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王子さまはごちそう?
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小さな王子さまの巻き起こす騒動がどんな感じなのかが分かる、とあるできごとをお話しましょう。
ある日のことでした。冥王さまの狩猟の旅に、王子さまもついていくことになりました。
魔獣がたくさん暮らしている野原で、狩猟大会が催されるのです。
冥王さまは今回も、王宮から選りすぐりの魔族の騎士たちをつれて行きます。
それ以外にも、冥界のほうぼうから有力な魔族の氏長たちが呼び集められて、楽しい狩り大会が開かれました。
狩猟大会の開かれるところは、冥界の中でもとりわけ景色のよい場所です。河が流れ、岩山があり、いろいろな植物が生えていました。そこは魔獣界と呼ばれる、地底にひろがる平原でした。
広い野原に、冥王さまのための本陣が設えられました。
獣のなめし皮でつくられた野営用の天幕が設置され、薪ストーブが焚かれ、王さまが狩りの様子を見学できるよう、天幕の一部は野原に向けて開け放たれていました。
中央の指揮卓には地形図が広げられ、りっぱな鎖かたびらを着た騎士たちが次々に出入りして、冥王さまと何か打ち合わせをしています。
王子さまはまだ小さく狩りには参加できないので、おとなしく椅子にすわって足をブラブラさせていました。けれどもだんだんとその場所にいるのに飽きてきました。だって、小動物ですら草むらを自由に跳ねまわっているのに、自分だけは「天幕から出てはいけない」と言われていたからです。せっかく久しぶりに冥王宮のお外に出たのに、ずっと天幕の中で見学なんて、つまらなすぎます。
王子さまのご機嫌をとろうと、死の精霊たちがふわふわ目の前で踊りましたが、それらがフワフワ浮遊しているのはいつものことですし、たいした慰めにはなりません。王子さまは天幕のお外で遊びたかったのです。
そのうちに冥王さまは騎士たちに呼ばれ、天幕をほんの少し離れました。お父さまは黒い天馬にまたがり、
「ナシェルや、すぐ戻るから、おりこうさんにしているんだよ」
と言って馬を走らせていってしまいました。
お父さまのお姿が遠目でも見られればよかったのですが、あいにくとすぐに見失ってしまいました。王さまは広い狩場のどこにいるやら、平原の向こうで土煙があがるばかりで、そのお姿はどこにも探せません。
おとなたちの遊びについてきたのだから仕方ないのですが、子どもにしてみたらカヤの外みたいで、こんなつまらないことってありませんよね。
「何かないかなぁ……」
天幕の中でうろうろしていると、不意に入口とは反対側の天幕の一部がぱたぱたと動きました。天幕はところどころ掛け杭で地面に固定されているので、ちょっとしか開きませんでしたけども。
だれかの指先がのぞいて、つんつんとカーペットをつつきました。
「おーい、ナシェル? いるか?」
天幕の外の地べたから聞こえるその声は、乳兄弟で友だちのヴァニオンでした。
彼のお母さんは王子さまの乳母殿です。そして彼のお父さんは、冥王さまに最初に従った九人の魔族のひとりです。冥王さまにもっとも近い臣下として、この狩猟大会にも参加しています。
「ヴァニオン。そんなところで何してるの?」
王子さまは驚いて天幕のカーテンを持ち上げようとしましたが、固定杭がひっかかって開きません。
「父さんに黙ってついてきたんだ」
「どうやって?」
「天幕の収納箱に潜り込んで隠れてきたのさ。中に入れてくれよぅ~」
王子さまは、入口のほうを見ました。入口には騎士がふたり立っています。
「待って、ぼくがそっちにいく」
王子さまは用を足したいと兵士に言って、天幕の外へ出ました。天幕の横側に回ってゴソゴソと、半ズボンを下げるそぶりをしていると、騎士がこちらを見張っているのに気づきました。
「はずかしいから、あっち向いてて!」
「あっすみません、王子殿下」
騎士が慌てて向こうへ向き直り、直立不動の体勢をとると、その間に王子さまはサッと、騎士から見えない天幕の裏側まで回りました。
小さな王子さまの巻き起こす騒動がどんな感じなのかが分かる、とあるできごとをお話しましょう。
ある日のことでした。冥王さまの狩猟の旅に、王子さまもついていくことになりました。
魔獣がたくさん暮らしている野原で、狩猟大会が催されるのです。
冥王さまは今回も、王宮から選りすぐりの魔族の騎士たちをつれて行きます。
それ以外にも、冥界のほうぼうから有力な魔族の氏長たちが呼び集められて、楽しい狩り大会が開かれました。
狩猟大会の開かれるところは、冥界の中でもとりわけ景色のよい場所です。河が流れ、岩山があり、いろいろな植物が生えていました。そこは魔獣界と呼ばれる、地底にひろがる平原でした。
広い野原に、冥王さまのための本陣が設えられました。
獣のなめし皮でつくられた野営用の天幕が設置され、薪ストーブが焚かれ、王さまが狩りの様子を見学できるよう、天幕の一部は野原に向けて開け放たれていました。
中央の指揮卓には地形図が広げられ、りっぱな鎖かたびらを着た騎士たちが次々に出入りして、冥王さまと何か打ち合わせをしています。
王子さまはまだ小さく狩りには参加できないので、おとなしく椅子にすわって足をブラブラさせていました。けれどもだんだんとその場所にいるのに飽きてきました。だって、小動物ですら草むらを自由に跳ねまわっているのに、自分だけは「天幕から出てはいけない」と言われていたからです。せっかく久しぶりに冥王宮のお外に出たのに、ずっと天幕の中で見学なんて、つまらなすぎます。
王子さまのご機嫌をとろうと、死の精霊たちがふわふわ目の前で踊りましたが、それらがフワフワ浮遊しているのはいつものことですし、たいした慰めにはなりません。王子さまは天幕のお外で遊びたかったのです。
そのうちに冥王さまは騎士たちに呼ばれ、天幕をほんの少し離れました。お父さまは黒い天馬にまたがり、
「ナシェルや、すぐ戻るから、おりこうさんにしているんだよ」
と言って馬を走らせていってしまいました。
お父さまのお姿が遠目でも見られればよかったのですが、あいにくとすぐに見失ってしまいました。王さまは広い狩場のどこにいるやら、平原の向こうで土煙があがるばかりで、そのお姿はどこにも探せません。
おとなたちの遊びについてきたのだから仕方ないのですが、子どもにしてみたらカヤの外みたいで、こんなつまらないことってありませんよね。
「何かないかなぁ……」
天幕の中でうろうろしていると、不意に入口とは反対側の天幕の一部がぱたぱたと動きました。天幕はところどころ掛け杭で地面に固定されているので、ちょっとしか開きませんでしたけども。
だれかの指先がのぞいて、つんつんとカーペットをつつきました。
「おーい、ナシェル? いるか?」
天幕の外の地べたから聞こえるその声は、乳兄弟で友だちのヴァニオンでした。
彼のお母さんは王子さまの乳母殿です。そして彼のお父さんは、冥王さまに最初に従った九人の魔族のひとりです。冥王さまにもっとも近い臣下として、この狩猟大会にも参加しています。
「ヴァニオン。そんなところで何してるの?」
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「どうやって?」
「天幕の収納箱に潜り込んで隠れてきたのさ。中に入れてくれよぅ~」
王子さまは、入口のほうを見ました。入口には騎士がふたり立っています。
「待って、ぼくがそっちにいく」
王子さまは用を足したいと兵士に言って、天幕の外へ出ました。天幕の横側に回ってゴソゴソと、半ズボンを下げるそぶりをしていると、騎士がこちらを見張っているのに気づきました。
「はずかしいから、あっち向いてて!」
「あっすみません、王子殿下」
騎士が慌てて向こうへ向き直り、直立不動の体勢をとると、その間に王子さまはサッと、騎士から見えない天幕の裏側まで回りました。
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