Love, Truth and Honesty

逢坂莉子

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エピローグ(5)

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 あたしは、全裸でベッドに横たわる。
 蒼は、あたしにキスをする。
 唇ごと、蒼のそれで覆われて、息継ぎすらままならないほど深くて激しいキス。

 まるで、このまま食べられてしまいそう……。

 そうしながら、彼はあたしの胸を触る。
 大きな手のひらで包み込むように、ゆっくりと揉む。
 先端の蕾はたちまち固くなって、蒼の手のひらを押し返すほどに勃ち上がる。
 蒼は、それを指先でつまんで、軽く擦ったり、時どきちょっと強めにつねったりする。
 そこから生まれた淡い快感は、お腹の辺りにわだかまってあたしをやるせなくする。
「藍……」
 蒼は、唇を離してあたしを見る。
 蒼の口から出たものなら、自分の名前すら甘く響くから不思議だ。
「イイ?」
 蒼は蕾を弄ぶのを止めずに、聞く。
 あたしは少し息を乱しながら頷いて、イイよと言う。
「今日はずいぶんと素直なんだね」
「だって、ホントに……蒼になら、どこをどうされてもイイの」
「ふふ、相変わらず可愛いことを言う」
 蒼は、身体をずらしてあたしの胸に口をつける。
 舌で、赤い蕾を上下に弾く。
 そうされるのはとても気持ちがイイのだけれど、同時にやるせなさも募らせる。
 もっと別の場所も触れて欲しい。
 そう口に出してしまいそうになって、あたしは、中指の背を噛んで声を堪えた。
 そんなあたしを察したのか、蒼は顔を上げてちょっと笑う。
「切なそうな顔しちゃって」
 伸ばされた指が唇に触れる。
 あたしは、ちゅと音を立ててそれにキスをする。

 好き。
 蒼を創るすべてのもの。
 文字通り、指の先まで。

 蒼は、上体を起こしてあたしの両膝を立たせると、その間に自分の身体を置いた。
 あたしを見つめながら、膝小僧をまあるく撫でる。
 ぞくぞくする。
 あたしは目を閉じる。
 次に起こることを期待して。
 蒼が身体を屈める気配がする。
 吐息が触れる。
「あぅ……」
 思わず声が洩れてしまう。
 左右に広げられた花びらの間を、ざらりと舌が這う。

 さっきまで、煌めくスポットライトを浴びて、たくさんの人の視線を一身に集めて、あんなにも輝いていた人が、今。
 あたしの、足の間に顔を埋めている。
 あたしの、恥ずかしい部分に口をつけている。

 なんてえっちなこと考えてるんだろうと自分でも思う。
 だけど、そんな想像をするだけで、あたしのアソコはじわじわと潤った。

 花びらの奥を、差し入れられた舌が上下に動く。
 時おり、ちゅるりといやらしい音をさせて、蒼は湧き出した蜜を啜る。
 自分自身がどんどん昂っていくのがわかる。
 甘く疼きながら自己主張を始める小さな芽。
 蒼は、形の良い唇でそれを挟む。
 吸う、弾く、震わせる、歯を立てて軽く噛む。
 蒼の愛撫はいつにも増して執拗だった。
 あたしには、だらしなく口を半開きにして短く喘ぎながら、両手でシーツを握り締めるしか術がない。
 ああ、もうすぐ来ちゃいそう……身体中の神経がその一点に集中していく。
 充血して膨れ上がったそれを、蒼は尖らせた舌先で左右に振った。
「んふぅんっ、んんぅ……!」
 次の瞬間、あたしは全身を硬直させて、……そして、一気に脱力した。

 蒼は、伸び上がってキスをする。
 あたしは舌を出して、彼の唇についた自分の蜜を舐めた。
 蒼は笑う。
「今日の藍、なんだかすごくえっちな感じ」
 言いながら、蒼は、あたしの腰の辺りをゆっくりと撫でる。
「そういう藍にも、俺はすごくそそられるけどね」
 いまだ力の入らない足の間に、手のひらが侵入してくる。
 腿の付け根を指でなぞられて、思わずぶるっと震えがきた。
 軽く達したばかりの身体は、それだけでも十分に感じてしまっていた。
「あ、や、…蒼ぉ……」
 それでも、蒼の手は容赦なくそこに入り込む。
 細くて長い、彼の指。
 すでに蜜を溢れさせた泉は、ほんの形ばかりの抵抗を示したあと、それを受け容れた。
「あぁ、う……」
 快感の引き出しを、蒼に知り尽くされていることが恨めしい。
 内部の襞を擽るように蠢いていた指が、迫り出した天井を探り当て、そこを軽く擦る。
「ひぁっ」
 あたしは息を引いて蒼の肩をつかむ。
 無意識に背中が反って、彼の手から逃れようとしてしまう。
 蒼は、そんなあたしをがっちりと押さえ込んで、さらに強くそこを刺激した。
「やだ、や……そんなにしたら、また……」
 あたしは首を振る。
 立て続けにイカされてしまうことは珍しくない。
 だからこそ、そういうとき、自分がどうなってしまうかもちゃんとわかっていた。

 いつだって、蒼の思うままに乱されて、普段なら恥ずかしくて想像するのも憚られるような淫らなことを、したり口走ったりしてしまう。
 えっちのとき、あたしは蒼に好きなように操られる人形みたいに、彼の意のままにされる。
 そうしないではいられないほど彼は上手で、また、そうであっても構わないと思えるほど優しく激しくあたしを愛してくれる。
 あたしは蒼に抱かれているとき、他の何もかもを忘れられるくらいに幸せだった。

「だめ、…も、来る、来ちゃうよぉ、また……」
「……いいよ、藍の可愛い顔を見せて」

 見てって思った。
 あたしは、他人を感動させる歌なんて歌えない。
 他人を魅了するカリスマなんて持ち合わせていない。
 だから……せめて、あなたで感じているあたしを、見て。
 そんなあたしを蒼が可愛いと言ってくれるなら、あたしは最高にえっちな表情を刻んで見せるだろう。

 あたしは、蒼の指をきゅうきゅう締め付けて、ぶるぶるっと震えた。
 耳元で、まだまだ許さないよと蒼が笑った。

* * * * *

「すごいよ、藍……もう、指が溶けそう」
 耳元に口を寄せて囁くと、藍は俺の肩に額をつけて、微かに嘆息した。
「や、も…やだ……」
 掠れた声で言いながら、弱々しく首を振る。
「お願い、蒼……もうだめ、ホントにだめ……」
 それはほとんど、懇願といっても良かった。
 無理もない、と思う。
 今もソコにある俺の指で、彼女はすでに何度か達しているはずだった。
 それはもう、快感を通り越して苦痛さえ伴うだろう。
 その証拠に、ほんの少し俺が指を動かすだけで、藍は辛そうに眉を顰めた。
 俺にも、それはわかっていた。
 それでも、俺は彼女を嬲ることを止めなかった。
「それにしちゃ、藍のココ、…俺の指、きゅうきゅう食い締めて離そうとしないんだけど?」
 わざと意地悪な言い方をして、ほら、と迫り出した天井を軽く擦る。
 藍は、声を出すこともできず、癲癇の発作でも起こしたみたいにがくがく震えた。
 下唇を噛んでそれに耐えている彼女が、たまらなく可愛い。
「今夜は、イキっ放しだね」
 俺は、指先で彼女の内部のヒクつきを感じながら、言った。
 藍は荒い息を吐いて、薄目を開けて俺を見た。
 生理的なものだとわかってはいても、潤んだ瞳がさらに俺を誘っているように見える。
「でも、……まだまだイケるだろ?」
 俺の言葉に、藍はそれこそ怯えたように目を見開いた。
「やっ、…やだ、やだ、もうだめっ」
 身体を捩って逃げようとするのを、圧し掛かるようにして押さえつける。
 藍は、全身にしっとりと汗をかき、首筋から胸元までが淡いピンク色に染まっていた。
 その姿はひどく淫蕩で、きれいだった。
「うぅ、も、やめ…、て…変になる、おかしくなっちゃうよぉ……」
「いいよ、変にでも何にでもなればいい」
 俺は、溢れる蜜を掻き出すようにしてさらに指を動かした。
 藍の口から声にならない悲鳴が洩れ、その背中が大きく撓ると、その部分がきゅっと狭まり、軽く電流でも通されたように痙攣した。
 激しくイッたときの彼女の常だった。
「はぁ、…はぁ、」
 藍の胸が大きく上下する。
 呼吸が落ち着くのを待って、眦に浮かんだ涙に口づけた。
「ああ、藍、…本当に可愛い、大好きだよ……」
「んぅ、あたしも……あたしも好き……」
 これほどまでに甚振られてもまだ、自分を好いてくれる彼女が、俺は愛しかった。

 だから、……だから泣かせたくなってしまうんだ、さらに。

 俺は、彼女の中から指を引き抜くと、代わりに自分の固くなったものを入り口に当てた。
「今度は、俺のを挿れるからね?」
 俺の、というところを強調すると、期待とも緊張ともつかないもので一瞬、藍の身体が強張った。
 縋るような眼差しで見つめられても、今は俺の情欲を煽るだけだ。
「うぅ、…うぁあ……」
 苦しげに眉根を寄せる彼女を見つめ返しながら、ゆっくりと腰を進めていく。
 辛そうな表情とは裏腹に、彼女のソコは貪欲に俺を飲み込んだ。
「く……」
 俺は思わず吐息を洩らす。
 熱くて、キツイ……絡みついてくる柔襞の感触がたまらなかった。
 そして、腹の奥から湧いてくる充足感のようなもの。

 藍と愛し合うときはいつもそうだ。
 彼女の中に自分の分身を沈めるたび、形容し難い切なさと安堵にも似た満足が、俺の胸をいっぱいにする。
 藍とこうすることで初めて、自分の中の欠けていたピースを取り戻したような気になる。
 彼女はすでに、俺の最も深いところの一部になっていた。

「あっ、あっ、は、…あぁん!」
 突き上げられ、揺さぶられ、藍は短く喘ぎながらも懸命にそれに応えようとする。
 俺は、彼女の腿を抱え上げ、さらに奥までを抉るように自らを差し込んだ。
「ああっ、そんな、……だめ、だめ、蒼ぉ!」
 藍はまた泣いてしまう。
 俺はこのとき、屈折した欲望をはっきりと自覚した。
 藍が快楽と苦痛の狭間で涙を流せば流すほど、俺はもっと彼女を追い詰めたくなってしまうのだ。
「藍……」
 俺は彼女の涙を舌で舐め、それから唇にキスをした。
 求め、奪い、もつれ合うような口づけ。
 彼女が俺を締め付ける。
 まるで、もう2度と離れないでといわんばかりに。

 愛しい、愛しい、愛しい、今この腕の中にいる彼女が、他の何よりも。

 俺は容赦なく彼女を突いた。
 どんな語彙をもってしても、とても伝え切れない想いをぶつけるように、深く、激しく。
 そうするうちに頭の中が白く濁って、自分と彼女のこと以外は何も考えられなくなった。
 彼女の真ん中に向かって、俺は勢いよく精を放った。
 その瞬間、安っぽいラブソングや、上っ面だけのドラマの台詞以外では言ったことがなかったような、陳腐な言葉を俺は口にした。

 ――愛している、と。
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