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矮人族のこと
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丸一日ほど経って、ようやく魔族の子供は目を覚ましました。キョロキョロとあたりを不思議そうに見渡して、自分がとても小さい、わらのベッドに寝かされていることに気づいたようです。
「うぅ……ここは……どこ?」
「ここはおれっちの部屋だ」
「! きみはだれ?」
こちらを見る眼に警戒感をにじませながら、魔族の子はたずねました。
その子は肩までの黒髪で(黒髪自体は、魔族としてはありふれています)、藍色の宝石のような瞳をしていました。吸い込まれそうに深い蒼色です。闇色にも近い、とても濃い青で、瞳の奥底には賢そうなきらめきがありました。まるで純度の高いラピスラズリの鉱石を溶かし込んだようでした。
そんなにも綺麗な深い青は、生まれてこのかた見るのが初めてでしたから、アルヴィスは男の子の瞳にくぎづけになってしまいました。
しばらく吸い込まれたようにその子の顔を見つめてしまってから、アルヴィスは我に返りました。
「お……おいらはアルヴィス。矮人族のアルヴィスだ。お前、おいらんちの穴ウサギのわなに引っかかって、落ちてきたんだ。だからここへ運んだんだぜ」
「ドヴェルグ族……アル……」
「そう。アルヴィス。鍛冶屋のベンツァーの子だ。この地下坑廊には百年前ぐらいから住んでる。お前の名前はなんていうんだ?」
「ぼくは、ナシェル。きみが助けてくれたの? ありがとう、アルヴィス」
王子さまはぺこりと素直に頭を下げました。
「お前、魔族だよな?」
「え、どうして?」
「伯母さんが、お前を見て魔族じゃない感じがするって」
「ぼく、魔族だよ」
王子さまはそう言った方がいいと思い、ごまかしてそう答えました。
「あの、冥府とかいうデッカい都からきたのか?」
「そうだよ。父上たちの狩りについてきて……」
話の途中で王子さまは急に、何かを思い出したように息を止めました。
「たいへんだ! ヴァニオンは?」
「ヴァニオン?」
「友だち。一緒に森で迷って……こうしちゃいられない。戻らなきゃ!」
あわてて起き上がろうとして、王子さまはゴロンとベッドから転がり落ちました。まだ体がいうことをきかないのです。
「大丈夫か? 何をそんなに急いでんだ」
「友だちと、森ではぐれちゃったんだ。ぼくといっしょぐらいの、魔族の子だよ」
「腐樹界の森か? お前ぐらいの子ども? そりゃ悪いけど、もう食人花に食われちゃってるだろうさ」
「そんな……」
王子さまは真っ青になりましたが、すぐにぶんぶんと首を左右にふりました。
「ヴァニオンはそんなに弱くない。ちゃんと剣も持ってる」
ただヴァニオンは、妖しい花たちの出す花粉を吸って眠ってしまっていました。無抵抗なら、すぐに食べられてしまいそうです。王子さまは心配のあまり、胸がぎゅっとしめつけられるような苦しさをおぼえました。ヴァニオンは本当の兄弟といってもいいぐらい、いつも一緒にいた親友なのです。
「助けにいかなきゃ!」
王子さまのけんまくにアルヴィスは圧されぎみです。
「本気か? どうやって? 食人花には、そこらのふつうの剣は効かないんだぜ」
「ぼくの短剣でもだめかな? 父上がくれ……」
といいかけて、王子さまは口をつぐみました。魔族の子のふりをするなら、冥王さまのことは話さない方がいいようです。
王子さまは自分の短剣をたしかめようと腰に手をやり、声を上げました。
「――! ぼくの短剣がない!」
「ええっ?」
「あのときだ。転んで、穴に落ちたときに、落としたんだ」
王子さまは喉からこみあげるものをぐっとこらえました。泣きだしている場合ではありません。
短剣を取り戻して、一刻も早くヴァニオンを助けにいかなければ。
「うぅ……ここは……どこ?」
「ここはおれっちの部屋だ」
「! きみはだれ?」
こちらを見る眼に警戒感をにじませながら、魔族の子はたずねました。
その子は肩までの黒髪で(黒髪自体は、魔族としてはありふれています)、藍色の宝石のような瞳をしていました。吸い込まれそうに深い蒼色です。闇色にも近い、とても濃い青で、瞳の奥底には賢そうなきらめきがありました。まるで純度の高いラピスラズリの鉱石を溶かし込んだようでした。
そんなにも綺麗な深い青は、生まれてこのかた見るのが初めてでしたから、アルヴィスは男の子の瞳にくぎづけになってしまいました。
しばらく吸い込まれたようにその子の顔を見つめてしまってから、アルヴィスは我に返りました。
「お……おいらはアルヴィス。矮人族のアルヴィスだ。お前、おいらんちの穴ウサギのわなに引っかかって、落ちてきたんだ。だからここへ運んだんだぜ」
「ドヴェルグ族……アル……」
「そう。アルヴィス。鍛冶屋のベンツァーの子だ。この地下坑廊には百年前ぐらいから住んでる。お前の名前はなんていうんだ?」
「ぼくは、ナシェル。きみが助けてくれたの? ありがとう、アルヴィス」
王子さまはぺこりと素直に頭を下げました。
「お前、魔族だよな?」
「え、どうして?」
「伯母さんが、お前を見て魔族じゃない感じがするって」
「ぼく、魔族だよ」
王子さまはそう言った方がいいと思い、ごまかしてそう答えました。
「あの、冥府とかいうデッカい都からきたのか?」
「そうだよ。父上たちの狩りについてきて……」
話の途中で王子さまは急に、何かを思い出したように息を止めました。
「たいへんだ! ヴァニオンは?」
「ヴァニオン?」
「友だち。一緒に森で迷って……こうしちゃいられない。戻らなきゃ!」
あわてて起き上がろうとして、王子さまはゴロンとベッドから転がり落ちました。まだ体がいうことをきかないのです。
「大丈夫か? 何をそんなに急いでんだ」
「友だちと、森ではぐれちゃったんだ。ぼくといっしょぐらいの、魔族の子だよ」
「腐樹界の森か? お前ぐらいの子ども? そりゃ悪いけど、もう食人花に食われちゃってるだろうさ」
「そんな……」
王子さまは真っ青になりましたが、すぐにぶんぶんと首を左右にふりました。
「ヴァニオンはそんなに弱くない。ちゃんと剣も持ってる」
ただヴァニオンは、妖しい花たちの出す花粉を吸って眠ってしまっていました。無抵抗なら、すぐに食べられてしまいそうです。王子さまは心配のあまり、胸がぎゅっとしめつけられるような苦しさをおぼえました。ヴァニオンは本当の兄弟といってもいいぐらい、いつも一緒にいた親友なのです。
「助けにいかなきゃ!」
王子さまのけんまくにアルヴィスは圧されぎみです。
「本気か? どうやって? 食人花には、そこらのふつうの剣は効かないんだぜ」
「ぼくの短剣でもだめかな? 父上がくれ……」
といいかけて、王子さまは口をつぐみました。魔族の子のふりをするなら、冥王さまのことは話さない方がいいようです。
王子さまは自分の短剣をたしかめようと腰に手をやり、声を上げました。
「――! ぼくの短剣がない!」
「ええっ?」
「あのときだ。転んで、穴に落ちたときに、落としたんだ」
王子さまは喉からこみあげるものをぐっとこらえました。泣きだしている場合ではありません。
短剣を取り戻して、一刻も早くヴァニオンを助けにいかなければ。
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