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エピローグ(3)
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あたしは、目を閉じたまま、蒼の歌を聴く。
澄んだ蒼の声が紡ぎだす、甘い甘い愛の言葉。
涙が出ちゃいそうなくらい、胸がきゅんとする。
蒼と出会ってから今日まで。
嬉しかったこと、楽しかったこと、戸惑ったこと、切なかったこと、悲しかったこと。
短い間にいろんなことがあった。
瞼の奥に甦る、たくさんの思い出たち。
よく、走馬灯のようにって言うけれど、あれって本当だ。
もしかすると、今まで生きてきた年月や、これから生きていくはずの年月に比べれば、蒼と過ごした時間なんてほんの少しかも知れない。
だけど、あたしにとってはその瞬間のひとつひとつが大事な宝物だ。
蒼と巡りあえたこと、それ以上の幸せが、この先にあるとは思えない。
ずっとずっと好きだった、蒼。
好きだから側にいたくなって、側にいたら触れたくなって、触れてしまえば手離すのが惜しくなって、ココロはどんどん欲張りになっていく。
後戻りできないことなんて、最初からわかってた。
だから、あたしは自分の気持ちを必死で押さえつけていたつもりだった。
なのに、いつしか恋は始まっていた。
人が人を好きになることに理由なんてない。
どこからか溢れ出した水が、流れてそこに溜まるように。
まるで、そうなることが自然の成り行きのように。
恋は、落ちようと思って落ちるものでも、仕掛けるものでも、仕向けるものでもない。
気づいたときにはもう、ココロがその人のことでいっぱいになっている。
恋って、きっとそういうもの。
あたしのココロも、蒼でいっぱいだ。
これ以上、ココロの器には何も入らないような気がしたし、もし本当にそうなったところで別に構わないとも思えた。
蒼以外に欲しいものなんてない。
たとえば、蒼以外のものをすべて諦めろと言われたら、あたしはきっとそうする。
ねえ、蒼……あたし、願ってもいい?
今こうしてあたしの鼓膜を震わせるあなたの歌も、愛する人のためにと言ってくれたあなたの言葉も、どうか夢ではありませんようにって。
あたしは、そろそろと目を開けた。
夢、じゃないんだよね?
だって、あたしはまだ「ここ」にいるもの。
真っ暗なステージの上、一筋のスポットライトに照らされて歌い続ける蒼。
その彼が、闇に包まれた観客席に向かって手を伸ばす。
まるで、彼の位置からは見えていないはずのあたしへと差し伸べるみたいに。
感じる、蒼?
あたしは、ここにいるんだよ。
ここでこうして、この歌に込められたあなたの想いを受け止めているよ。
あなたにも、あたしのココロの声が聞こえる?
触れ合えなくても気持ちは、……ちゃんと繋がっている?
舞台の上の蒼と、一瞬だけ、視線が絡んだような気がした。
ああ、もう……限界だよ、蒼。
あたしはこみ上げる涙を堪えきれずに俯いた。
好き、好き、好き、好き。
あなたへの想いが大きすぎて、今にも溢れそうで、苦しい。
あたしはもう、ステージを見ることができない。
今、顔を上げたら、大好きだって叫んでしまうかも知れないから。
そのあとはずっと下を向いて、両手で顔を覆ったままでいた。
感動しすぎて、身体が痺れて、動けなかったと言った方が正しいかも知れない。
蒼とは、触れ合ったわけでも言葉を交わしたわけでもないのに、蒼の声は、そして彼の歌にこめられた想いは、十分すぎるほどあたしのココロを撫でた。
他人には内緒の秘められた恋でも、蒼はこんなにもたくさんの人の前で、あたしに愛を伝えることをやってのけた。
静かに伴奏が終わって、蒼が会場を埋めたファンにもう1度ありがとうと言ってコンサートを締めくくり、客席が明るくなってみんなが席を立ち始めても、あたしはそのままの姿勢でじっとしていた。
スタッフジャンパーを着た誰かに、そろそろ撤収だからと声をかけられて我にかえるまで。
* * * * *
ずっと両手で顔を覆って下を向いていたから、アリーナ席の撤収作業が始まったことに気づかなかった。
蒼のコンサートは素晴らしかった。
大事な舞台だからこそ観て欲しいと言った蒼の気持ちが、ひしひしと感じられた。
誰かの想いをこんな風にダイレクトに受け止めてしまったのははじめてで、そのあまりの激しさに眩暈がしそうになった。
あたしは、蒼に愛されている。
蒼本人が、面と向かってそう言ったわけじゃない。
もちろん、目に見える、手で触れられる、はっきりカタチになるものがあるわけじゃない。
だけど、あたしはそれをしっかりと確信することができた。
ひたひたとココロを満たしていくあたたかいもの。
その心地良さに包まれて、あたしは半ば恍惚としていた。
それは、蒼と抱き合うときに感じる強烈なエクスタシーの余韻にも似ていた。
蒼は、指1本触れることすらせずに、見事にあたしを絶頂へと導いた。
あたしのココロは、確かに蒼の歌に撫でられて泣いていた。
涙が溢れて止まらなかった。
「あの~、そろそろ撤収なんですけど?」
誰かから、遠慮がちに声をかけられて、あたしはやっと我にかえった。
慌てて手を離すと、煌々と灯った照明が泣き腫らした目に飛び込んできて眩しかった。
「あ、…す、すみません、今すぐ退きますから……」
手の甲で頬を拭いながら、あたしは急いで席を立とうとするけれど、咄嗟には身体が上手く動かなくてもたもたしてしまう。
そんなあたしを怪訝に思ったのか、スタッフジャンパーを着たその人は心配そうに言った。
「泣いていたの? 大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です、なんかその、……ちょっと感動しちゃったって言うか」
えへへ、と笑ってごまかしながら、あたしはその場を立ち去ろうとした。
いくら感動したからって、他人から声をかけられるまで茫然自失してるなんてやっぱり尋常じゃない。
変に不審がられないうちにここを出よう。
けれども、その人の前を通り過ぎようとしたとき、不意に腕をつかまれた。
「嬉しいな、そんなに感激してくれたんだ」
「……え?」
一瞬、何のことを言われたのかわからなくて、あたしはその人を振り返った。
彼は、目深にかぶったキャップのつばをちょっと上げ、軽く小首を傾げて見せた。
「蒼?!」
思わず大きな声で名前を呼んだあたしに、彼は人差し指を唇に当てて、「シイ」という仕草をした。
あたしは、慌てて手のひらで口を押さえた。
「こっ、こんなところで何してるの? ていうか、その格好は?」
まさか、コンサートを終えたばかりの蒼が、こんなスタッフみたいな格好でこんな場所に現れるなんて考えてもみなかった。
多分、彼の方から正体を明かしてくれなかったらわからなかったに違いない。
蒼は時どき、こんな風にあたしをビックリさせるようなことをする。
「決まってるだろ、一刻も早く、藍の反応を確かめたかったんだよ」
コンサート、どうだった? 聞きながら、蒼があたしの顔を覗き込む。
あたしの頬には、いまだに涙の跡がついていて、顔を覆ったまま立ち上がれずにいるところまで見られてて、今さらなんて意地悪なことを聞くんだろうと思った。
「良かったと、思うよ……すごい、感動したし」
「泣いちゃうくらいに?」
「う、うん……」
あたしを泣かせた今しがたの甘いラブソングは、しっかりと耳に残ってる。
あたしは、面映さを感じて俯いた。
「俺、あの歌を歌っているとき……」
蒼はあたしの耳のうしろに指を入れて、梳く。
蒼の言う「あの歌」が、「あの歌」を指していることは、鈍いあたしにもすぐにわかった。
「真っ暗な観客席に、藍の姿を探した。けど、目に入るのは闇ばかりで、俺、なんかすごい不安になった。君は本当にここにいるんだろうか、ここにいて俺の歌を聴いているんだろうかって」
あたしは、視線を上げて蒼を見る。
目の合った蒼は、照れくさそうに少し笑って、言った。
「でも、次の瞬間、君の声が聞こえたような気がした。あたしはちゃんとここにいるよ、ここであなたの想いを受け止めているよって。だから俺、精一杯、心を込めて歌った……藍のために」
あたしは頷いた。
「うん、ちゃんと聴いてたよ……蒼の気持ちも、すごく嬉しかった……」
「じゃあ、藍の気持ちは?」
「あたし……?」
あたしは、答えに窮してちょっと黙る。
今の気持ちを言葉にするなんて不可能に思えた。
蒼の首に抱きついて、好きと何百回囁いても到底伝わらないだろう。
あたしのココロは今、堤防が決壊して氾濫する川のように、想いが溢れ出して止まりそうもないから。
「そんなこと、……ここじゃ、言えないよ」
あたしは、顔を赤らめながらやっとのことでそう答えた。
彼はその答えを見越していたように、にっこりと笑った。
「だったら、場所を変えよう」
言うなり、彼は急きたてるようにして、あたしをそこから連れ出した。
澄んだ蒼の声が紡ぎだす、甘い甘い愛の言葉。
涙が出ちゃいそうなくらい、胸がきゅんとする。
蒼と出会ってから今日まで。
嬉しかったこと、楽しかったこと、戸惑ったこと、切なかったこと、悲しかったこと。
短い間にいろんなことがあった。
瞼の奥に甦る、たくさんの思い出たち。
よく、走馬灯のようにって言うけれど、あれって本当だ。
もしかすると、今まで生きてきた年月や、これから生きていくはずの年月に比べれば、蒼と過ごした時間なんてほんの少しかも知れない。
だけど、あたしにとってはその瞬間のひとつひとつが大事な宝物だ。
蒼と巡りあえたこと、それ以上の幸せが、この先にあるとは思えない。
ずっとずっと好きだった、蒼。
好きだから側にいたくなって、側にいたら触れたくなって、触れてしまえば手離すのが惜しくなって、ココロはどんどん欲張りになっていく。
後戻りできないことなんて、最初からわかってた。
だから、あたしは自分の気持ちを必死で押さえつけていたつもりだった。
なのに、いつしか恋は始まっていた。
人が人を好きになることに理由なんてない。
どこからか溢れ出した水が、流れてそこに溜まるように。
まるで、そうなることが自然の成り行きのように。
恋は、落ちようと思って落ちるものでも、仕掛けるものでも、仕向けるものでもない。
気づいたときにはもう、ココロがその人のことでいっぱいになっている。
恋って、きっとそういうもの。
あたしのココロも、蒼でいっぱいだ。
これ以上、ココロの器には何も入らないような気がしたし、もし本当にそうなったところで別に構わないとも思えた。
蒼以外に欲しいものなんてない。
たとえば、蒼以外のものをすべて諦めろと言われたら、あたしはきっとそうする。
ねえ、蒼……あたし、願ってもいい?
今こうしてあたしの鼓膜を震わせるあなたの歌も、愛する人のためにと言ってくれたあなたの言葉も、どうか夢ではありませんようにって。
あたしは、そろそろと目を開けた。
夢、じゃないんだよね?
だって、あたしはまだ「ここ」にいるもの。
真っ暗なステージの上、一筋のスポットライトに照らされて歌い続ける蒼。
その彼が、闇に包まれた観客席に向かって手を伸ばす。
まるで、彼の位置からは見えていないはずのあたしへと差し伸べるみたいに。
感じる、蒼?
あたしは、ここにいるんだよ。
ここでこうして、この歌に込められたあなたの想いを受け止めているよ。
あなたにも、あたしのココロの声が聞こえる?
触れ合えなくても気持ちは、……ちゃんと繋がっている?
舞台の上の蒼と、一瞬だけ、視線が絡んだような気がした。
ああ、もう……限界だよ、蒼。
あたしはこみ上げる涙を堪えきれずに俯いた。
好き、好き、好き、好き。
あなたへの想いが大きすぎて、今にも溢れそうで、苦しい。
あたしはもう、ステージを見ることができない。
今、顔を上げたら、大好きだって叫んでしまうかも知れないから。
そのあとはずっと下を向いて、両手で顔を覆ったままでいた。
感動しすぎて、身体が痺れて、動けなかったと言った方が正しいかも知れない。
蒼とは、触れ合ったわけでも言葉を交わしたわけでもないのに、蒼の声は、そして彼の歌にこめられた想いは、十分すぎるほどあたしのココロを撫でた。
他人には内緒の秘められた恋でも、蒼はこんなにもたくさんの人の前で、あたしに愛を伝えることをやってのけた。
静かに伴奏が終わって、蒼が会場を埋めたファンにもう1度ありがとうと言ってコンサートを締めくくり、客席が明るくなってみんなが席を立ち始めても、あたしはそのままの姿勢でじっとしていた。
スタッフジャンパーを着た誰かに、そろそろ撤収だからと声をかけられて我にかえるまで。
* * * * *
ずっと両手で顔を覆って下を向いていたから、アリーナ席の撤収作業が始まったことに気づかなかった。
蒼のコンサートは素晴らしかった。
大事な舞台だからこそ観て欲しいと言った蒼の気持ちが、ひしひしと感じられた。
誰かの想いをこんな風にダイレクトに受け止めてしまったのははじめてで、そのあまりの激しさに眩暈がしそうになった。
あたしは、蒼に愛されている。
蒼本人が、面と向かってそう言ったわけじゃない。
もちろん、目に見える、手で触れられる、はっきりカタチになるものがあるわけじゃない。
だけど、あたしはそれをしっかりと確信することができた。
ひたひたとココロを満たしていくあたたかいもの。
その心地良さに包まれて、あたしは半ば恍惚としていた。
それは、蒼と抱き合うときに感じる強烈なエクスタシーの余韻にも似ていた。
蒼は、指1本触れることすらせずに、見事にあたしを絶頂へと導いた。
あたしのココロは、確かに蒼の歌に撫でられて泣いていた。
涙が溢れて止まらなかった。
「あの~、そろそろ撤収なんですけど?」
誰かから、遠慮がちに声をかけられて、あたしはやっと我にかえった。
慌てて手を離すと、煌々と灯った照明が泣き腫らした目に飛び込んできて眩しかった。
「あ、…す、すみません、今すぐ退きますから……」
手の甲で頬を拭いながら、あたしは急いで席を立とうとするけれど、咄嗟には身体が上手く動かなくてもたもたしてしまう。
そんなあたしを怪訝に思ったのか、スタッフジャンパーを着たその人は心配そうに言った。
「泣いていたの? 大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です、なんかその、……ちょっと感動しちゃったって言うか」
えへへ、と笑ってごまかしながら、あたしはその場を立ち去ろうとした。
いくら感動したからって、他人から声をかけられるまで茫然自失してるなんてやっぱり尋常じゃない。
変に不審がられないうちにここを出よう。
けれども、その人の前を通り過ぎようとしたとき、不意に腕をつかまれた。
「嬉しいな、そんなに感激してくれたんだ」
「……え?」
一瞬、何のことを言われたのかわからなくて、あたしはその人を振り返った。
彼は、目深にかぶったキャップのつばをちょっと上げ、軽く小首を傾げて見せた。
「蒼?!」
思わず大きな声で名前を呼んだあたしに、彼は人差し指を唇に当てて、「シイ」という仕草をした。
あたしは、慌てて手のひらで口を押さえた。
「こっ、こんなところで何してるの? ていうか、その格好は?」
まさか、コンサートを終えたばかりの蒼が、こんなスタッフみたいな格好でこんな場所に現れるなんて考えてもみなかった。
多分、彼の方から正体を明かしてくれなかったらわからなかったに違いない。
蒼は時どき、こんな風にあたしをビックリさせるようなことをする。
「決まってるだろ、一刻も早く、藍の反応を確かめたかったんだよ」
コンサート、どうだった? 聞きながら、蒼があたしの顔を覗き込む。
あたしの頬には、いまだに涙の跡がついていて、顔を覆ったまま立ち上がれずにいるところまで見られてて、今さらなんて意地悪なことを聞くんだろうと思った。
「良かったと、思うよ……すごい、感動したし」
「泣いちゃうくらいに?」
「う、うん……」
あたしを泣かせた今しがたの甘いラブソングは、しっかりと耳に残ってる。
あたしは、面映さを感じて俯いた。
「俺、あの歌を歌っているとき……」
蒼はあたしの耳のうしろに指を入れて、梳く。
蒼の言う「あの歌」が、「あの歌」を指していることは、鈍いあたしにもすぐにわかった。
「真っ暗な観客席に、藍の姿を探した。けど、目に入るのは闇ばかりで、俺、なんかすごい不安になった。君は本当にここにいるんだろうか、ここにいて俺の歌を聴いているんだろうかって」
あたしは、視線を上げて蒼を見る。
目の合った蒼は、照れくさそうに少し笑って、言った。
「でも、次の瞬間、君の声が聞こえたような気がした。あたしはちゃんとここにいるよ、ここであなたの想いを受け止めているよって。だから俺、精一杯、心を込めて歌った……藍のために」
あたしは頷いた。
「うん、ちゃんと聴いてたよ……蒼の気持ちも、すごく嬉しかった……」
「じゃあ、藍の気持ちは?」
「あたし……?」
あたしは、答えに窮してちょっと黙る。
今の気持ちを言葉にするなんて不可能に思えた。
蒼の首に抱きついて、好きと何百回囁いても到底伝わらないだろう。
あたしのココロは今、堤防が決壊して氾濫する川のように、想いが溢れ出して止まりそうもないから。
「そんなこと、……ここじゃ、言えないよ」
あたしは、顔を赤らめながらやっとのことでそう答えた。
彼はその答えを見越していたように、にっこりと笑った。
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言うなり、彼は急きたてるようにして、あたしをそこから連れ出した。
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