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第1章 幼少期

15話 奇跡の出会い 父:アイオラト視点

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  父:アイオラト 視点

 アトリーが外に出たがらなくなって1ヶ月が過ぎた、いよいよ周りの使用人達も心配になってきた頃、セルドスがアトリーの様子を伺いに来てくれた。
 今までも定期的に様子を見には来ていたのだが、ここ数日は全然外に出なくなってしまったので心配してくれたのだろう。

セルドス「旦那様、そろそろ“秋の庭園“が色づいて参りました、アメトリン様に見に来ていただきたいのですが 最近のアメトリン様のご様子は如何でしょう?」

「あぁ、今日も静かに本を読んでいるよ、既に字を覚え始めたみたいで 自分で読み始めると食事の時間に呼びに行くまで 時間を忘れてずっと読んでいる」

セルドス「もう字を覚えていらっしゃるのですか?私の 孫 はまだ上手く声も出すこともできませんのに……、!すいません今のはお気になさらず!」

「セルドス、前に行ったよね、困ったことがあればなんでも相談に乗ると、セルドスがアトリーの心配をしてくれるように私もセルドスの 孫 の心配をさせてくれないかな?」

セルドス「……旦那様…ありがとうございます…っ…」

 セルドスの目が潤んできた。

「こちらこそ、いつも ありがとう…感謝しきれないよ…」

(心からいつも感謝しているよ)

セルドス「…聞いて、いただけますか?私の孫のことを」

 セルドスが初めて 孫 の話をしてくれた…

 どうやらセルドスの 孫 は生まれた時から 声をほとんど出すことも 表情も変えることも 無いそうだ、どんなにコチラが話しかけても反応は薄く 日中は外の景色をただ眺めているだけで 何かを欲しがることもなく、ただ静かにそこにいるだけの人形のようらしい。
 その事を 気味が悪いと近隣の住民に言われ 今 借りている家を追い出されそうになっているとか、孫の父親は既に亡く、母子2人で生活するのが手いっぱいなのだとか。

 その話を聞いた私は、セルドスにある提案をした、最初は迷惑になるだけだからと頑として断っていたけど、私の根気よくした説得に折れてくれた。

セルドス「…分かりました、旦那様、娘の仕事の件は有り難くお受けいたしますが 孫の事は一度 アメトリン様と孫がお会いしてみて、アメトリン様がご不快になられないようでしたら お受けいたします…」

「ありがとう、セルドス私の我儘を聞いてくれて」

(勝った!)心の中で勝利宣言した何に勝ったかは自分でもわからない。

カイル「いつも あなたの我儘に振り回されている私にも感謝してください」

「ぐっ…ありがとうカイル…」

 顔が引き攣ったのが自分で分かった。


+・・・・・+・・・・・+・・・・・+


・・・・・・・・・・・・数日後



セルドス「旦那様方 この子が先日話した 私の孫のソルドアです、隣にいるのはこの子の母親で私の娘のセラスと言います」

 アトリーを天気も良いし行った事の無い“秋の庭園“に行かないか?と誘い出す事に成功して 着いた先で待っていたセルドスの 娘 と 孫 を紹介される。

 娘のセラスは父親のセルドスに似ていた、孫のソルドアも顔こそ2人に似ているが全然表情が動いていない。

セラス「初めてお目に掛かります旦那様  セラスと申します この度 このお屋敷で親子共々雇っていただき有難うございます」

 深くお辞儀をして礼を述べる、綺麗な所作だ さすが元影騎士の娘、しっかり教え込まれているようだ。

父「ここは公の場ではないのだから そんなに畏まらなくて良い、これからセルドスの手伝いをよろしく頼む」

セラス「はい、お気遣いいただきありがとうございます」

シリー「私からもお願いしますね、何かあったらいつでも、相談に乗りますわ」

 親達が挨拶を交わすように 子供達も挨拶を交わしていた。

(おや?全然動かないと言っていた表情に変化が見られる、それに何か外れた?)

 魔力がゆっくり滲み出ているようだ私は詳しくソルドアの魔力を見ようと子供達を観察していると…

「あくすぅ、ちよっ」

 アトリーが積極的にソルドアに手を差し出し“握手をしよう“と誘っていた 、ソルドアは首を少し傾げながら手を差し出した。

「うっ!あい!あ・く・すぅ!」

 差し出された手を取り少し振りながら握手をしていた。

ソルドア「⁉︎」

 ソルドアは少しビックリした顔をした後 嬉しそうに笑ってた、ソルドアが笑った⁉︎見間違えでは無いよな今のを見ていたのは私だけか?と目を疑った。

「あちょぼっ!あち!」

 と、アトリーが楽しそうに遊びに誘っているコレが見れただけでも今日ソルドアを連れてきてもらってよかったと思う、中々返事がない事で嫌がっていると思ってアトリーが…

「めんねぇ?あちょぶ、やぁ?」

コテッと首を傾げながら聞くそれを見たソルドアは目を大きく開いて、首を横に振った 。

ソルドア「あしょぶ、あち、ぃくっ」

 と、言って握っていたアトリーの手を引っ張った、知らない子供の楽しそうな声が“遊ぶ“と言ってる次は耳を疑った。

「ふぇ、あちょぶ?いく?」

ソルドア「うっ、いく!」

「あい!あち、いく!」

 今度はアトリーがあっちに行こうと引っ張って仲良く手を繋いで花壇の方に行ってしまった。

 その光景を見た大人たちは固まっていた。

セラス「い、今、ソルドアがしゃべりませんでしたか?し、しかも、積極的に遊びに誘うなんて、は、初めて見ました…」

セルドス「確かに、喋った、私もちゃんと見た……見間違いなんかじゃない…っ」

 セルドスが泣きそうだ。

セラス「あの子が…あんなに…っ楽しそうに笑ってる、っう…すみませんっ」

 セラスは感涙がとめどなく流れていた。

シリー「良いのよ我慢しないでセラスさん……、2人は何か通じあったみたいに見えるわ、ラト、貴方、何か見えまして?」

 シリーはセラスに寄り添い背中をさすりながら聞いてきた、さすがシリー、勘がいい 私は“魔力視“で全て見ていた。

「あぁ、見えている、アトリーとソルドアが手を繋ぎ出した時から 互いに魔力を譲渡しあっている 交互に仲良く同じ量を少しづつ、これは…カイル!」

 私は確認がしたくて庭園の入り口にいたカイルをよんだ。

カイル「旦那様、如何なさいましたか?」

 すぐに側に来たカイルに子供達を指差し見せた。

「あれは“忠誠の誓い“ではないか?」

 私の言葉に聞き覚えのないセルドス親子2人がこちらを見た。

カイル「あれは…確かに…似ていますが少し違う様です、よほど魔力の相性がいいのか“忠誠の誓い“ではなく、友好な何かそれ以上は私には分かりません」

「では何か制約がつく様なものでも無いと?」

 王家の影の“忠誠の誓い“とはシャトン家の者が“心から忠誠を誓うこと“で“制約“がこもった魔力の譲渡される。
 それを受け入れることができるのが王家の血筋の者だけだ、その“制約“は忠誠を誓った者の信頼を裏切らない限り互いのスキルを一つだけの“貸し出しまたは共有“が出来る事と“魔力の共有“だ。
 その信頼を裏切ると“忠誠の誓いの制約“の影響で“貸し出しまたは共有“していたスキルが消失する事になる、互いに恩恵とリスクがある“制約“だ。

 王家の者はシャトン家の“忠誠“とスキルの“貸し出しまたは共有“に“魔力の共有“。

 シャトン家は王家の“信頼“とスキルの“貸し出しまたは共有“と“魔力の共有“。

 スキルの“貸し出し“もどのスキルが出来るかはやって見ないと分からない そこで“相性“が出てくる。
 それと互いの“忠誠“と“信頼“の関係の度合いにもよる、その度合いによってスキルの“貸し出しから共有“へと変化する。

 私の魔力を見る力“魔力視“はカイルのスキルを“共有“して得られた力だ、だが子供達はまだ “洗礼と祝福“を受けてないので スキルの“貸し出しや共有“はできない。

カイル「はい、互いに同じ量だけ譲渡している様ですから 何も影響はないかとむしろいい影響があるみたいですね」

「いい影響?」

カイル「えぇ、セルドスさんのお孫さんソルドア君の魔力に何か少し淀みが見えますよね」

「あぁ、少しあるな、んっ⁉︎これは…」

 よく目を凝らして“見た“。

カイル「お気づきになられたかと思いますがソルドア君の魔力の澱みをアトリー様が綺麗に浄化して整えているみたいです、ソルドア君の魔力を受け取った分だけ綺麗な魔力にして返している見たいですね」

「そんなことをしてアトリーは大丈夫なのか?でも平気そうにしているな いや、無意識にやっている、それにこの綺麗な魔力を他人に譲渡できるとは・・・
 ‼︎もしかしてこれが 人の無意識に近寄ってくる 現象の原因かもしれない!」

カイル「一理あるかも知れませんね、魔力量の少ない人が近寄ってくるのは この綺麗な純度の高い魔力を取り込み 自分の物にしたくて引き寄せられるのかもしれません」

「それで魔力制御と言うより ほぼ封印の魔道具で人を引き寄せる現象が治ったわけだ、魔道具のおかげで譲渡し合う魔力も少ないのが浄化の負担が少なくて功を奏したかもしれないな」

セラス「浄化…ですか?」

「そうだね、どうやら 君の息子は魔力に様々な力を秘めているみたいだ、この魔力の感じはどこかで…それにあの魔力譲渡の力…」

セルドス「では、アメトリン様は孫の不調の元を浄化していただいていると?」

「あぁ、それに何かソルドアにあった魔力の蓋?みたいな物が手を繋ぐ前に開いた気がする、その後 手を繋いでから魔力の譲渡が始まってる…やはりコレは」

シリー「貴方?」シリーが心配そうに聞いてくるが私はそれどころでは無い。

「こんな事があるのか?暗部の一族三家の力が集約するなんて奇跡が…」

リア「旦那様、それは…」

 カイルと一緒に近くに来ていたリアが何か言いたそうだ。

「やはり間違いなさそうだあの子ソルドア•ソンブラはソンブラ家、シャトン家、インイエ家、三つの一族の特性を持った子供だ」

カイル「その様ですね、シャトン家の“忠誠の誓い“と言うより“友好の証“と言う感じの魔力譲渡、アトリー様は普通の魔力譲渡をしている様ですね」

リア「ではあの、その魔力の蓋?は我がインイエ家の“感情の抑制術“の影響…普通は訓練を受けてから 使いこなすものを、生まれた時から 無意識に魔力に蓋をする事によって、感情の抑制を自ら戒めたのですか?…でも何故?…」

セルドス「じゃあ、あの子の静かに過ごしていた日常はソンブラ家の“静音隠密“の特性によるものだと?」

「そう言う事になるね、多分 色々な要因が重なり 魔力の蓋の影響で体内の膨大な魔力が外に出る事なく留まり続けたことにより魔力の澱みで体調に変化を起こしたのだろう、だから 本能で察して無駄に動く事なく静かにしていたのかもしれない、それがアトリーと出会った事によってまた 色々な要因により改善に向かった様だね」

セラス「では、あの子は今、その奇跡の様な出会いによって、何の影響もなく…心の底から…楽しく遊んでいるのですね?…っよかった…」

(奇跡の出会いか・・・)

 セラスの声が震えまた目に涙が溢れ出した、しばし、2人の遊ぶ光景を目で追っていたら

リア「旦那様、これからあの子ソルドア君をどうなさる気ですか?」

「あぁ、心配はいらない、今後のことは考えてある、それまではこのまま 一緒に過ごさせてあげてくれ」

セラス「旦那様方がよろしいのでしたら、うちの子で良ければいつでもお呼びください」

「わがままを聞いてもらって悪いね」

セラス「いいえ、あの子も楽しそうですし…」

シリー「本当ね、2人とも楽しそう、アトリーがあんなに楽しそうに遊んでる あの子のあんな楽しそうな笑顔久しぶりに見たわ、あなたの大事な子に合わせてくれて本当にありがとう」

 少し涙目だ。

セラス「勿体ないお言葉ありがとうございます、奥様、私もうちのソルドアがあんな風に感情を表に出すのを見るのは初めてです…」

セルドス「本当に孫がソルドアが笑っている……っ…すみませんお見苦しいところを」

 セルドスも感涙の涙が流れ出した。

「何が見苦しいものか 嬉しくて泣くのが見苦しいわけがないだろう?」

 シトリスの方を見た。

シリー「えぇ、そうですよ、私も嬉しくて泣いているのですから見苦しい事なんて何処にもありません」

 シリーの頬にも涙が流れ出している。

アトリー「かーたま?せるじぃ?いちゃい?」

 シリー達が泣いているのを見ていつの間にか戻って来たアトリーとソルドアが心配そうに“何処か痛いか“聞いてくる。

アトリー「ぽんぽ、いちゃい?」

 お腹が痛いと思ったらしい、本当に優しい子だ。

セルドス「アメトリン様なんでも無いですよ お腹は痛くありませんよ ちょっと目に砂が入っただけですお気になさらずに」

アトリー「ぽんぽ、ない?めめ?ちゃい?」

 2人も目が痛いのかと心配そうにシリーとセラスを見る、隣でソルドアも母親のセラスを心配そうに見ている。

セラス「えぇ、大丈夫です、アメトリン様、私は嬉しいことがあったので少しウルっとしただけですよ」

 にっこりと優しく嬉しそうに笑った、納得したのか次はシリーを見る。

シリー「アトリー、ソルドア君と一緒に遊んで楽しかった?母様も嬉しい事があったからよ、だけど心配してくれてありがとう」

 子供達の前にしゃがんで2人の頭を優しく撫でてた、アトリーは嬉しそうにニッコリ笑いながら返事をした。

アトリー「あい!しょる ちょ あちょぶ たのちぃ かた!しょる ちょ おともらち!なちゃ‼︎」

シリー「そる、ソルドア君とお友達になったのね?」

 アトリーの言いたいことが分かったシリー。

セラス「え、本当に?」セラスがソルドアに確認している。

 ソルドアを見ると笑顔で、

ソルドア「あい!あちょりー おともやち!」と元気っぱいに言った。

 アトリーと目があったら「おともやち、ねー」と言ってそれに応えるようにアトリーも「おともらち、ねー」と楽しそうに言ってる。

 2人は仲良くなって友達になったと 態々 私達に言いに来たようだ 。

 何とも微笑ましいやり取りに私はアトリーが楽しく過ごしてくれて出来るだけあの嫌な出来事を忘れて欲しいと思った。

セラス&セルドス「「つ!!」」

 2人はまた感動に震えていた、その後も「ねー」を言い合いこしている2人に、「2人とも楽しいかい?」と聞いたら 2人は顔を見合わせて、
ソル&アトリー「「あい!」」と2人仲良く元気いっぱいに返事を返してきた。

 2人とも本当にこの短い時間でここまで仲良くなってくれるなんて思いもしなかった。

「そうかい…楽しいんだね、まだ時間はあるから近くで遊んでおいで?」

 ソル&アトリー「「あーい‼︎」」元気よく返事をしてまた 手を繋ぎ仲良く遊びに行った。

 2人の見送った後、セルドス達に、

「セルドス、セラス、リアにカイルも後で話がある あの子達が時間いっぱい遊んで昼食をとった後に執務室で話そう
 その時ソルドアは屋敷のメイドに預けて2人だけで来てくれ」

「「「「畏まりました、旦那様」」」」

「シリーも聞きたかったら来てくれ」

シリー「えぇ、その時アトリーがお昼寝してくれたら行くわ」

「あぁ、分かった」

 その後2人は本当に楽しそうに時間一杯まで遊び、遊び疲れたのか屋敷に戻っている最中に2人とも寝てしまっていたので、シリーはそのまま話し合いをすることとなった、屋敷に着いて子供達をそれぞれメイドに預け 執務室にお茶を持ってくるように頼み大人達だけで執務室入った。
 先にソファーに座り、みんなにもソファーに進めて、各々がソファーに座ると メイドに頼んでいたお茶が来たので一息ついてから 話を切り出した。

「話とはソルドアの能力と今後についての提案と相談だ」

セラス「ご相談はわかりますがご提案とは?」

セルドス「ソルドアの処遇についてですね?」 

 セラス「処遇⁉︎」セルドスの発言で腰を浮かした、セルドスに手で止められて渋々座り直しこちらを見た。

「あぁそうだね、少し言い方が悪いがおおむねあっている、ソルドアの将来のためにが正しいかな?まず、ソルドアはあの子は能力が高すぎる、そんな有能な子供をそのまま放置するのはもったいない、それにソルドアにも良くない、
…そこで提案なんだが、ソルドアを養子に出さないかい?今ちょうど独り身で 後継者がいない 子爵の爵位を持った男がいるんだけど どうかな?」

セラス&セルドス「「養子・・・・」」

同じ言葉だがそれぞれニュアンスは違う、セルドスは考え込み、セラスは不安そうだ。

カイル「旦那様、それは私のことでいいのですね?」

 カイルが確認をしてくる。

「その通りだよ、カイル、後継者を急かされていただろう?」

 カイルは両親に縁談を薦められて逃げていた。

カイル「そう ですね、私には異論ございませんが…」

 チラッとセラスを見た。

セラス「その、貴族様の養子に、と 申し出は嬉しいのですが、何故 養子にするのかと…、その場合あの子とは会えなくなるのでしょうか?」

「あぁ、説明が足りなかったね、何故 態々 養子にするのか それはあの子は珍しい能力を持った子だ …
 その事が周りに知られた場合 あらゆる方面から狙われたり勧誘が殺到するだろうし、それに何よりあの子はアトリーから離さない方が良い、あの子の特性上アトリーの浄化の能力が無いと また症状が逆戻りする可能性がある、それを防ぐ為にアトリーの側に居ることができるのが 貴族としての立場と役割だ、それが無いと 互いが成長しても 私は側に置くことはできない、それにあの子はアトリーから離れたがらないと思う、
 後、養子になったからと言って、君からあの子を引き離すことはしないよ、そこは約束する」

 セラスはソルドアと引き離しはしないと言われてホッとしたようだ。

セルドス「あの子の為に、ですか?」

「いいや、あの子とアトリーの為に、かな?でも割合的にはソルドアの為に、の方が多いけどね」

セルドス「はぁ、それでも良いのですか?アトリー様の為になるとは思えませんが…」

「前にも言ったと思うけど、アトリーの周りには同年代の子供がいないから、あの子と一緒に遊べる子供を探していたのは知ってるね?
それにソルドアとアトリーは奇跡に近いぐらい かなり魔力の相性がいいようだ、だからか ソルドアはアトリーを“友好の証“の相手に選んだ様だしね、多分アトリーを守ってくれるだろう、と言う打算もあるよ」

セルドス「そう ですか、ですがそのシャトン家の特性の“友好の証“とはどう言ったものなのですか?」

カイル「それは私から説明しましょう、ソルドア君のした事は 我がシャトン家の特性に似ていますが 複数の一族の特性が混じり合った結果、
その特性に変化が見られます、元々シャトン家の特性は便宜上“忠誠の誓い“と言いますが 、

ソルドア君がした事とは違い“忠誠の誓い“には互いに恩恵と共にリスクがあります、それに比べ、ソルドア君がした こちらも便宜上“友好の証“と称しましょう、コレは何のリスクもなく恩恵だけが受けられる様です」

セルドス「恩恵だけが…その恩恵とはどんなものですか?」

カイル「申し訳ございませんが、誰にでも出来る事では無いのですが 禁止事項になりますので詳細は伏せさせていただきます」

セルドス「いいえ、こちらも不躾に込み入ったことを聞いてしまいました お許しください、しかし何故あの子にシャトン家の特性が現れたのでしょう?」

「確かに、だが ありえない話でもないと思うよ、遠い祖先の中でシャトン家の者と婚姻関係になった者がいるのだろう 、何かのきっかけで特性が覚醒したのでは無いかな?多分インイエ家の血が入った影響では無いかと私は思うが…、セラス 君の亡くなった旦那さんは黒髪なのでは無いかい?」

セラス「えぇ、そうです“ドンチョク朝廷国“の生まれだとかで髪は黒かったです」

リア「!、では、瞳の色は何色でしたか⁉︎」

セラス「え?、えっと、赤かったです、そ、それが何か?」

リア「やはり‼︎………本家筋の誰か、か…」リアは考え込み始めた。

 考え始めたリアに困惑するセラス。

シリー「ねぇ、リア、あなたの旦那さんも瞳の色が赤くなかったかしら?」

 シリーに話しかけられやっと話の続きを思い出したようだ。

リア「失礼しました、私も私の夫も“ドンチョク朝廷国“のインイエ家の者でして その中で黒髪で瞳の色が赤いのは本家のものがほとんどなのです、そして先ほどまで ソルドア君が行っていた魔力に蓋、いえ、体内に留める方法の感情の抑制術は 本家の者にしか伝えられない技なのです、
なので ソルドア君は赤子の時に多すぎる魔力を心配した父親が 魔力抑制の為に施した 抑制術を今まで自分なりに維持していたのかもしれません」

「あぁ、だから魔力に澱みが見られたのか、普通は体内に留めた魔力を体内で動かし巡らせる事で澱まない様にするものなのかな?」

リア「えぇ、その様です、ちゃんと訓練すれば感情のコントロールと 共に魔力のコントロールができるようになるかと」

「そうか、ではここからは相談なんだがソルドアのその類い稀な能力をそれぞれの一族の者が正しくソルドアに教えてあげられないかな?」

セルドス&セラス「「‼︎」」

カイル「私はかまいませんよ、養子の話が出る前から 教えるのは考えていましたから、でないと加減を間違えたらアトリー様に影響が出かねませんからね」

リア「そうですね、私の方も問題ないかと、一応 夫に話してみます 多分 反対はしないと思うので」

セルドス「本当に宜しいのですか⁉︎それぞれの一族の秘術なのですよね?」

カイル「えぇ、先ほども言いましたが アトリー様に影響が出ては困りますので 教えるのはどちらかと言えば必須事項です」

リア「それもありますが 正しく抑制術を使えるようになれば今までみたいに魔力の澱みを溜め込むこともなくなるでしょう」

カイル「まぁ、5歳になるまでは今のままですが」

リア「えぇ、こちらも訓練は5歳からですね」

「2人とも ありがとう、ではソルドアの訓練は5歳になってからとなったが 養子の件はどうする?」

カイル「もし、宜しければセラスさんも私の妻として子爵夫人になりませんか?名義上の夫婦としてソルドア君と親子共々、子爵家で引き受けてもかまいません、あぁ、心配しないで下さい、何も強要致しませんので」

 カイルがいきなり結婚を申し込んだ。

セラス「え、?」 

 セラスは急な事に頭が追いついてない、セルドスも目を丸くして驚いている、シリーとリアは少々呆れ気味だ。

「こらこら、カイル、自分が親の縁談話から逃げたいが為にセラスを盾に使おうとするんじゃない、そもそもお前が早く結婚相手を選ばなかったのが原因だろう、セラス、気にしなくて良いから、養子の件は本気だけど 今のは完全に自分の都合だから」

 カイルが残念そうな顔をしているがセラスはやっと言われた事が分かったのか少々顔が赤くなっていた。

セラス「え、あ、はい、えっと養子の件は あの子がもう少し大きくなって 自分で判断できる様になってから 本人の意思で選ばせてあげたいと思います」

(まぁそうなるよな、すぐには無理だと思っていたので驚きはしない)

セルドス「セラス……、旦那様、私からは何も異論ありません、ソンブラ家の訓練も本人が望み次第 私から教えていこうと思います」

「あぁ今はその返事を貰えただけでも満足だよ、それでは、これから先5歳まではソルドアはアトリーと一緒に過ごしてもらうことには異論はないとゆうことで良いのだね?」

セラス「はい、異論はございません、むしろこちらがお世話になってしまい 申し訳御座いません」

セルドス「本当に、よろしくお願いいたします」

 2人が立って深々と頭を下げた。

「分かった、頭を上げなさい、こちらもよろしくお願いするよ」

シリー「えぇ、よろしくお願いしますね」

 シリーと私はアトリーとソルドアが楽しく過ごしてくれるのが一番だと思っているから遠慮はいらないと告げた。

 その後もアトリーとソルドアが仲良く遊んで過ごす光景がよく見られた、他の子供達とも仲良く遊んでいるようで、屋敷内の使用人たちの中では心の癒しだと可愛がられていた。

 当初、アトリーがあの事件以来、心に傷ができたのではないかと心配して 少しでも嫌な出来事を忘れさせる事ができたらと 思い、ソルドアと合わせて見たら あんな奇跡の出会いになるなんて、思っても見なかった。
 セルドス達は今だ半信半疑だが、シャトン家の特性の相手を決める重要性を軽く見ている。

 カイルが結婚相手を選ばないのはこの特性の影響が大半だ、“忠誠を誓った相手“を何より優先してしまう為に結婚相手をないがしろにしてしまうかもしれない懸念があるからだ、“忠誠を誓った相手“と相性が良けれ良いほどその傾向が強くなる、なので結婚相手にはその事に 理解がある者ではないと結婚が成り立たないのだ。

 カイルの両親がいい例だ 互いに心から忠誠を誓う相手がいて それを理解して尚且つ互いに共感して惹かれ合ったから結婚して子が儲けられたのだ、カイルの両親でコレなのだから、相性の度合いで言えば カイルやソルドアの相手との相性の良さはそれ以上なのだから、カイルの結婚相手を見つけるのは至難の技なのだ。

 ソルドアにとってアトリーは奇跡の出会いと言っていいほどの存在、なので5歳になるまでソルドアが どう思うかは大体予想がつくので カイルと私は抜かりなく事を進めていく事にした。

(まぁ、今は子供達の楽しい声が聞ければ私は満足だ)





*次からはアトリー視点に戻ります
 父の回想にお付き合い いただき有難う御座いました










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