ。先端からあふれているものに気づかされ、源次郎は唇を噛む。
「殿、どうか、もう……」
「なんだ、泣いているのか?」
貴之は源次郎の両肩をつかんで身体を起こすと、抱きしめた。
「すまぬ、ちとやりすぎた」
深く抱きしめられ、あやすように身体を揺らされる。腹に貴之の鋭く勃ち上がっているものが当たって、源次郎は鼻をすすりながら苦笑した。
「どうした、今度は笑って」
一転して無邪気さすら感じさせる貴之の、きょとんとした表情。生々しい情事のにおいを忘れさせるようで、源次郎はうつむいて笑みを深くした。こういうところも好きなのだ、と思う。
「なんでもござりませぬ」
甘えるように身体を寄せた途端、腰を捉えられた。二人とも身体を起こしたまま、繋ぎあわせるつもりのようだ。
「すべて、さらけ出して見せてくれ」
腰を持ち上げられ、申し訳程度に脚を開くと、貴之のそれがそこにあてがわれる。源次郎は顔を上げられず、きつく目を閉じていた。ゆっくり、貴之が入ってくる。快感が全身を侵し始める。
「ああっ、あ、あっ……!」
圧倒的な快感に、源次郎は夢中で貴之にしがみつく。
自らを源次郎の中におさめてしまうと、顔を見せてくれ、と貴之は言った。揺さぶられながら両手で顔を包まれて、源次郎は恥ずかしさに耐えながら徐々に目を開ける。
貴之は笑っていた。本当にうれしそうな笑顔で、源次郎に口づけようとする。
源次郎はようやく、貴之の思いを悟った。
すべてをさらけ出してくれ、という言葉はつまり、すべてを受け止めたいという意味なのだろう。それが貴之にとって、真に想い想われるということに違いない。
源次郎は明るく笑い返して貴之の口づけを受け、やがてともに果てた。
十年という長い年月に、勝とうなどと思ってはならない。源次郎はなにかにつけ、逸る自分に言い聞かせる。
楽しませたい、喜んで欲しい。ただそれだけの単純さで寄り添い、時を重ねる。望み望まれてここにいる、それだけでもう充分だと思う。そうしてのんびり構えていれば、やがては寄り添い続けたぬくもりで氷もすべて溶け、春が来るだろう。
「だいぶ、上達したな」
枕行灯のわずかな明かりに、貴之の横顔が鈍く照らされる。その笑みからしたたるような色気に、息の根を止められてしまいそうだ。もう、逃れられない。逃れるつもりもない。どこまでも溺れたい。
「それに、艶っぽくなってきた。肌もすべらかで、たまらぬ」
恥ずかしさのあまり泣きそうな顔になり、いつものへらず口も出てこない。何度からかわれても慣れない源次郎を、貴之も何度でもからかう。
「では、遠慮なくいただくとしようか」
低く笑い、貴之は源次郎の帯を解く。はらりと絹が胸をすべる感覚に、源次郎の身体がかすかに跳ねる。淡い快感が背筋を走り、源次郎はなかば恍惚として貴之の頭を抱いた。
「あ、あっ……」
胸の突起を吸い、舌でなぶりながら、貴之はすでに緩く勃ちあがっているものに愛撫の手を伸ばす。優しく容赦なく、源次郎を快楽で縛めてしまう。
「んっ……、あ、ああっ、殿、とのっ……!」
甘くしびれて力が入らない指先で、源次郎は自分の下腹に顔を埋めている貴之に必死であらがう。
まただ。また、恐れ多くも殿の口中に……。
わずかに残った理性で、そんなことを思う。いくら身体がなじみあう仲になったとはいえ、この国で絶対の存在である貴之への畏敬は、忘れてはならない。
「気にするな、借りは返せばいいんだ」
貴之はいったん顔を上げ、自分の頭を押しやる両手を右手でまとめて握った。そうしておいて、限界を訴えている源次郎のそれにねっとりと舌を這わせ、わざと音をたてて先端をしゃぶる。
「との……」
虚脱した源次郎の泣き声に近いつぶやきは、貴之が源次郎の精をすすりあげるいやらしい音にかき消されてしまった。
「遠慮はいらぬと言ったはずだぞ」
口もとをぬぐいながら、貴之は笑った。子供を見るような、あたたかな視線。まるで場違いだ。情事の合間にこんな顔をされるのは、たまらない。
貴之は身を起こすと、源次郎の頬に手をかけた。こころなしか潤んだ瞳が求めているものを察して、源次郎は下へ視線を向ける。はだけた前から、膨張しきった貴之のそれがのぞいていて、いつものことながらどきりとした。
吐情したばかりの下半身がまたうずき始める。引き寄せられるように、源次郎は貴之の前へ顔を埋めた。同時に、貴之の両手が源次郎の顔をそっと包みこむ。
「無理はするな、濡らしてくれれば、それでいい」
多少うわずった声。そう言いつつもより深くくわえさせようとする動きに、源次郎も精一杯応える。下半身のうずきが高まったのを見計らったように、貴之の両手が背中を滑りだした。
気持ちがいい。うっかりすると歯を立ててしまいそうで、源次郎はうめきながらなんとかこらえる。ただ背中をなでられるだけで、びくびく身体が波打ってしまう。
「どこに触れても、感じるか」
うれしそうな声が降り、いきなり背骨に沿って、深く身体を折り曲げた貴之の舌先が肌をなぞる。
「やっ……!」
あられもない声が出た。貴之はびくりと跳ね上がる背中を押さえて、執拗に舌を這わせる。
「あ、との、もっ……、ごかんべん……」
恥ずかしさと快感に、思わず涙がこぼれる。貴之の腰にしがみついて、かすれた声で源次郎は懇願した。
「お前は、いいな」
貴之は聞く耳を持たず、源次郎の腰を乱暴に引き寄せ膝を立てさせた。
「や、やめ……っ」
「恥を捨てれば、もっといい」
貴之は目の前にさらされている源次郎の奥へ、口に含んで充分に濡らした指を差し入れた。同時に腰のあちこちに口づけたり、舌を這わせたりを繰り返す。
「快楽は、恥ではないぞ。今まで、俺に抱かれて気持ちよかったろう?」
貴之の左手が、奥を責められて勃ち上がり始めているそれを包んだ。先端からあふれているものに気づかされ、源次郎は唇を噛む。
「殿、どうか、もう……」
「なんだ、泣いているのか?」
貴之は源次郎の両肩をつかんで身体を起こすと、抱きしめた。
「すまぬ、ちとやりすぎた」
深く抱きしめられ、あやすように身体を揺らされる。腹に貴之の鋭く勃ち上がっているものが当たって、源次郎は鼻をすすりながら苦笑した。
「どうした、今度は笑って」
一転して無邪気さすら感じさせる貴之の、きょとんとした表情。生々しい情事のにおいを忘れさせるようで、源次郎はうつむいて笑みを深くした。こういうところも好きなのだ、と思う。
「なんでもござりませぬ」
甘えるように身体を寄せた途端、腰を捉えられた。二人とも身体を起こしたまま、繋ぎあわせるつもりのようだ。
「すべて、さらけ出して見せてくれ」
腰を持ち上げられ、申し訳程度に脚を開くと、貴之のそれがそこにあてがわれる。源次郎は顔を上げられず、きつく目を閉じていた。ゆっくり、貴之が入ってくる。快感が全身を侵し始める。
「ああっ、あ、あっ……!」
圧倒的な快感に、源次郎は夢中で貴之にしがみつく。
自らを源次郎の中におさめてしまうと、顔を見せてくれ、と貴之は言った。揺さぶられながら両手で顔を包まれて、源次郎は恥ずかしさに耐えながら徐々に目を開ける。
貴之は笑っていた。本当にうれしそうな笑顔で、源次郎に口づけようとする。
源次郎はようやく、貴之の思いを悟った。
すべてをさらけ出してくれ、という言葉はつまり、すべてを受け止めたいという意味なのだろう。それが貴之にとって、真に想い想われるということに違いない。
源次郎は明るく笑い返して貴之の口づけを受け、やがてともに果てた。
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