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恋する笑顔に恋をした(5)
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愛しかった。
ただ、単純に……腕の中にあるこのぬくもりを、手離したくないと思った。
俺のために伸ばしていると言った髪の柔らかさ、手のひらに収まる肩の丸さ、重ね合う唇の甘さ……そんな彼女のひとつひとつを、ひたすらに愛しいと思った。
いつの間に、こんなに夢中にさせられてしまったのか、自分でもわからない。
初めて彼女を抱いたあの夜から、……いや、もしかすると、雨の中にうずくまる彼女を目にした瞬間から、文字通り、俺は恋に落ちたのかも知れない。
「……蒼?」
小さく笑いを洩らすと、彼女が怪訝そうな顔を上げた。
「ああ、ごめん、思い出し笑い……初めて会った夜、藍、ずぶ濡れだったろ? 風邪ひくよって声かけたら、泣いていたからビックリした。その様子が、なんかすごく寂しそうで、捨て猫みたいだって思ったんだ」
それを聞いて、彼女は恥ずかしそうに俯いた。
「あたし、そんなにみすぼらしかったかな……」
せっかく蒼に会えるならもっと可愛くしていたかったよ、と今さらそれを悔やむような言い方をする。
「いいじゃない、そのおかげで出会えたんだから、俺たちは」
「うん……でも、本当にこれで良かったと思う?」
「良かったもなにも、これって運命だから」
彼女の手を取り、指を絡め合わせる。
「そうだろ?」
彼女は自分の手をじっと見て、それから微かに首を振った。
「だけどね、あたし、……蒼に後悔させたくないの」
「後悔なんてするわけない、だって俺……」
藍のこと、好きだから。
言いながら強く抱きしめると、彼女は、やっと安心したように溜息を吐いた。
俺は、藍が好きだ。
その言葉を口にする度に、俺の心の中では何かが形成されていく。
それはもちろん、目には見えないし、手で触れることもできない。
だけど、俺はそれをしっかりと感じることができる。
今までどうして気づけなかったのだろうと呆れるくらい、溢れ出して止まらない想い。
「なんか……怖くなっちゃうね」
「うん?」
「幸せすぎて……」
「それは、俺だって同じかも」
寄り添う彼女の顎を支えて上向かせる。
いつも潤んだような彼女の瞳が、今夜はいっそう煌いて見えた。
「あたしも、好き……大好きだよ、蒼……」
そう言って、唇を押し付けてきたのは、彼女の方。
これまでも、口づければ応えてはくれたけど、こんな風に、彼女から求めてくるなんて初めてのことだ。
けれど、こういったことにまだ慣れてはいないのだろう、ぎこちなく口中を探る舌が、拙くて焦れったい。
堪らず、こっちからも舌を絡め、ついでに歯の裏辺りを擽ってやると、彼女は甘えた鼻声を洩らして、俺のシャツをぎゅうと握り締めた。
そのまま、ソファに押し倒し、ブラウスのボタンに手をかける。
「待って、……ここじゃ、や……」
「ベッドまで我慢できないよ、藍が可愛いから」
実際、俺の部屋はワンルームで、リビングスペースとして使っているここから、窓際にあるベッドまで、たいして離れちゃいない。
それなのに、そんな距離すらもどかしく感じるほど、今は彼女が欲しかった。
「んぅ、蒼……あ、」
激しいキスを浴びせながら、手早く彼女の服を脱がせていく。
明るい蛍光灯の下で、彼女は少し躊躇うような素振りを見せたけれど、俺は敢えてそれを消そうとはしなかった。
口づけを続けるうちに、彼女の息が少し荒くなり、乳房に置かれた俺の手の中で、先端の蕾がつんと勃ち上がる。
「ふふ……キスだけで感じちゃったの」
すっかり硬くなったソレを指先で軽くつまみ、意地悪く尋ねる。
「あ、…やだ、違……」
耳までを真っ赤に染め、身を捩って逃げようとするのを、抱きしめて引き止めた。
「何を恥ずかしがってるの、唇だって性感帯なんだし、感じちゃってもちっとも変じゃないよ」
「……そ、なの?」
「キスだって立派な前戯なんだよ、その証拠に、藍だってえっちな気分になったろ?」
「う、うん……なんかね、キスしながら、お腹の奥の方がきゅんとしたの」
「じゃあ、ココも濡れちゃったかな?」
最後の1枚で覆われたソコに手を伸ばすと、彼女は慌てて腿を閉じた。
そんな彼女ににやりと笑いかけておいて、強引に手のひらをこじ入れる。
布地の奥には、すでに潤んだ感触があった。
「思った通りだ、ほら、もう……」
ぬるぬるだよ、とわざと耳元で囁く。
耳が弱いのと、あからさまなことを言われたのとで、彼女はさらに赤くなる。
その様子があんまり可愛くて思わず突っ走りそうになるのを、辛うじて自制した。
「藍は、俺とこうして抱き合うの、嬉しくない?」
「う、嬉しいよ、そんなの当たり前でしょ」
「だったら、蒼とえっちしたい、蒼に気持ちよくして欲しいって、思う?」
「そんな、……恥ずかしくて、答えられない」
その答え自体が、その通りと白状しているようなものだけど、俺はちゃんと、彼女の口から聞きたかった。
「女の子にも性欲があって当然だし、好きな相手と抱き合いたい、身体を繋げたいって思うのも、自然な気持ちの流れだよ。そんなのちっともいやらしくないし、その気持ちを無理に抑えつける方がよっぽど屈折してる」
「でも、えっちに積極的な女の子って、淫乱だとか言われるじゃん……」
「それは、自分に接点のない子とか、そうされたら鬱陶しいと思ってる子について。好きな女の子とえっちしたくない男なんて、いやしないんだから」
彼女は、まだ半信半疑の顔で、俺を見つめる。
「蒼、も……?」
「うん。俺も、藍にはもっともっとえっちになって欲しいなって思うよ。すごい乱れて我を忘れる姿とか、見てみたい。もちろん、相手は俺限定って意味だけどね」
すると、彼女は少し考える風をしてから、おずおずと切り出した。
「あのね、あたし……さっき、車の中で、その……蒼の、あ、…アレを、初めて自分の手で触って、……それでね、蒼が気持ちよくなるの見たとき、なんかあたしまで変な気分になっちゃったの」
「俺がイクの見て、興奮した?」
「う、うん……そうかも」
「俺が、欲しいと思ったの?」
彼女が小さく頷くのを見て、俺は再び、彼女の手を自分のソコに導いた。
さっきまで、俺を愛撫してくれていた彼女の手のひらは、喩えようもなく心地良かった。
彼女の質感というのだろうか、滑々としているのに、しっとりと貼りついてくるような肌の感触が好きだ。
肌が合う、とは文字通りこういうことを言うのかも知れない。
「やっぱり変かな、あたし……」
そう言いながらも、彼女は膨らみかけたソコを愛しげに撫でた。
ズボンの上から触れられただけで、ソレはすぐに硬くなってぴくぴくと反応する。
「蒼とね、……したいの、すごく……」
その顔でその台詞は反則だろって、思った。
それだけで、俺の理性の箍を弾き飛ばしてしまうには十分だった。
「全然、変じゃないよ」
俺は、彼女に跨ったまま慌ただしくシャツを脱ぎ捨てた。
俺の上半身が露わになると、彼女は少し眩しそうに目を細めた。
俺は彼女に圧し掛かった。
「俺だって、もう我慢できそうもないからね、今夜は覚悟して」
* * * * *
覚悟しろ、なんて言われても……。
蒼のえっちはいつも激しい。
何度も何度も、高められては落とされて、あたしは彼についていくのがやっとだ。
筋肉痛が残るほどのえっちなんて、蒼に会うまで知らなかった。
甲斐くんとのえっちはどちらかといえば淡白だったから――実際には、それは甲斐くんの意に反するものだったらしいけど――蒼のバイタリティが、あたしには驚きだった。
テレビや雑誌で見るような、いかにもアイドルって感じの笑顔で、意地悪なことをしたり言ったりするし、わざとあたしを焦らしたりもする。
蒼って、もしかしたら二重人格かも知れない、と本気で思う。
抱き合ってキスしたり、ふざけながらお互いに触れたりしているうちに、ソファでは手狭になってきて、蒼は、あたしを床に下ろした。
空調が効いているせいで、フローリングが少しひやりとする。
「冷たい? タオルケットでも敷こうか」
言いながら立ち上がろうとする蒼の腕を、つかんで引き止めた。
「やだ……」
「うん?」
「一緒にいて……ちょっとでも離れちゃ、やだ」
そうすることで、2人の間の甘い空気が、少しでも冷えてしまうのが嫌だった。
できるだけ側にいて、一瞬でも長く彼のぬくもりを感じていたい。
そう言うあたしに、彼は困ったような顔をして少し笑う。
「君ね……自分が今、ものすごく可愛いこと言ったの、気づいてないだろ」
それから、あたしの顔の両側に肘をつくと、額をこつんとぶつけてきた。
「そうやって、無意識に男を煽るんだ、……いけない子」
「煽ってなんか、いな……あ、」
太腿のあたりに、硬くなった彼のモノが当たる。
彼はトランクスをまだ脱いではいなかったけど、早くソレを見たい、この手で触れたいなんて思ってしまって、我ながらなんていやらしいことを考えてるんだろうって恥ずかしくなった。
「赤くなっちゃって、どうしたの?」
「だって、蒼……大きくなってる……」
「大きい? 何が?」
言ってしまってから、失敗したと思った。
尋ねた蒼の声が、軽い揶揄と笑いを含んでいたから。
「ねえ、どうして黙ってるの、俺の何が大きくなってるって?」
「だから、……蒼の、あ、…アレが……」
「アレって何、ちゃんと言わなきゃわからないよ?」
こういうとき、彼があたしに何を言わせたいのか、あらためて考えなくてもわかる。
そして、あたしがそれを口にするまでは、絶対に許してくれないことも。
「蒼の、お……」
あたしは、口ごもりながらもその名前を言う。
それを聞いて、蒼はいかにも満足そうにくつくつと笑った。
「可愛い顔して、えっちだねえ、君は」
「蒼が、言わせるからだもん……」
「所詮、男は幼稚だからね、好きな子だからこそ苛めてみたくなるものなの」
「それにしたって、意地悪だし、えっちだし……アイドル鷹宮蒼のイメージと違いすぎ」
「アイドルっぽくない俺は、嫌い?」
「…………」
そんなわけないの、彼だってわかっていて聞いてくる。
本当に、蒼は意地悪だ。
黙っていると、催促するように首を傾げて見せる。
この仕草には弱いのに。
「好き……」
「本当かなあ」
「ホントだもん……普段の蒼の方が、テレビで観るよりずっと好き……」
「でないと困るな、俺のこんな姿、知っているのは藍だけなんだからね」
そう言って、苦笑する蒼。
なんか、嬉しくて泣きそうになった。
アイドルじゃない蒼。
みんなの知らない蒼。
そして……あたしだけが知っている、蒼。
彼がアイドルだとか、住む世界が違うとか、そんなの関係ないって蒼は言った。
あたしも、今ならそう思える。
確かに、始まりは国民的アイドルと呼ばれる彼に対する憧れだったかも知れない、だけど……今この瞬間、あたしはひとりの男性として彼を愛している。
ああ、そうだ、あたしは……彼が彼であるからこそ、こんなにも彼を愛している。
彼の唇が頬に降りてくる。
知らず零れた涙を拭うような、優しい口づけ。
「蒼……好きって、言って」
「好きだよ」
囁いて、さらにキス。
「もっと言って」
「好き、好き、好き、好き、好き」
「……安売りはやだ」
「じゃあ、もう言わない」
おどけて口を噤んで見せる蒼は、やっぱり意地悪に違いない。
「もぉ……蒼のばか」
言いながら上目遣いで彼を見上げたあたしに、蒼は大きく嘆息した。
「ああ、もうっ、ヤバイからっ」
「え?」
「言わないでいられるわけないだろ、超好き、ていうか、ムチャクチャ好きだしっ」
そのまま、ぎゅっと音がするくらい強く抱きすくめられて。
「ん、そ、……苦し……」
思わず身体を捩ったあたしをさらに抱きしめ、首筋に顔を埋めた彼は言った。
「俺が今夜、例えば君を壊してしまっても、それは君のせいだからね」
蒼になら、壊されたって構わない。
今夜は、……ううん、あなたが望むのならこの先もずっと、あたしはあなたのものだから。
ただ、単純に……腕の中にあるこのぬくもりを、手離したくないと思った。
俺のために伸ばしていると言った髪の柔らかさ、手のひらに収まる肩の丸さ、重ね合う唇の甘さ……そんな彼女のひとつひとつを、ひたすらに愛しいと思った。
いつの間に、こんなに夢中にさせられてしまったのか、自分でもわからない。
初めて彼女を抱いたあの夜から、……いや、もしかすると、雨の中にうずくまる彼女を目にした瞬間から、文字通り、俺は恋に落ちたのかも知れない。
「……蒼?」
小さく笑いを洩らすと、彼女が怪訝そうな顔を上げた。
「ああ、ごめん、思い出し笑い……初めて会った夜、藍、ずぶ濡れだったろ? 風邪ひくよって声かけたら、泣いていたからビックリした。その様子が、なんかすごく寂しそうで、捨て猫みたいだって思ったんだ」
それを聞いて、彼女は恥ずかしそうに俯いた。
「あたし、そんなにみすぼらしかったかな……」
せっかく蒼に会えるならもっと可愛くしていたかったよ、と今さらそれを悔やむような言い方をする。
「いいじゃない、そのおかげで出会えたんだから、俺たちは」
「うん……でも、本当にこれで良かったと思う?」
「良かったもなにも、これって運命だから」
彼女の手を取り、指を絡め合わせる。
「そうだろ?」
彼女は自分の手をじっと見て、それから微かに首を振った。
「だけどね、あたし、……蒼に後悔させたくないの」
「後悔なんてするわけない、だって俺……」
藍のこと、好きだから。
言いながら強く抱きしめると、彼女は、やっと安心したように溜息を吐いた。
俺は、藍が好きだ。
その言葉を口にする度に、俺の心の中では何かが形成されていく。
それはもちろん、目には見えないし、手で触れることもできない。
だけど、俺はそれをしっかりと感じることができる。
今までどうして気づけなかったのだろうと呆れるくらい、溢れ出して止まらない想い。
「なんか……怖くなっちゃうね」
「うん?」
「幸せすぎて……」
「それは、俺だって同じかも」
寄り添う彼女の顎を支えて上向かせる。
いつも潤んだような彼女の瞳が、今夜はいっそう煌いて見えた。
「あたしも、好き……大好きだよ、蒼……」
そう言って、唇を押し付けてきたのは、彼女の方。
これまでも、口づければ応えてはくれたけど、こんな風に、彼女から求めてくるなんて初めてのことだ。
けれど、こういったことにまだ慣れてはいないのだろう、ぎこちなく口中を探る舌が、拙くて焦れったい。
堪らず、こっちからも舌を絡め、ついでに歯の裏辺りを擽ってやると、彼女は甘えた鼻声を洩らして、俺のシャツをぎゅうと握り締めた。
そのまま、ソファに押し倒し、ブラウスのボタンに手をかける。
「待って、……ここじゃ、や……」
「ベッドまで我慢できないよ、藍が可愛いから」
実際、俺の部屋はワンルームで、リビングスペースとして使っているここから、窓際にあるベッドまで、たいして離れちゃいない。
それなのに、そんな距離すらもどかしく感じるほど、今は彼女が欲しかった。
「んぅ、蒼……あ、」
激しいキスを浴びせながら、手早く彼女の服を脱がせていく。
明るい蛍光灯の下で、彼女は少し躊躇うような素振りを見せたけれど、俺は敢えてそれを消そうとはしなかった。
口づけを続けるうちに、彼女の息が少し荒くなり、乳房に置かれた俺の手の中で、先端の蕾がつんと勃ち上がる。
「ふふ……キスだけで感じちゃったの」
すっかり硬くなったソレを指先で軽くつまみ、意地悪く尋ねる。
「あ、…やだ、違……」
耳までを真っ赤に染め、身を捩って逃げようとするのを、抱きしめて引き止めた。
「何を恥ずかしがってるの、唇だって性感帯なんだし、感じちゃってもちっとも変じゃないよ」
「……そ、なの?」
「キスだって立派な前戯なんだよ、その証拠に、藍だってえっちな気分になったろ?」
「う、うん……なんかね、キスしながら、お腹の奥の方がきゅんとしたの」
「じゃあ、ココも濡れちゃったかな?」
最後の1枚で覆われたソコに手を伸ばすと、彼女は慌てて腿を閉じた。
そんな彼女ににやりと笑いかけておいて、強引に手のひらをこじ入れる。
布地の奥には、すでに潤んだ感触があった。
「思った通りだ、ほら、もう……」
ぬるぬるだよ、とわざと耳元で囁く。
耳が弱いのと、あからさまなことを言われたのとで、彼女はさらに赤くなる。
その様子があんまり可愛くて思わず突っ走りそうになるのを、辛うじて自制した。
「藍は、俺とこうして抱き合うの、嬉しくない?」
「う、嬉しいよ、そんなの当たり前でしょ」
「だったら、蒼とえっちしたい、蒼に気持ちよくして欲しいって、思う?」
「そんな、……恥ずかしくて、答えられない」
その答え自体が、その通りと白状しているようなものだけど、俺はちゃんと、彼女の口から聞きたかった。
「女の子にも性欲があって当然だし、好きな相手と抱き合いたい、身体を繋げたいって思うのも、自然な気持ちの流れだよ。そんなのちっともいやらしくないし、その気持ちを無理に抑えつける方がよっぽど屈折してる」
「でも、えっちに積極的な女の子って、淫乱だとか言われるじゃん……」
「それは、自分に接点のない子とか、そうされたら鬱陶しいと思ってる子について。好きな女の子とえっちしたくない男なんて、いやしないんだから」
彼女は、まだ半信半疑の顔で、俺を見つめる。
「蒼、も……?」
「うん。俺も、藍にはもっともっとえっちになって欲しいなって思うよ。すごい乱れて我を忘れる姿とか、見てみたい。もちろん、相手は俺限定って意味だけどね」
すると、彼女は少し考える風をしてから、おずおずと切り出した。
「あのね、あたし……さっき、車の中で、その……蒼の、あ、…アレを、初めて自分の手で触って、……それでね、蒼が気持ちよくなるの見たとき、なんかあたしまで変な気分になっちゃったの」
「俺がイクの見て、興奮した?」
「う、うん……そうかも」
「俺が、欲しいと思ったの?」
彼女が小さく頷くのを見て、俺は再び、彼女の手を自分のソコに導いた。
さっきまで、俺を愛撫してくれていた彼女の手のひらは、喩えようもなく心地良かった。
彼女の質感というのだろうか、滑々としているのに、しっとりと貼りついてくるような肌の感触が好きだ。
肌が合う、とは文字通りこういうことを言うのかも知れない。
「やっぱり変かな、あたし……」
そう言いながらも、彼女は膨らみかけたソコを愛しげに撫でた。
ズボンの上から触れられただけで、ソレはすぐに硬くなってぴくぴくと反応する。
「蒼とね、……したいの、すごく……」
その顔でその台詞は反則だろって、思った。
それだけで、俺の理性の箍を弾き飛ばしてしまうには十分だった。
「全然、変じゃないよ」
俺は、彼女に跨ったまま慌ただしくシャツを脱ぎ捨てた。
俺の上半身が露わになると、彼女は少し眩しそうに目を細めた。
俺は彼女に圧し掛かった。
「俺だって、もう我慢できそうもないからね、今夜は覚悟して」
* * * * *
覚悟しろ、なんて言われても……。
蒼のえっちはいつも激しい。
何度も何度も、高められては落とされて、あたしは彼についていくのがやっとだ。
筋肉痛が残るほどのえっちなんて、蒼に会うまで知らなかった。
甲斐くんとのえっちはどちらかといえば淡白だったから――実際には、それは甲斐くんの意に反するものだったらしいけど――蒼のバイタリティが、あたしには驚きだった。
テレビや雑誌で見るような、いかにもアイドルって感じの笑顔で、意地悪なことをしたり言ったりするし、わざとあたしを焦らしたりもする。
蒼って、もしかしたら二重人格かも知れない、と本気で思う。
抱き合ってキスしたり、ふざけながらお互いに触れたりしているうちに、ソファでは手狭になってきて、蒼は、あたしを床に下ろした。
空調が効いているせいで、フローリングが少しひやりとする。
「冷たい? タオルケットでも敷こうか」
言いながら立ち上がろうとする蒼の腕を、つかんで引き止めた。
「やだ……」
「うん?」
「一緒にいて……ちょっとでも離れちゃ、やだ」
そうすることで、2人の間の甘い空気が、少しでも冷えてしまうのが嫌だった。
できるだけ側にいて、一瞬でも長く彼のぬくもりを感じていたい。
そう言うあたしに、彼は困ったような顔をして少し笑う。
「君ね……自分が今、ものすごく可愛いこと言ったの、気づいてないだろ」
それから、あたしの顔の両側に肘をつくと、額をこつんとぶつけてきた。
「そうやって、無意識に男を煽るんだ、……いけない子」
「煽ってなんか、いな……あ、」
太腿のあたりに、硬くなった彼のモノが当たる。
彼はトランクスをまだ脱いではいなかったけど、早くソレを見たい、この手で触れたいなんて思ってしまって、我ながらなんていやらしいことを考えてるんだろうって恥ずかしくなった。
「赤くなっちゃって、どうしたの?」
「だって、蒼……大きくなってる……」
「大きい? 何が?」
言ってしまってから、失敗したと思った。
尋ねた蒼の声が、軽い揶揄と笑いを含んでいたから。
「ねえ、どうして黙ってるの、俺の何が大きくなってるって?」
「だから、……蒼の、あ、…アレが……」
「アレって何、ちゃんと言わなきゃわからないよ?」
こういうとき、彼があたしに何を言わせたいのか、あらためて考えなくてもわかる。
そして、あたしがそれを口にするまでは、絶対に許してくれないことも。
「蒼の、お……」
あたしは、口ごもりながらもその名前を言う。
それを聞いて、蒼はいかにも満足そうにくつくつと笑った。
「可愛い顔して、えっちだねえ、君は」
「蒼が、言わせるからだもん……」
「所詮、男は幼稚だからね、好きな子だからこそ苛めてみたくなるものなの」
「それにしたって、意地悪だし、えっちだし……アイドル鷹宮蒼のイメージと違いすぎ」
「アイドルっぽくない俺は、嫌い?」
「…………」
そんなわけないの、彼だってわかっていて聞いてくる。
本当に、蒼は意地悪だ。
黙っていると、催促するように首を傾げて見せる。
この仕草には弱いのに。
「好き……」
「本当かなあ」
「ホントだもん……普段の蒼の方が、テレビで観るよりずっと好き……」
「でないと困るな、俺のこんな姿、知っているのは藍だけなんだからね」
そう言って、苦笑する蒼。
なんか、嬉しくて泣きそうになった。
アイドルじゃない蒼。
みんなの知らない蒼。
そして……あたしだけが知っている、蒼。
彼がアイドルだとか、住む世界が違うとか、そんなの関係ないって蒼は言った。
あたしも、今ならそう思える。
確かに、始まりは国民的アイドルと呼ばれる彼に対する憧れだったかも知れない、だけど……今この瞬間、あたしはひとりの男性として彼を愛している。
ああ、そうだ、あたしは……彼が彼であるからこそ、こんなにも彼を愛している。
彼の唇が頬に降りてくる。
知らず零れた涙を拭うような、優しい口づけ。
「蒼……好きって、言って」
「好きだよ」
囁いて、さらにキス。
「もっと言って」
「好き、好き、好き、好き、好き」
「……安売りはやだ」
「じゃあ、もう言わない」
おどけて口を噤んで見せる蒼は、やっぱり意地悪に違いない。
「もぉ……蒼のばか」
言いながら上目遣いで彼を見上げたあたしに、蒼は大きく嘆息した。
「ああ、もうっ、ヤバイからっ」
「え?」
「言わないでいられるわけないだろ、超好き、ていうか、ムチャクチャ好きだしっ」
そのまま、ぎゅっと音がするくらい強く抱きすくめられて。
「ん、そ、……苦し……」
思わず身体を捩ったあたしをさらに抱きしめ、首筋に顔を埋めた彼は言った。
「俺が今夜、例えば君を壊してしまっても、それは君のせいだからね」
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