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矮人族のこと
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気を失っている王子さまを見つけたのは、矮人族の少年アルヴィスでした。
彼とその一族は、魔獣界から腐樹界あたりの地中に、アリの巣のように張り巡らされた横穴式住居に暮らしていました。
穴ウサギが罠にかかるとぴんと張られたロープが揺れて鈴が鳴り、少年に伝わるしくみでした。あるとき鈴が激しく鳴ったので穴ウサギが掛かったと思い行ってみると、罠にかかっていたのは(というより、ワナを盛大にこわして倒れていたのは)、王子さまだったというわけです。
「魔族だ!」
倒れている子どもを見つけた矮人族のアルヴィス少年はいまいましげにつぶやきました。闇の神さまとティアーナ女神さまを父母に持つ王子さまは、神族の子どもであって魔族ではないのですが、アルヴィス少年は神さまの子なんて見たことがないので、魔族の子どもと間違えたのは無理もありません。
それではなぜ、にがい顔になったのかといいますと、矮人族は昔から魔族とはあまり折り合いが良くないからです。
矮人族に言わせますと、魔族は地中深くにあるきれいな鉱物を常に狙っていて、矮人族のなわばりから勝手に採掘していくからです。そのあたり一帯の地下は、すべて矮人族の誰かが所有する地下迷宮でしたから、断りもなく鉱物を採掘されてはたまりません。ですから矮人族は、鉱石を掘りに来る魔族のことを「ぬすっと」だといっていつも怒っていました。
でも魔族たちに言わせますと、そこらの土地の表面は元々魔族のなわばりでした。かつ冥王さまが治めるようになってからは、すべて冥王さまが魔族たちに分配したれっきとした所領ですから、その土地を掘って鉱物が出てきたら、それは自分たちのものなのです。矮人族のほうが勝手にあとから、自分たちの家の下にまでモグラのようにトンネルを掘り進めてきている、ということなのです。
まあ、どちらの言い分もそれっぽくて、どちらが先かなどは判断がつきませんから、冥王さまもこれまで裁可をうやむやにしていたのでした。魔族ばかり贔屓するわけにも行きませんし、かといって小部族ばかりを保護して、一の子分である魔族たちをないがしろにするわけにも行きませんでしたからね。
ときおり魔族たちが地下の鉱石を掘ろうとし、矮人族の坑道に迷いこんでしまったり、かれらのトンネルを崩してしまう、という事故も起きました。家をこわした場合は弁済して解決することもありましたが、鉱石を見つけた場合には闘いとなり、魔族がそのまま行方知れずとなり帰ってこなかった例もあります。……矮人族は、手先の器用な職人であると同時に、とても頑固で屈強な戦士でもありました。
もちろん矮人族にとって魔族は昨今、工芸品を買ってくれるお客さんでもあります。でも腹の内では、計算高い魔族たちのことをつねに警戒していました。それに矮人族は成人しても背が低いので、長身の魔族たちに下に見られていました。矮人族はそのことを怒っているので、自分たちのなわばりに入ってきた魔族には容赦しないのです。
「また魔族のやつらが、おれたちの鉱石をぬすみにきたんだな!」
つるはしを担いだアルヴィス少年は、穴ウサギのわなを壊して落ちてきた王子さまを見下ろしました。細くて白い手足をした男の子。おとなの魔族にしては小さいので、きっと子どもの魔族だろうと見当をつけました。歳は自分より上か下か、よくわかりません。
天井部を見上げると家の出入り口には大穴があいています。
魔族ってのは意外とおっちょこちょいだなあ、と思いながら、アルヴィス少年はあらためて倒れている男の子をよく観察しました。
男の子はとても愛らしい顔立ちをしています。魔族の子どもなど、かわいいと思ったことはないのですが、不思議とその子の顔立ちは、矮人族のアルヴィスにも魅力的にみえました。これは神さまの持つ種族的優生の一種で、生まれつき彼らは他種族よりも優れた造形になっているのです。
なかでも、闇の神さまとティアーナ女神さまの子である王子さまは格段にお美しい御子でした。
彼とその一族は、魔獣界から腐樹界あたりの地中に、アリの巣のように張り巡らされた横穴式住居に暮らしていました。
穴ウサギが罠にかかるとぴんと張られたロープが揺れて鈴が鳴り、少年に伝わるしくみでした。あるとき鈴が激しく鳴ったので穴ウサギが掛かったと思い行ってみると、罠にかかっていたのは(というより、ワナを盛大にこわして倒れていたのは)、王子さまだったというわけです。
「魔族だ!」
倒れている子どもを見つけた矮人族のアルヴィス少年はいまいましげにつぶやきました。闇の神さまとティアーナ女神さまを父母に持つ王子さまは、神族の子どもであって魔族ではないのですが、アルヴィス少年は神さまの子なんて見たことがないので、魔族の子どもと間違えたのは無理もありません。
それではなぜ、にがい顔になったのかといいますと、矮人族は昔から魔族とはあまり折り合いが良くないからです。
矮人族に言わせますと、魔族は地中深くにあるきれいな鉱物を常に狙っていて、矮人族のなわばりから勝手に採掘していくからです。そのあたり一帯の地下は、すべて矮人族の誰かが所有する地下迷宮でしたから、断りもなく鉱物を採掘されてはたまりません。ですから矮人族は、鉱石を掘りに来る魔族のことを「ぬすっと」だといっていつも怒っていました。
でも魔族たちに言わせますと、そこらの土地の表面は元々魔族のなわばりでした。かつ冥王さまが治めるようになってからは、すべて冥王さまが魔族たちに分配したれっきとした所領ですから、その土地を掘って鉱物が出てきたら、それは自分たちのものなのです。矮人族のほうが勝手にあとから、自分たちの家の下にまでモグラのようにトンネルを掘り進めてきている、ということなのです。
まあ、どちらの言い分もそれっぽくて、どちらが先かなどは判断がつきませんから、冥王さまもこれまで裁可をうやむやにしていたのでした。魔族ばかり贔屓するわけにも行きませんし、かといって小部族ばかりを保護して、一の子分である魔族たちをないがしろにするわけにも行きませんでしたからね。
ときおり魔族たちが地下の鉱石を掘ろうとし、矮人族の坑道に迷いこんでしまったり、かれらのトンネルを崩してしまう、という事故も起きました。家をこわした場合は弁済して解決することもありましたが、鉱石を見つけた場合には闘いとなり、魔族がそのまま行方知れずとなり帰ってこなかった例もあります。……矮人族は、手先の器用な職人であると同時に、とても頑固で屈強な戦士でもありました。
もちろん矮人族にとって魔族は昨今、工芸品を買ってくれるお客さんでもあります。でも腹の内では、計算高い魔族たちのことをつねに警戒していました。それに矮人族は成人しても背が低いので、長身の魔族たちに下に見られていました。矮人族はそのことを怒っているので、自分たちのなわばりに入ってきた魔族には容赦しないのです。
「また魔族のやつらが、おれたちの鉱石をぬすみにきたんだな!」
つるはしを担いだアルヴィス少年は、穴ウサギのわなを壊して落ちてきた王子さまを見下ろしました。細くて白い手足をした男の子。おとなの魔族にしては小さいので、きっと子どもの魔族だろうと見当をつけました。歳は自分より上か下か、よくわかりません。
天井部を見上げると家の出入り口には大穴があいています。
魔族ってのは意外とおっちょこちょいだなあ、と思いながら、アルヴィス少年はあらためて倒れている男の子をよく観察しました。
男の子はとても愛らしい顔立ちをしています。魔族の子どもなど、かわいいと思ったことはないのですが、不思議とその子の顔立ちは、矮人族のアルヴィスにも魅力的にみえました。これは神さまの持つ種族的優生の一種で、生まれつき彼らは他種族よりも優れた造形になっているのです。
なかでも、闇の神さまとティアーナ女神さまの子である王子さまは格段にお美しい御子でした。
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