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その4
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ふと目が覚めた。頭がぼやけて、一瞬朝なのか夜なのかも分からなかったが、カーテンの隙間から差しこむ光が朝を告げている。
福島は左手で目をこすった。右腕はアズマの枕になっており、動かせない。二人とも一糸まとわぬ姿で、なにもかけず身体を絡ませあっているということは、行為の最中に寝てしまったのだろう。暖房もつけっぱなしで、喉がカラカラだ。
横たわるアズマに布団をかける。ただれた朝。何度身体を繋げあったのか。こんな時にと思っても、いつもよりも動物的に欲望をぶつけあうのを止められなかった。
鼻をつく、情事の名残。べたつく肌。眠るアズマはうっすら笑みを浮かべ、口元に乾いた白いものがこびりついている。
そのかさついた唇に、やはりかさついている唇をそっと重ねる。舌で唇を割ろうとすると、唇が開いて舌が絡んできた。どきりとすると同時に遠慮はいらないと分かり、アズマの唇をむさぼる。
「止まんなくなっちゃったね」
息を弾ませながら、アズマは福島の右手を自分の最奥へと導く。すげえ、と思わず福島はうめくように言った。何度も福島を受け入れたそこは、待ち構えていたかのようにするりと指を飲みこみ、締めつける。
「さすがの俺でも、こんなに何回もヤってもまだヤりたいなんて、経験ないよ」
アズマも完全に理性のたがが外れているようだ。福島の指で自慰をするかのように腰を揺らし、つややかな吐息を漏らす。
「ねえ、これなら大丈夫だからすぐ入れてよ」
指に絡みついてくるアズマの内部に、福島は目がくらんだ。今はただ、快楽に溺れていたい。いつもどこかで冷静な自分も捨てたい。
「すぐ、はさすがに無理か」
少しかすれた、アズマの苦笑。福島の指を自分で抜くと、両脚の間にうずくまって福島のモノを口に含む。
「あっ……」
福島を舌と唇、指を使い一心に愛撫するアズマは、どんどん熱が育っていくのを楽しんでいる。目を閉じ、うっすら笑みさえ浮かべてそれに舌を這わせる表情は、乳を飲む子猫のような無垢さも持ちつつ、妖艶だ。
「もういいよ、アズマさん」
息を弾ませ、アズマの髪を撫でながら言うと、アズマはごろりと福島の隣に横になった。なまめかしい瞳で福島を見上げる。福島は枕の横にいくつか転がる空のパッケージを手で払って床に落とし、未開封のゴムをつまみ上げた。ゴムを猛っているモノにつける。その仕草をじっと見ているアズマの、熱っぽい視線。
「バックでいい?」
とことんまで動物的に求めあいたくなり、返事を待たずにアズマをうつ伏せにしてその身体を貫く。
「ああっ……!」
アズマが声を上げ、シーツを握る。難なく根元まで福島を受け入れた身体の歓喜と興奮が、福島のモノを包みこむ。強烈な快感。一瞬、涙と唾液にまみれ血走った目をしていた坂上の顔が浮かんだが、振り払った。
アズマの振り乱した髪、細い首、しなやかな背中のカーブ。小さく引き締まった尻。うっすら上気した透明感のある肌。
多くの男が魅せられ、文字通り人生を狂わせた美しく淫乱な身体。最後まで手放すことなく、食い尽くせるだろうか。
ゆっくりした動きを繰り返す福島に、アズマは刺激が足りないのか腰を揺らす。それならばと、福島はアズマの腰を両手でしっかり支え、激しく突いた。
「あっ、あ、いいっ、健介っ……!」
肌同士がぶつかりあう音。ぐずぐずになったそこがこすられる音。ベッドがきしむ。
福島は目を閉じ、アズマのあえぎや身体を繋ぎあわせる音、ぞくぞくと身体を包みこむ快感だけを感じようとした。
いい、いいと繰り返しているように聞こえるアズマの声。これまでに聞いたことがないほど快楽に堕ちた、動物的なあえぎだ。罪悪感が快感を増幅させるのか。だとしたら、二人堕ちるところまで堕ちて、情事にふける日々を過ごそうか。そんな妄想すら浮かぶ。
「あ……ダメっ、さわんないで、もっと突いて……」
福島がアズマのモノを愛撫しようとすると、アズマは後ろ手でやみくもに福島の動きを止めようとした。前にもこんなことがあった。貫かれる快感に長く溺れることが、アズマなりの愛情表現らしい。
少し無理な姿勢で福島を振り返る、アズマの横顔。涙に濡れ充血したうつろな瞳、汗や涙で顔に貼りついた髪。ぽかりと開いた唇が赤々として、福島はその中に指を突っこみたくなった。
アズマは、少し乱暴に突っこまれた指を待っていたかのようにしゃぶった。目を閉じて夢中で指を吸い、舌を絡ませるうっとりとした表情。口の動きと連動するかのように、きつく締めつけてくる熱い内部。アズマのすべてが、福島を高みへと連れて行く。
「ああ……も、無理っ……!」
福島はぐっと腰を突き上げ、アズマの内部のより深い場所で達した。同時にアズマも身体をひくつかせ、喉の奥でくぐもった声を上げて吐情する。
「……死んじまう、って思うぐらいよかった」
枕に顔を埋め、ぼんやりつぶやくアズマ。身体を繋ぎあわせたまま後ろからそっと福島が覆いかぶさってくると、顔の横に置かれた福島の手に手を重ね、ぎゅっと握った。
「生きてるから、死んじまうって思えるんだよな。って、当たり前すぎてなんなんだ、って感じだけど」
アズマがわずかに笑い、髪が福島の頬をくすぐる。なんとなくだが、福島にもアズマが言いたいことが分かるような気がした。
きのうの夕方から今まで、時にまどろみながら情事にふけった身体はさすがに汗くさく、唾液や精液のにおいも混じりあっている。これも生きている証だ。
「シャワー浴びようか」
興奮が鎮まり、二人の身体を繋いでいたモノが自然に抜けると、福島はゴムを始末しながら言った。
「うん、さすがに俺もさっぱりしたいや。シーツも替えたいし、腹も減ったし」
アズマは乱れた髪を撫でつけながら起き上がった。あちこちに体液のしみができているシーツ。ベッドの下にはティッシュやゴムのパッケージが散らかっている。ひどい有様に、福島は苦笑しながら頭をかく。アズマに言われたからか、急に空腹感が襲ってきた。
シャワーを浴び、シーツを替え、ゴミを片づける。なにより大事なのは腹ごしらえだ。それから、スマートフォンの電源を入れて現実に立ち向かおう。
病院にいる坂上と、公式サイトの告知やニュースを見てショックを受けるだろうファンのことを思うと、胸が痛む。それでも、人生を歩んで行かなければならない。
一糸まとわぬ姿のまま、アズマがベッドの脇のカーテンを開けた。光が部屋になだれこみ、白く細い裸体が光に縁取られる。
まぶしさに一瞬顔をしかめた福島は、光の中にさっきまでの情事などなかったかのような、穏やかなアズマの横顔を見た。
END
福島は左手で目をこすった。右腕はアズマの枕になっており、動かせない。二人とも一糸まとわぬ姿で、なにもかけず身体を絡ませあっているということは、行為の最中に寝てしまったのだろう。暖房もつけっぱなしで、喉がカラカラだ。
横たわるアズマに布団をかける。ただれた朝。何度身体を繋げあったのか。こんな時にと思っても、いつもよりも動物的に欲望をぶつけあうのを止められなかった。
鼻をつく、情事の名残。べたつく肌。眠るアズマはうっすら笑みを浮かべ、口元に乾いた白いものがこびりついている。
そのかさついた唇に、やはりかさついている唇をそっと重ねる。舌で唇を割ろうとすると、唇が開いて舌が絡んできた。どきりとすると同時に遠慮はいらないと分かり、アズマの唇をむさぼる。
「止まんなくなっちゃったね」
息を弾ませながら、アズマは福島の右手を自分の最奥へと導く。すげえ、と思わず福島はうめくように言った。何度も福島を受け入れたそこは、待ち構えていたかのようにするりと指を飲みこみ、締めつける。
「さすがの俺でも、こんなに何回もヤってもまだヤりたいなんて、経験ないよ」
アズマも完全に理性のたがが外れているようだ。福島の指で自慰をするかのように腰を揺らし、つややかな吐息を漏らす。
「ねえ、これなら大丈夫だからすぐ入れてよ」
指に絡みついてくるアズマの内部に、福島は目がくらんだ。今はただ、快楽に溺れていたい。いつもどこかで冷静な自分も捨てたい。
「すぐ、はさすがに無理か」
少しかすれた、アズマの苦笑。福島の指を自分で抜くと、両脚の間にうずくまって福島のモノを口に含む。
「あっ……」
福島を舌と唇、指を使い一心に愛撫するアズマは、どんどん熱が育っていくのを楽しんでいる。目を閉じ、うっすら笑みさえ浮かべてそれに舌を這わせる表情は、乳を飲む子猫のような無垢さも持ちつつ、妖艶だ。
「もういいよ、アズマさん」
息を弾ませ、アズマの髪を撫でながら言うと、アズマはごろりと福島の隣に横になった。なまめかしい瞳で福島を見上げる。福島は枕の横にいくつか転がる空のパッケージを手で払って床に落とし、未開封のゴムをつまみ上げた。ゴムを猛っているモノにつける。その仕草をじっと見ているアズマの、熱っぽい視線。
「バックでいい?」
とことんまで動物的に求めあいたくなり、返事を待たずにアズマをうつ伏せにしてその身体を貫く。
「ああっ……!」
アズマが声を上げ、シーツを握る。難なく根元まで福島を受け入れた身体の歓喜と興奮が、福島のモノを包みこむ。強烈な快感。一瞬、涙と唾液にまみれ血走った目をしていた坂上の顔が浮かんだが、振り払った。
アズマの振り乱した髪、細い首、しなやかな背中のカーブ。小さく引き締まった尻。うっすら上気した透明感のある肌。
多くの男が魅せられ、文字通り人生を狂わせた美しく淫乱な身体。最後まで手放すことなく、食い尽くせるだろうか。
ゆっくりした動きを繰り返す福島に、アズマは刺激が足りないのか腰を揺らす。それならばと、福島はアズマの腰を両手でしっかり支え、激しく突いた。
「あっ、あ、いいっ、健介っ……!」
肌同士がぶつかりあう音。ぐずぐずになったそこがこすられる音。ベッドがきしむ。
福島は目を閉じ、アズマのあえぎや身体を繋ぎあわせる音、ぞくぞくと身体を包みこむ快感だけを感じようとした。
いい、いいと繰り返しているように聞こえるアズマの声。これまでに聞いたことがないほど快楽に堕ちた、動物的なあえぎだ。罪悪感が快感を増幅させるのか。だとしたら、二人堕ちるところまで堕ちて、情事にふける日々を過ごそうか。そんな妄想すら浮かぶ。
「あ……ダメっ、さわんないで、もっと突いて……」
福島がアズマのモノを愛撫しようとすると、アズマは後ろ手でやみくもに福島の動きを止めようとした。前にもこんなことがあった。貫かれる快感に長く溺れることが、アズマなりの愛情表現らしい。
少し無理な姿勢で福島を振り返る、アズマの横顔。涙に濡れ充血したうつろな瞳、汗や涙で顔に貼りついた髪。ぽかりと開いた唇が赤々として、福島はその中に指を突っこみたくなった。
アズマは、少し乱暴に突っこまれた指を待っていたかのようにしゃぶった。目を閉じて夢中で指を吸い、舌を絡ませるうっとりとした表情。口の動きと連動するかのように、きつく締めつけてくる熱い内部。アズマのすべてが、福島を高みへと連れて行く。
「ああ……も、無理っ……!」
福島はぐっと腰を突き上げ、アズマの内部のより深い場所で達した。同時にアズマも身体をひくつかせ、喉の奥でくぐもった声を上げて吐情する。
「……死んじまう、って思うぐらいよかった」
枕に顔を埋め、ぼんやりつぶやくアズマ。身体を繋ぎあわせたまま後ろからそっと福島が覆いかぶさってくると、顔の横に置かれた福島の手に手を重ね、ぎゅっと握った。
「生きてるから、死んじまうって思えるんだよな。って、当たり前すぎてなんなんだ、って感じだけど」
アズマがわずかに笑い、髪が福島の頬をくすぐる。なんとなくだが、福島にもアズマが言いたいことが分かるような気がした。
きのうの夕方から今まで、時にまどろみながら情事にふけった身体はさすがに汗くさく、唾液や精液のにおいも混じりあっている。これも生きている証だ。
「シャワー浴びようか」
興奮が鎮まり、二人の身体を繋いでいたモノが自然に抜けると、福島はゴムを始末しながら言った。
「うん、さすがに俺もさっぱりしたいや。シーツも替えたいし、腹も減ったし」
アズマは乱れた髪を撫でつけながら起き上がった。あちこちに体液のしみができているシーツ。ベッドの下にはティッシュやゴムのパッケージが散らかっている。ひどい有様に、福島は苦笑しながら頭をかく。アズマに言われたからか、急に空腹感が襲ってきた。
シャワーを浴び、シーツを替え、ゴミを片づける。なにより大事なのは腹ごしらえだ。それから、スマートフォンの電源を入れて現実に立ち向かおう。
病院にいる坂上と、公式サイトの告知やニュースを見てショックを受けるだろうファンのことを思うと、胸が痛む。それでも、人生を歩んで行かなければならない。
一糸まとわぬ姿のまま、アズマがベッドの脇のカーテンを開けた。光が部屋になだれこみ、白く細い裸体が光に縁取られる。
まぶしさに一瞬顔をしかめた福島は、光の中にさっきまでの情事などなかったかのような、穏やかなアズマの横顔を見た。
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